1999年の日本ナレッジインダストリとアイエックスの経営統合から25年を迎えたアイエックス・ナレッジ。コンサルティングから開発・検証・運用までをワンストップで提供する独立系システムインテグレーターである。「先進と信頼のソリューション」を掲げる同社は、わが国の情報サービス産業の草分けとして幅広い業種の顧客ニーズに応えてきた。
今回、アイエックス・ナレッジをさらに深掘りすべく、「兜町カタリスト」編集長・櫻井英明氏と代表取締役社長・安藤文男氏の対談を実施。2022年11月以来2度目の対談は、読者から寄せられた質問への回答からスタートした。
安藤文男代表取締役社長
櫻井英明氏
“お客さまのお客さま”のニーズや課題までを考え開発
櫻井 前回の対談を読んだ読者から「業務内容がよくわからないので、投資対象にすべきかちょっと迷う」(40代/女性)といったコメントが寄せられていました。システムインテグレーターは縁の下の力持ちですから確かに理解しにくい部分はあるかもしれません。開発の具体例を紹介いただけますか?
安藤 当社業務の身近な例をあげるとすると銀行のATMでしょうか。どこのATMを利用しても利用者の銀行口座の残高はすぐ反映されますよね。そうした仕組みの裏側で当社が開発したソフトウエアは動いています。
また、今ではほとんどの方がスマートフォンを持っていると思います。その月額利用料金や割引料金などを計算する料金計算システムも得意とする業務のひとつです。当社の技術者は、通信事業者が提供するサービスの変更や技術の変化に合わせて行われるシステム変更にも対応しています。
櫻井 物流も得意分野とのことですが、こちらはどのようなシステムを……?
安藤 例えば、倉庫会社さまに提供した船舶輸送の管理システムなどです。船舶輸送では、寄港する港の順番や荷物の重量などによってコンテナの積み込み条件が異なる場合があります。そうしたさまざまな条件をクリアしながら、船舶にコンテナを効率的に積み降ろしできるシステムを提供しています。
このようなシステム開発では、お客さまの業務内容を細部まで理解しておく必要があります。倉庫会社さまの例でいえば、荷主企業という“お客さまのお客さま”のニーズや課題までを見極めながらシステムを開発するわけです。
情報サービス産業の発展とともに歩んだ60年
櫻井 50代・女性の読者からは「情報サービス業界の『草分け』とは知りませんでした」といったコメントがありました。経営統合前までさかのぼると、一方のアイエックス(旧社名・データープロセスコンサルタント)が1964年設立。ということは、まさにメインフレームコンピュータが登場した時期ですね?
安藤 メインフレームの時代から今やモバイルとクラウド全盛の時代ですから隔世の感がありますね。
櫻井 御社の成長は、そうした60年にも及ぶ激しい変化に対応しつづけてきた結果といえそうです。
安藤 お客さまのニーズに応えるため、当社社員は常に最新技術を勉強してきました。新しい技術へのチャレンジの積み重ねによって、お客さまの信頼を得てきたと考えています。
櫻井 御社の特色としては独立系であることもあげられます。メーカー系やユーザー系*1にもそれぞれの強みはあると思いますが、独立系であることのメリットは何でしょう?
*1 メーカー系はハードウエアメーカーが、ユーザー系は商社、金融、通信などの企業が親会社のシステムインテグレーター。ほかに外資系があり、独立系を含め4分類に大別される
安藤 意思決定の速さと仕事の選択の幅の広さが独立系のメリットだといえます。幅広い業界や企業のお客さまとお仕事ができることは、社内人財の強化にもつながっています。
櫻井 クライアントとの長年にわたる良好な関係と、そこから培われてきた人財力がアイエックス・ナレッジの強みなのですね。
安藤 当社が選ばれ続けるには、これまで以上にお客さまの業務に精通することが求められます。コロナ禍以降のDX化の潮流のなかで、多くのお客さまは「DXで何をすればいいのか」と手探りの状態にあります。ですから、私たちのほうからお客さまのニーズを先読みして、一緒にDX化やクラウド利用の可能性を考えていくことが重要となります。
さらなる成長を目指し、クラウドネイティブな会社へ
櫻井 近年の業績は非常に順調で、2023年3月期には連結売上高200億円を突破されました。好業績のポイントは何だとお考えですか?
安藤 第1に、案件の順調な増加が要因としてあります。加えて、PMO(Project Management Office)によるプロジェクトのモニタリングを徹底して採算性の確保に努めました。PMOでは、お客さまに約束したQCD(品質、価格、納期)と品質方針の達成のために、プロジェクトの見積もり段階から終了までの期間、プロジェクトマネジメントの支援を横断的に行っています。これにより見積もりの精度が向上し、開発工程でもしっかりとモニタリングすることでトラブル発生率が減少して採算性の向上につながっています。
櫻井 今後の成長に向けてはいかがですか。IT人財の不足への対応が肝心という声をよく聞きます。
安藤 2024年3月期には74人の優秀な新入社員を迎えることができました。独立系の当社は、メーカー系やユーザー系に比べると資本面で劣ることは否めません。この点を補うために現在は財務基盤の強化に力を入れていまして、社員が安心して仕事に取り組める環境づくりを進めています。
また、成長のスピードアップとケイパビリティ(提供サービスやそれを支える人財・技術・財務能力)拡大に向けてパートナー企業との事業連携やM&Aも検討しています。
櫻井 変化への対応を続けるには、プロフェッショナル人財の育成も大切です。キーワードはやはり「クラウド」になりますか?
安藤 おっしゃるとおり、クラウドは当社DX戦略の一丁目一番地に位置付けています。クラウド案件に対応できるエンジニアの増員を進めており、なかでも「Amazon Web Services」(AWS)と「Microsoft Azure」の資格取得に注力し、AWS認定資格取得数は200を超えています。クラウドネイティブな社員が集まったクラウドネイティブな会社を目指し、お客さまのニーズによってはアジャイル開発*2にも対応していきます。
*2 開発途中の仕様変更に柔軟に対応することで、従来よりも短期間での開発を実現する手法
櫻井 業績が好調ですから、前向きな株主還元を期待される投資家は多いと思います。配当に関しては、2024年3月期は普通配当で1株当たり30円を予定されています。
安藤 前期が普通配当25円、特別配当5円でしたから年間配当金額は変わりませんが、実質的な増配とさせていただきました。安定配当を基本方針としています。
DX時代の市場競争に打ち勝ち、今後も持続的成長を実現するため、クラウド人財の育成やパートナー企業との連携強化など社内外の共創を推進していきます。
※ 櫻井英明(さくらい・えいめい)氏プロフィール
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。大学卒業後、証券会社での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月から現職。幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。
●会社概要(2023年3月末日現在)
概要 | |
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アイエックス・ナレッジ株式会社(略称:IKI) I X Knowledge Incorporated |
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情報・通信業 |
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1979年6月 |
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3月 |
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東証スタンダード |
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代表取締役社長 安藤 文男 |
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11億8,089万7千円 |
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10,800千株 |
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1,260人 |
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