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3業種別スズカズ解説&注目銘柄を紹介

3業種別スズカズ解説&注目銘柄を紹介

2024年1月11日
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2024年が始まりました。今年は辰年。「辰巳天井」という相場格言もありますが、果たしてどんな年になるのでしょうか。
アイアールmagazineオンライン編集室では、個人投資家約3万2,000人に対して「2024年に注目する業種」についてアンケートを実施しました(回答数は3,239件、回答率10.26%)。その上位3業種について、“スズカズ”こと株式アナリストの鈴木一之氏に解説していただきました。

※野村證券独自の業種分類である19業種分類で記述

 
<アンケートの概要>

設  問 : 2024年に気になる業種・注目する業種を教えてください
     選択業種=化学|鉄鋼・非鉄|機械|自動車|電機・精密|
     医薬・ヘルスケア|食品|家庭用品|商社|小売り|サービス|
     ソフトウエア|メディア|通信|建設|住宅・不動産|運輸|公益|金融
対  象 : 個人投資家向け情報サービス「MIR@I」会員31,566人(2023/11/20時点)
方  法 : 「MIR@I」会員専用Webサイトにて回答
期  間 : 2023/11/20~26
送  付  数 : 31,566件
回答者数 : 3,239件(回答率10.26%)


 

【第3位】医薬・ヘルスケア
独自技術を持つ医療機器メーカーに鉱脈あり

suzukazu20230925

鈴木 一之
Kazuyuki Suzuki
株式アナリスト

――個人投資家が選んだ2024年の注目業種の第3位は医薬・ヘルスケアでした。アンケートで寄せられたコメントでは「コロナ禍以降、改めて医療の重要さを実感した」といった内容のものが多くありました。 
※アンケート回答者のコメントの一部を「2024年の注目業種ランキング&コメント」に掲載

 新型コロナウイルスの影響が収束に向かい、大手製薬各社は、M&Aや新薬開発を加速させています。とはいえ、新薬開発には莫大な投資と長い時間がかかるもの。財政悪化で医療費抑制が続く日本では、投資に見合った収益を得るのがますます難しくなっています。そこで医療セクターから投資先を探すなら、個人的には医薬品よりも医療機器メーカーに着目するとよいと考えています。

 例えば、体温計で知られるテルモ〔4543〕は、血管治療用のカテーテル、関節リウマチ等の自己投与で用いる薬剤充填用注射器など、一定期間ごとに画期的な製品を世に送り出し続けているユニークな企業です。

 また、朝日インテック〔7747〕は、血管内の疾病治療のために挿入するカテーテルを患部に導くガイドワイヤーで世界的に評価が高く、テンバガー級の成長が続いています。2024年も要注目だと思います。

【第2位】金融
マイナス金利政策解除で恩恵を受ける銀行

――注目業種の第2位は金融でした。注目理由として、日本銀行のマイナス金利政策解除に期待するコメントが目立っていました

 日銀のマイナス金利政策導入時に最も株価が下がったのが銀行株ですから、2024年にこれが解除されるとすれば、最も恩恵を受けるのも当然、銀行ということになります。

 そうして株価上昇局面を迎えた場合、メガバンクは一斉に値を上げるでしょうが、特に選ぶなら総合力を評価して三井住友フィナンシャルグループ〔8316〕をあげます。家計管理アプリ「Olive」(オリーブ)のヒットで、同社は若者世代をローン利用などに呼び込むことに成功しています。

 地方銀行は地域の資金需要が判断材料になります。仙台市の七十七銀行〔8341〕は、資金需要が旺盛な地場のスタートアップを応援していますし、財務面でも赤字を出し終えているので地銀株としては期待が持てます。
 

【第1位】自動車
EV化への対応で格差が広がるか

――個人投資家が2024年にもっとも注目する業種は自動車でした。個人投資家からは、EV化進展に対する期待と不安のコメントが多数寄せられていました。

 リチウム電池に必要なレアメタルの調達やEUのガソリン車規制の動向、水素自動車の進展など不透明な要素はあるものの、2024年も自動車業界はEV化を軸に動くでしょうね。
 注目銘柄も、EV対応への方向性が明確な企業をあげたいと思います。

 まずは、2026年に欧州新車販売の20%をEVにすると表明したトヨタ自動車〔7203〕。自動車業界には、すべての情報を整えてから公表する特性がありますから、中期目標としてこれだけ具体的な数値を掲げた点からも順調に準備が進んでいることがうかがえます。

 トランスミッション(変速機)の製造で世界トップのアイシン〔7259〕も、EV対応への加速が鮮明です。EVではトランスミッションが不要になるため、生き残りを模索してきた同社は、従来のエンジンにあたるEVの駆動系装置「eAxle(イーアクスル)」を自動車メーカーに供給すると発表しました。明記されてはいませんが主にトヨタ向けと推察されます。自動車メーカーの“秘中の秘”である駆動系部分を託された同社の成長余地は大きいと考えます。

 ブリヂストン〔5108〕も、2024年スタートの中期経営計画で、車体が重いEVに対応する軽量タイヤの技術「ENLITEN」(エンライトン)に集中し、2030年には全製造分の90%をEV向けにシフトすると表明しています。

 2023年の自動車関連銘柄は、半導体不足に苦しみつつもTOPIX-17業種の業種別株価指数でトップクラスでした。では、2024年も業界として好調が続くのか? 私は、EVシフトがさらに加速することで、むしろ勝ち組と負け組との格差が広がると見ています。

【スズカズ注目業種】化学
構造改革で化学メーカーに飛躍の可能性

――スズカズさんが2024年に注目している業種についても解説をお願いします。

 個人的に注目している業種は化学です。化学メーカーはBtoBの事業が主体なので、その全体像がイメージしづらいかもしれませんが、身のまわりのすべての製品と関わりがあるといっても過言ではありません。GX(グリーントランスフォーメーション)の時代に日本の産業界が最も貢献できるのは、化学の分野かもしれません。

 化学セクターで成長の芽を探す手掛かりは、各社の事業構造改革への取り組みです。例えば、三菱ケミカルグループ〔4188〕は、医薬原料や自動車パーツ向けプラスチック材料に特化する方針を示しました。同社は、創業初の外国人社長のもとで祖業の石油化学の売却を打ち出すなど、その本気度がうかがえました。24年4月にはその社長を交代する人事を発表しており、今後の改革の方向性から目が離せません。

【総括】全体展望
上昇基調続く2024年
2025年には日経平均5万円台も?


――最後に、2024年全体の展望や今後の注目ポイントを教えてください。


 2024年の株式市場のキーワードは、「脱炭素」と「マイナス金利政策解除」の2つになると思います。特に後者は、為替相場にも影響しますので、多くの企業の業績を左右する可能性があります。

 一方で、企業業績の重しになると思われた原材料費・燃料費の高騰は、価格転嫁が成功して大きなマイナス要因とはなっていません。インフレが進み、値上げを受け入れる環境が生まれたためです。その代わり、企業は今後、より付加価値の高い商品やサービスを求められることになります。2024年はそんな動きから企業の成長性を見極めることができそうです。

 新NISAや東証再編から続く市場改革もあって、これから株式投資はますます活気づき、2024年も市場は上昇基調が続くことになるでしょう。

――「辰巳天井」(辰年と巳年は高値を付けるという格言)ですか?

  2025年には、日経平均が5万円台に達すると私は予想しています。

 今回、紹介した銘柄は、一定の実績を認められた企業が主でしたが、企業努力によって新たに注目を集める銘柄も生まれるはずです。2024年は、そんな銘柄を探してみてはいかがでしょうか。

 

 

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