「健康づくりは幸せづくり」をモットーに、医療用医薬品とコンシューマーヘルスケア(CHC)の2つの事業を車の両輪に例えた「両輪経営」で堅実経営を続け、さらにはグローバル展開を成長のエンジンとしてM&Aやアライアンスにも積極的に取り組んでいるゼリア新薬工業。国民医療費の抑制策推進により厳しい経営環境が続くなか、持続的成長を果たしている同社のパワーの源泉を探った。
事業環境が厳しさ増すなかで過去最高業績を更新
国内医薬品業界は、薬価の毎年改定による引き下げや、ジェネリック医薬品(後発医薬品)の使用促進などの国民医療費抑制策が強力に推進され、事業環境は厳しさが増す一方だ。こうしたなかにあってゼリア新薬工業の2023年3月期の連結業績は、売上高683億8,322万円(前期比14.9%増)、経常利益75億7,944万円(同27.7%増)、当期純利益61億9,586万円(同56.4%増)と過去最高を更新した。2024年3月期は売上高が2023年3月期比6.8%増の730億円、経常利益は同18.7%増の90億円、当期純利益は同13.0%増の70億円と、さらなる増収増益を見込んでいる。
・2021年3月期業績は当基準等を遡って適用した後の数値
・2024年3月期の予想値は2023年8月3日の公表値
この好業績の要因は3つある。ひとつは、医療用医薬品事業とCHC事業を車の両輪に例えた「両輪経営」だ。2つのコア事業の売上高構成比は、医療用医薬品事業とCHC事業で約6:4となっている。それぞれの事業の強みを活かしバランスさせることで、持続的な成長を実現している。
2つ目は、得意分野への経営資源の集中だ。医療用医薬品事業では、消化器系領域を軸に展開。主力製品の潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」や、クロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤「ディフィクリア」、炎症性腸疾患治療剤「エントコート」、機能性ディスペプシア(FD)治療剤「アコファイド(一般名:アコチアミド)」を中心に独自の地位を築いている。CHC事業では、セルフメディケーションに貢献する製品開発に注力し、ラインアップ強化に努めてきた。主力の「ヘパリーゼ群」や「コンドロイチン群」などが、生活者からの高い評価を得ている。
M&Aやアライアンスを積極展開
3つ目は、積極的なグローバル展開である。「アサコール」「ディフィクリア」「エントコート」が海外で売上高を伸ばし、2023年3月期の海外売上高比率は47.4%(前期41.4%)と50%に迫った。M&Aで取得した海外子会社3社のなかでも、特にスイスのティロッツ・ファーマによるグループ業績への貢献は特筆すべきであろう。グローバル展開を強力に推進するなか、主に欧州地域にてその存在感を発揮した。
ティロッツ・ファーマの寄与もあり、前中計である第10次中期経営計画(2020~2022年度)では、欧州事業が業績を牽引し、3カ年で海外売上高を1.7倍にまで拡大させた。子会社を通じた自販体制を確立したことで、欧州地域で海外売上高の9割を占めるまでになっている。こうした取り組みにより、経営目標に掲げていたROE10%も10.3%(2023年3月期)とクリア、収益体質の大幅な改善に成功している。
2023年5月に発表した第11次中期経営計画(2023~2025年度)でも、戦略の主軸となるのは海外展開だ。新中計では、好調な欧州事業に加えてアジア地域での事業展開に一層注力していく。具体的には、欧州地域で「アサコール」「ディフィクリア」を主力に継続的な市場育成に取り組む。アジア地域では、製品輸出の拡大を図るとともに、ベトナムの子会社 F.T.ファーマが新規事業の開始に向け新工場の建設を進めている。
新中計では、2026年3月期までに連結売上高900億円、海外売上高比率50%以上を目標に掲げた。この達成には、両輪経営による事業拡大とグローバル展開のさらなる加速がカギとなる。このため、M&Aやアライアンスにも引き続き積極的に取り組んでいく方針を打ち出している。
第10次中期経営計画の報告および第11次中期経営計画|資料はこちら
※「2022年度(2023年3月期)決算説明会」資料(2023年5月16日)
消化器領域治療薬中心に新薬開発にも注力
新薬開発にも意欲的な姿勢を見せている。海外子会社のティロッツ・ファーマ(スイス)との連携によるグローバル開発体制のもと、重点領域である消化器分野を中心に、導入品を含めた新薬の研究開発を推進。自社オリジナル品のFD治療剤「アコファイド」のライフサイクルマネジメントにも取り組んでいる。FDは、食後の膨満感や早期満腹感、心窩部(しんかぶ)痛などの消化器系症状を訴えているにもかかわらず、原因となる器質的疾患が見当たらない疾患とされており、アコファイドは世界初のFD治療薬だ。現在、国内では小児FD患者を対象としたフェーズⅢ試験を実施、有効性および安全性を確認する段階に入っている。そのほか、低活動膀胱治療薬としての適用拡大も目指している。国内で開発を進める一方で、ライセンスアウトによって海外への展開も進めている。これまでにタイ、インドネシアおよびラテンアメリカなど15カ国で申請し、タイ、メキシコなど6カ国で承認を取得している。
また、ティロッツ・ファーマと世界的ベンチャーキャピタル大手TVMが、アメリカのバイオベンチャーに対して最大2,800万ドルを共同出資することを公表した(リリース:2023年7月28日)。このバイオベンチャーは、経口投与可能な新規ヒト化モノクローナル抗体(mAb)の開発を目的として設立され、潰瘍性大腸炎治療薬としての有効性実証を目指す。ゼリア新薬グループはmAbの開発で得る抗体医薬開発のノウハウを活かし、消化器領域治療薬の開発をさらに積極化していく方針だ。
還元強化で毎期増配を実施
上場以来、ゼリア新薬工業は株主重視の姿勢を堅持し、利益還元を充実させてきた。最近では、還元強化で毎期増配も続けている(2022年3月期35円、2023年3月期40円、2024年3月期44円予想)。加えて、株主からの支援に感謝し、株主優待制度も実施している。年2回、自社グループ製品を進呈している。
国内の医薬品事業を取り巻く環境がますます厳しさを増すなかで、海外への事業展開で着実に成果を残してきたゼリア新薬工業。同社の持続的成長への期待は高まるばかりだ。
●会社概要(2023年3月31日現在)
概要 | |
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ゼリア新薬工業株式会社 ZERIA PHARMACEUTICAL CO., LTD. |
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医薬品 |
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1955(昭和30)年12月 |
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3月 |
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東証プライム |
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代表取締役社長兼COO 伊部 充弘 |
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6,593百万円 |
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53,119千株 |
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単体840人/連結1,729人 |
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