さまざまな産業の生産現場を流体制御技術で支える日本ピラー工業。近年の世界的な半導体需要の急増により、その製造装置に欠かせない同社製品へのニーズも増大し、2023年3月期には過去最高業績を記録した。さらなる成長を目指し、新中期経営計画「One2025」(ワンニーゼロニーゴー)を推進中の同社代表取締役社長の岩波嘉信氏に、躍進の背景と今後の展望をうかがった。
代表取締役社長 社長執行役員
流体制御技術で持続可能な社会の実現に貢献
――コア技術である“流体制御技術”について、改めてご説明いただけますか。
岩波嘉信社長(以下、岩波) 創業以来、当社が一貫して扱ってきた“流体”とは、液体(水や石油、薬液)と気体(ガスや水蒸気)を指します。
例えば半導体の製造工程では、微細なごみを取り除くため、洗浄液として硫酸や塩酸などの劇薬を使用しています。これらが製造装置から漏れると、作業員に重大な危険が及びますし、自然環境への被害も甚大です。こうしたリスクを低減するため、当社では製造現場の配管をつなぐ継手やポンプ、バルブに使用される機能部品(シール材)の開発・製造を通じて、安心・安全な労働環境や持続可能な社会の実現に貢献しています。
――製品はどのような産業で使われているのでしょうか?
岩波 主力の電子機器関連事業は、半導体や液晶ディスプレー、医療機器などに関わりますし、もうひとつの柱である産業機器関連事業では、電力、上下水道、鉄道、自動車、船舶など、さまざまな社会インフラを黒子として支えています。私たちの製品は、直接皆さまの目に触れるものではありませんが、世界中のあらゆる製造現場を支えていると自負しています。
――半導体洗浄装置向けの継手は世界シェア90%*を獲得しているそうですが、貴社の製品が選ばれる理由は何でしょうか。
* 日本ピラー工業調べ
岩波 長年の研究開発で培ってきた、素材の知識・ノウハウでしょうか。流体によって、耐薬品性、耐候性、低摩擦性、難燃性など、シール材にはさまざまな性能が求められます。同じ部品であっても、お客さまの多様なニーズに応えてカスタマイズする技術力を評価いただいていると思います。
また、現在主力の半導体洗浄装置向けふっ素樹脂製継手は、産業機器関連事業製品の原材料として使用していたふっ素樹脂の知見を活かして開発されたものです。このように素材を熟知しているからこそ、さまざまなソリューションを提供できることも評価いただいているポイントだと思います。
近年の世界的な半導体需要の増加に対しては、積極的な先行投資が功を奏し、半導体メーカーの生産能力増強の動きにもしっかりと対応し、供給責任を果たすことができました。この点も、お客さまに信頼を寄せていただいているポイントだと考えています。
新中期経営計画でさらなる成長の礎を構築
――今期(2023年度)から、新中期経営計画「One2025」(2023~2025年度)がスタートしています。そのポイントをお聞かせください。
岩波 新中計は、過去最高業績をあげた前中計(2020~2022年度)の成果を踏まえ、さらなる成長の礎となる経営基盤の構築を目的としています。事業戦略に、①コア事業の進化、②グローバル競争力の強化、③新規事業基盤の創造を掲げていますが、一丁目一番地は①コア事業の進化。すなわち、当社の業績に大きく貢献している半導体洗浄装置向け事業のさらなる拡大・成長です。
生成AIや自動運転など、膨大な情報量を必要とする技術が本格化されると、半導体の省力化が急務になり、チップの微細化が進みます。省力化・微細化に向け、当社製品に対するお客さまからの要求水準はますます高まりますが、長年にわたって当社が培ってきた技術力で他社と差別化を図ります。また2023年9月には、新工場となる福知山事業所第2工場(京都)が竣工し、当社の生産能力は最大1.8倍となります。引き続き世界中での飛躍的な伸びが見込まれる半導体製造装置の需要を取り込んでいきます。
――②グローバル競争力の強化についてはいかがでしょうか。
岩波 半導体洗浄装置向け継手のグローバルシェアは90%ですが、裏を返せば10%の開拓余地があることになります。グローバルサプライチェーンの強化を図りつつ、さらなる海外市場への参入を目指します。また、半導体市場において大きな成長が見込まれる中国も見過ごせません。2022年度には、滁州ピラーにおいて半導体市場向け製品の生産を開始しましたし、半導体関連企業が集まる北京には新たな事務所を設置するなど、本格参入に向けて準備を整えています。
――③新規事業基盤の創造では、具体的にどのような事業を想定されていますか。
岩波 以前から、当社では保有するシール技術や材料技術とのシナジーを意識して、新規事業の創出を進めてきました。ふっ素樹脂の滑りやすい性質に着目して、建物の免震装置(スライドベアリング)に活用したのはその一例です。そのほか、高齢社会において今後も伸びが期待される医療機器市場などを想定しています。
産業機器関連事業では、“脱炭素”がキーワードになると考えています。例えば、新たなエネルギー源として注目される水素。この水素を運搬・貯蔵するには、液化の必要があります。液体の水素を扱うには-253℃の極低温の環境が必要となるため、メカニカルシールやグランドパッキンにも、今まで以上に過酷な環境に耐えられる性能が求められます。当社の技術で水素発電の実用化に貢献し、“脱酸素”の実現とビジネス機会の創出を果たしたいと考えています。
チャレンジする企業風土で次の100年へ
――株主還元の方針についてお聞かせください。
岩波 配当性向30%以上をめどに、安定的で持続的な配当と、その水準の向上を目指すことを基本方針としています。中長期のトレンドでは、配当金の実額は安定的に上昇しております。数値的な目標としてROE10%以上を掲げるほか、EPS(1株当たり当期純利益)の向上を念頭に置いており、2022年度には10億円規模の自社株買いを行いました。成長投資と株価やキャッシュのバランスを見ながら、今後も機動的に、意識的に行っていく考えです。
――最後に個人投資家の方々に向けてメッセージをお願いします。
岩波 当社は売上高500億円規模と、東証プライムのなかでは比較的小粒な会社です。しかし、100年で積み上げてきた技術力+営業力=会社力は卓越したものがあり、成長のポテンシャルは高いと自負しています。2024年の創業100周年という節目を良い形で迎えることができるように、また、次の100年への飛躍の機会となるように、新中計期間においては目標達成とあわせて、チャレンジングな企業風土の醸成に努めていきます。ステークホルダーの皆さまにとって、長期的に見守ることで満足度が高まる企業でありたいと考えていますので、当社にご注目いただき、成長を応援いただければ幸いです。
●会社概要(2023年3月31日現在)
概要 | |
---|---|
|
日本ピラー工業株式会社 NIPPON PILLAR PACKING CO.,LTD. |
|
機械 |
|
1924年5月 |
|
3月 |
|
東証プライム |
|
代表取締役社長 岩波 嘉信 |
|
4,966百万円 |
|
25,042千株 |
|
867人(連結) |
《編集タイアップ広告》
日本ピラー工業の岩波 嘉信代表取締役社長の素顔を紹介
トップの素顔「海外経験で身につけた独立心を糧にして」