日清オイリオグループは現在、 2024年度を最終年度とする4カ年の中期経営計画 「Value Up + (バリューアッププラス)」 を推進している。 長期ビジョンの 「日清オイリオグループビジョン2030」 (以下、 ビジョン2030) で目指す姿を実現するために、 最初の4年間の具体的な成長戦略として策定したのが 「Value Up +」 である。 同計画の進捗と今後の見通しについて、 グループを率いる久野貴久社長にうかがった。
代表取締役社長
厳しい事業環境で発揮した市況変動への対応力
――2021年にスタートした中期経営計画 「Value Up +」ですが、 スタートからの2年間を振り返っていかがでしょうか。
久野社長 (以下、 久野) 「Value Up +」 を開始して2年間、 新型コロナウイルスの感染拡大やウクライナ情勢の長期化など、 当社グループを取り巻く環境は大きく変化しました。 また、 原材料価格の急激な上昇、 急激な円安進行、 エネルギーコストの高止まりなど、 厳しい経営環境が続きました。 しかし、 当社グループがこれまで培ってきたお客さまとの信頼関係をベースに丁寧にご説明することで、 適正な販売価格を形成しました。
また、 加工油脂やファインケミカルといった付加価値の高い事業においても着実に収益を積み上げており、 国内 ・ 海外ともに市況変動に対して強い対応力を発揮できたと考えています。
──2023年度の見通しについてお聞かせください。
久野 2023年度の連結売上高は前期比3.0%減の5,400億円、 同営業利益は1.1%減の160億円を予想しています。 前年度における海外の一過性の利益要因が消失することや、 パーム油の時価評価に伴う利益減少の影響を見込んでいます。 ただ、 国内油脂の価格戦略やソリューション、 価値創造の取り組みなどによって、 着実な収益性の向上を実現させていく考えです。
──ビジョン2030で掲げた経営目標を一部見直されましたが、 その意図は何でしょう?
久野 新たな価値創造によって売上高を拡大し、 そこから利益を創出していくというビジョン2030の根幹に大きな変わりはありません。 ただ、 食用油コストが歴史的に高い水準で推移するなど、 大きな環境変化が生じるとともに、 先の見通せない状況が続いています。 そうした状況のなかでも、 株主資本コストを確実に上回る資本収益性を実現し、 持続的な企業価値の向上を目指すことが重要であるという認識のもと、 ROEを最重要指標として位置づけ、 2030年にROE 10%の水準を達成することを目標化しました。
また、 このROE目標の達成に向けてROIC 7%の目標を新たに設定し、 当初目標としての営業利益300億円の水準は踏襲しつつ、 投下資本との両面からマネジメントを強化することで、 どのような環境下においても資本コストに見合う資本収益率を獲得できる体質づくりを進めていきます。
2030年のROE10%目標の達成に向けて
――ビジョン2030で目指すROE10%の目標は、 具体的にどのような事業戦略のもとで実現していくのでしょうか。
久野 2030年に目指すROE 10%の目標達成に向けては、 ROICの目標を7%に設定したうえで、 各事業領域における取り組みを推進していきます。 「Value Up +」 期間中においては、 国内油脂市場の付加価値化 ・ ソリューション強化、 コストに見合った適正な販売価格の形成 ・ 維持、 チョコレート用油脂を中心としたスペシャリティファットの拡販、 ファインケミカルやチョコレート事業におけるコロナ禍からの需要回復の着実な取り込みと拡販などにより、 2024年度にROIC 4.6%の達成を目指します。
さらに、 2030年に向けては、 国内油脂における着実な成長と収益性の向上、 加工油脂 ・ ファインケミカルにおけるグローバル市場でのプレゼンス拡大、 北米における新市場の開拓などの取り組みに注力し、 各事業領域においてROICや売上拡大、 営業利益成長率などをKPI化したうえで、 達成に向けた具体的な戦略を立案し、 取り組みを進めていきます。
──新たに取り組む北米の市場開拓についてお聞かせください。
久野 北米における事業展開はゼロベースからの取り組みとなりますが、 米国の食品市場は特に加工食品市場の規模が大きく、 人口増加も背景に今後も成長が見込まれます。 食品市場においてはナチュラル志向やトレーサブル (追跡可能) な原材料へのニーズが高く、 当社の油脂加工技術や知見を活かしたアプリケーション ・ ソリューションの提供による、 付加価値型のビジネスモデルの構築を目指していきます。 フードサービス、 加工油脂、 ファインケミカルなど、 当社の技術や知見を活かせるターゲット領域において、 パートナーとの協業をベースとした複数分野の組み合わせによる事業構築を進めていきます。
──2030年に向けて、 一番の課題は何だとお考えですか。
久野 価値創造をいかに実現していくかということに尽きます。 当社が目指していく姿である 「グローバルトップレベルの油脂ソリューション企業」 のベースにあるのは、 「もっとお客さまの近くでビジネスを展開する」 ということです。 強みである 「顧客接点」 をさらに高め、 顧客理解を一層深める。 それを価値創造につなげていくプロセス開発が重要な点です。 近年、 食を取り巻く環境は大きく変化し、 お客さまの課題がより喫緊なものとして顕在化してきています。 課題解決のスピード感を今まで以上に引き上げ、 今日的にキャッチアップしていかなければならないと考えています。
――株主還元の方針についてお聞かせください。
久野 株主還元については、 安定配当を基本方針とし、 収益向上の成果を配当水準に反映しています。 中期経営計画 「Value Up +」 の最終年度である2024年度に向けて、 連結配当性向は40%を目安として、 実現に努めていきます。 「Value Up +」 の前半戦は、 価格高騰によって営業キャッシュフローが当初想定を下回る状況となりましたが、 稼ぐ力は着実に高まっていると感じています。 2030年に目指す姿の実現に向け、 計画的に成長投資を行いながら、 持続的な利益成長を伴う資本収益率の向上の成果を、 株主の皆さまに確実に還元させていただきたいと考えています。
“生きるエネルギー” をすべての人にお届けする
──最後に、 個人投資家の皆さまにメッセージをお願いいたします。
久野 経営マネジメントにおいて、 PBR1倍を割り込む株価水準については大きな問題意識を持っています。 当社グループでは、 これまで、 国内における市場の付加価値化、 顧客との強い信頼関係の構築、 市況変動に対する対応力強化に取り組んできており、 収益力は着実に向上しています。 まずは、 現中計 「Value Up +」 の経営目標を達成し、 2030年の目指す姿の実現に向けた取り組みを力強く推進し、 企業価値の向上を目指してまいります。
これを実現するうえで、 私たち日清オイリオグループがこれまで大切にしてきた価値観のひとつである 「真摯な姿勢」 がとても大事であると考えています。 当社の強みである油脂を究めるなかで、 新たな価値を生み出す仕掛けの創造やビジネス領域の拡大に対してもぶれることなく挑んでいきます。 その根幹は油脂の物性などの機能面での品質の磨き上げ、 安全 ・ 安心の品質追求に加え、 地球環境やサステナブルな調達といった社会的な品質について 「真摯な姿勢」で究めていくことだと考えます。 そして既存のお客さまや得意な領域に限定せず、 潜在的なお客さまや、 不得手あるいは未踏の領域にも挑戦することで 「生きるエネルギーをすべての人に」 お届けする企業を目指してまいります。
●会社概要(2023年3月31日現在)
概要 | |
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日清オイリオグループ株式会社 The Nisshin OilliO Group, Ltd. |
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食料品 |
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1907年3月 |
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3月 |
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東証プライム |
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代表取締役社長 久野 貴久 |
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163億3,200万円 |
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33,716千株 |
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3,001人(連結) |
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