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Part.1 スズカズがスカッと解説!<br>なぜ今、バリュー株?

Part.1 スズカズがスカッと解説!
なぜ今、バリュー株?

2023年10月13日
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株価上昇のきっかけの見極めが難しいバリュー株投資に好機到来?  2023年3月の東京証券取引所によるPBR1倍割れ企業への改善要請について、“スズカズ”こと株式アナリストの鈴木一之氏は「バリュー銘柄へのカタリストが現れた」と語ります。PBRに着目したバリュー株の探し方をスズカズさんにうかがいました。

※2023年9月25日時点の情報を基に編集しています
※本文中の銘柄名をクリックすると最新の株価等が確認できます

これから、バリュー株の株価上昇が期待できる

suzukazu20230925

鈴木 一之
Kazuyuki Suzuki
株式アナリスト

――今、バリュー株投資に注目する理由は何でしょう?

鈴木 バリュー株投資とは、企業の利益・資産などの基準に対して株価が割安な銘柄に投資する手法です。選択基準となる代表的な指標は①PER(株価収益率)や②PBR(株価純資産倍率)で、①が企業の利益水準から見た、②が純資産から見た「割高」「割安」の目安となります。
 このうち今、注目するのは②PBRのほうです。理由は、東京証券取引所(東証)が進める、いわゆる「市場改革」の一環として2023年3月に公表した、PBR1倍割れ企業への改善要請があったからです。一般的にPBR1倍未満は割安株=バリュー株とされます。

 PBRの計算式は「株価÷1株当たりの純資産(BPS)」なので、これを改善する方法のひとつは株価を向上させることです。今後、PBR1倍割れ企業の多くの経営者は、これまで以上に株価を意識し、経営効率の向上などに取り組むようになることが予想できます。
 さらに、企業のPBR改善にはもうひとつ方法があります。それはBPSの減少策です。
 こちらは、例えば余剰資金による自社株買いや増配などの株主還元を拡充することで達成できます。当然これも、株価への好感材料となります。

 つまり投資家サイドから見れば、バリュー株の株価上昇が期待できるというわけです。
 

東証の改善要請はバリュー株浮上のカタリスト

――とにかく、割安と思える株を買えばいいということになりますか? 

鈴木 大前提として、そもそもその企業が「本当にバリュー銘柄なのか?」をしっかり見極めないといけません。「割安」ではなく、実力に見合った「安値」という場合もあります。
 東証は、PBR1倍割れの要因のひとつとして「資本コストを上回る資本収益性を達成できていない」ことを指摘しています。資本からの収益性を示す代表的な指標はROE(自己資本利益率)なので、ROEの数値が判断のひとつの目安になるでしょう。

――東証の改善要請がバリュー株への注目度を高めたということですが、バリュー株を狙ううえでの留意点を教えていただけますか? 

鈴木 確かに、今回の東証からの改善要請については、バリュー株浮上へのカタリスト(きっかけ)が現れたといってもいいでしょうね。

 とはいえ、バリュー株投資で一番難しいのは、いつ値上がりするかわからない点です。
 実態としての企業価値は高いのに株価が割安に据え置かれていたとしても、市場から認知され、十分に評価されなければ株価は向上しません。「投資家との対話」という言い方をしますが、要は投資家に知ってもらう努力がバリュー銘柄(企業)には求められます。

 バリュー株投資においては、投資候補企業の財務や業績といった「ファンダメンタルズ」に加えて、「投資家との対話」の観点も大事だと思います。
 

スズカズが注目するバリュー銘柄5選

――これまでご説明いただいた観点から、鈴木さんが注目するバリュー銘柄を教えていただけますか?

鈴木 PBRが1倍未満で配当利回りが3~4%程度の銘柄を5つほどあげてみます。特に配当利回り重視なら、その源泉である利益は重要です。利益(収益性)の目安はROEが8%(銀行株は4~5%程度)以上あることです。

 まず小売りでは、ホームセンターのDCMホールディングス〔3050〕(PBR0.70倍、配当利回り3.2%、ROE7.5%)です。
 この会社はカーマ、ダイキ、ホーマック、サンワ、くろがねやが統合してできた持株会社です。ROEは8%を少し下回っていますが、一般にホームセンターは地域性が強いなかで、同社は全国を網羅して業界2位の規模とされてます。

 商社は総合商社、専門商社ともに低PBRで、万年割安銘柄、高利回り銘柄を見つけやすい業種です。このセクターでは、稲畑産業〔8098〕(PBR0.95倍、配当利回り3.7%、ROE11.0%)をあげておきたいと思います。

 地銀株は融資案件が増えると見られ、どれも有望です。ここでは、ROEはさほど高くはないですが、山口、広島、北九州を地盤に持ち、今後、九州地域で見込まれる工場の建設ラッシュで資金需要が高まることが期待される山口フィナンシャルグループ〔8418〕(PBR0.48倍、配当利回り3.2%、ROE2.9%)をあげておきます。

 その他金融業では、三菱UFJ系の信販会社ジャックス〔8584〕をあげたいと思います。PBR0.88倍、配当利回り3.7%、ROE11.1%です。
 同社は、日本はもちろん、海外ではベトナムなどで二輪車ローンやクレジットカードなどを取り扱っています。過去最高益を連続して更新する見通しで、堅実な印象があります。

 不動産セクターは資産が多いため、割安株が多くあります。東京駅八重洲口の再開発を進めている東京建物〔8804〕は、PBRが0.93倍、配当利回り3.4%、ROE10.0%です。

※ 各銘柄の「PBR」「配当利回り」「ROE」は2023年9月25日時点のQUICKデータ
※ 「PBR」は小数点第三位を四捨五入、それ以外は小数点第二位を四捨五入

 

 市場には割安の株がまだ眠っています。以前より株価が上がってきたと感じている方は多いと思いますが、本当に魅力のあるバリュー株が登場するのはこれからだと考えています。
 気になる銘柄は決算発表ごとにチェックしておくことが、ますます重要になると思います。


「Part.2 MIR@I会員のバリュー株ランキング発表!」はこちら

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