近年、社名の変更、 ビジネスモデルの転換など、大きな変化を経験しながら着実な成長を遂げてきたJTPが、新たに策定した第2次中期経営計画をスタートさせた。ユーザー企業に事業変革と自走を促す“業界随一のイネイブラー”となることを目指すJTPが、新中計に込めた狙いとは? 代表取締役社長の森豊氏にお聞きした。
代表取締役社長
時代の変化に対応して多様な事業セグメントを確立
――貴社の事業概要をお聞かせください。
森豊社長(以下、森) 当社は海外のハイテクメーカーを主な顧客として、顧客企業の日本国内におけるユーザー企業向けのサポート業務を受託するというビジネスモデルで創業しました。以降、事業環境の変化に対応しながら、情報セキュリティ関連サービスやAIソリューションなど、より川上の工程で当社の知見や技術を提供する事業を手がけるようになっています。
現在の事業セグメントは、大きく4つに分かれます。当社の成長エンジンと位置付けるデジタルイノベーション事業では、新たな技術やサービスを活用してお客さまのDX化に必要なソリューションを開発・提供しています。ここにはエンジニアの育成やセキュリティを担保する事業も含まれます。
事業規模として最も大きいICT事業では、システムの設計・構築・運用・保守といったICTのライフサイクル全般で、お客さまをサポートしています。
ライフサイエンス事業は、病院、製薬業界に特化した事業です。医療機器、分析機器の保守・メンテナンスから医療現場のDX化のサポートまで、その内容は多岐にわたります。
4つ目は、その他(海外)事業です。国内のIT人財不足解消への貢献として、外国人エンジニアの受け入れをワンストップでサポートする「Reinforce HR」が2022年に始まったほか、インドをメインとした海外のスタートアップ企業の日本国内への参入サポートを準備しています。
――貴社は「2030年に業界随一のイネイブラーとなる」ことを掲げています。この“イネイブラー”について改めてご説明いただけますか?
森 当社はメーカー側でもユーザー側でもない、独立した立場で事業を行ってきました。この適度な距離感は、特にユーザー側のお客さまとの信頼関係の構築に、大きなメリットがあります。
今後、エンドユーザービジネスを拡大するにあたって、お客さまを技術や製品で囲い込むのではなく、お客さまが自らシステムを運用できるように“お手伝いする”という関わり方で、長くお付き合いいただける企業でありたい。そうしたあり方を、イネイブラー(enabler)と呼んでいます。直訳すれば「できるようにする人」ですが、「世話焼き人」が私たちのイメージに一番合っているかもしれません。
新中計で進める新サービスの開発
――2023年3月期に終了した第1次中期経営計画の取り組みをどのように評価されていますか?
森 第1次中計のポイントは、「エンドユーザービジネスの拡大」にありました。当社にとって、これはイネイブラーとしての事業の拡大であると同時に、「従来の労働集約型ビジネスから知恵集約型ビジネスへの転換」を意味します。この観点から、当社ではChatGPTなどのオープン系のAIを利用したサービスの開発や、自動化技術の推進と自社サービスの確立を図りました。「エンドユーザービジネスの拡大」は着実に進捗したと考えています。
――2024年3月期からは第2次中期経営計画がスタートしています。新たな中計期間に注力する点を教えてください。
森 第2次中計(2024年3月期~2027年3月期)では、“業界随一のイネイブラー”への進捗度を7~8合目まで引き上げるために、特に①DX、②セキュリティ、③ライフサイエンス、④次世代システム運用に注力します。以下、それぞれの具体例を紹介します。
DX:例えば、物流の配送計画を、AIなどを活用して最適化するシステム開発の場合、ITコンサルタントとしてお客さまに深く関わり、ドライバーの帰宅ルートを考慮した経路計画を示すといったように、お客さまの働き方、生き方にまで変革を促すシステムを提案します。
セキュリティ: ITの事故は、実は内部からデータを持ち出されたり、セキュリティの設定を忘れたりといった、ヒューマンエラーに起因する例が大半を占めます。クラウドコンピューティングの環境下で、こうしたヒューマンエラー対策を講じたシステムの提供ができればと考えています。
ライフサイエンス:遠隔治療をはじめ、アプリを使ったデジタル療法(治療用アプリ)や次世代医療機器などの導入サポートに注力します。さらに、海外医療メーカーに代わり当社が薬事承認の代行までを受託することで、速やかな日本の医療の向上に貢献していきます。
次世代システム運用:時代の変化に対応するには、従来の仕様に基づいた堅牢なシステムづくりよりも、基盤となるプロトタイプを新たなシステムに刷新しつづけることが求められます。当社のサポートによってそうした開発環境をお客さまに提供することと、システムリリース後も安心してシステム運用を任せていただくことで、お客さまのDX実現に貢献していきます。
「セキュリティ」と「次世代システム運用」で説明した領域は、潜在的なニーズは高いものの、本腰を入れているシステム会社が少ない分野です。当社がこれらに取り組むことで、業界内でユニークなポジションを得られるものと考えています。
顧客の課題解決に貢献する人財を育成・増員
――貴社が今後着実な成長を図るうえで課題となるものは何でしょうか?
森 人財開発です。イネイブラーを目指すにあたっては、社内に提案力、技術力、課題解決力を有するチームを育てることが重要です。第2次中計では人財の採用・育成に積極的な投資を行うことをあげており、現在40人のプロジェクトマネジャーを150人に拡大。お客さまの課題を解決に導くための設計を行うコンサルタントは20人規模に拡充したいと思っています。
また、エンジニアの育成は、社内だけでなく、地方都市のソフトウエア開発会社やSIerを巻き込んで行います。それらパートナーとの共創で当社の成長を図ると同時に、地方都市でもIT人財の育成が進めば、日本全体のクラウド化、DX化に寄与できると考えています。
――株主還元の方針について教えてください。あわせて、個人投資家へのメッセージをお願いします。
森 株主の皆さまへの還元については、社員への還元と人財育成への投資および事業投資とのバランスをとりながら進める考えです。コロナ禍の経験を踏まえ、有事の際にも3カ月は事業を継続できる手元資金の確保を前提とすることをご理解いただければ幸いです。
また、株主の皆さまには1年を通じて当社に関心をお寄せいただきたいという思いから、2023年3月期に実施した中間配当*を今後も継続いたします。「2030年に業界随一のイネイブラーとなる」という当社のゴールに向けて日々邁進し、着実に業績につなげていきますので、どうぞご期待ください。
* 35周年記念配当として実施
●会社概要(2023年3月末日現在)
概要 | |
---|---|
|
JTP株式会社 JTP Co.,Ltd. |
|
サービス業 |
|
1987(昭和62)年10月 |
|
3月 |
|
東証スタンダード |
|
代表取締役社長 森 豊 |
|
795百万円 |
|
6,015千株 |
|
435人 ※2023年4月1日現在 |
《編集タイアップ広告》
JTP発展の歴史を描いた「先駆者たちの大地」を読む
「『第三者』から『イネイブラー』へ 未来に向け引き継がれた創業の志」