可変抵抗器をはじめとした電子部品を主力とする帝国通信工業は2023年の現在、 創業から79年。 来年2024年には80周年を迎える。 同社は2021年5月に初めての中期経営計画を策定し、 「抵抗器のNOBLE*から新生NOBLEへの深化と進化」 を大胆に打ち出している。 大変革を主導する代表取締役社長の羽生満寿夫氏に、 その狙いと進捗状況、 展望についてうかがった。 *NOBLE (ノーブル) は帝国通信工業のブランド名
羽生 満寿夫
Masuo Hanyu
代表取締役社長
創業80周年に向けて、 新スローガンを決定
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――来年2024年は帝国通信工業が創業されて80周年ですが、 それに向けて新しいスローガンを決定されました。 込められた思いを聞かせてください。
羽生 新スローガンは「さぁ、 NOBLEと実現しよう。 Together, we make good sense.」 です。 当社は第二次大戦中の1944年8月に、 無線通信機の部品専門メーカーとして創業されました。 その後、 戦後においては可変抵抗器を主力商品として、 ラジオ、 テレビ、 オーディオ機器等の電化製品、 ゲーム機や自動車機器などに提供してきました。 ただ、 可変抵抗器というのは函体の中に納められているので、 見ることができません。 そのことによって、 帝国通信工業やブランド名のNOBLEも、 一般に知られることはあまりありませんでした。 私たちはそれを「縁の下の力持ち」と言って納得させようとしてきたのですが、 やはり心に満たされないものが残っているわけです。 だから、 私たちは自分たちの歴史ある会社のことを、 電子部品業界の主役であるともっと外に向かって発信していきたい。 社員も同じように感じています。 その 「思い」 をスローガンにしたのです。
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そして、 これは社員全員が意識改革をして、 祖業である可変抵抗器の生産を守っていくだけではなくて、 実は可変抵抗器というのは見方を変えればセンサーにもなるわけですから、 その技術をさらに開発して、 成長分野や社会課題解決の領域にも積極的にチャレンジしていこうという意味を込めています。
――さらに20年後には創業100年を迎えます。 100年企業として、 どのようにありたいと思いますか。
羽生 日本では創業して100年続く企業は極めて少なく、 100年企業というだけで名誉と価値があるとされています。 しかし、 私たちはそこに甘んじるのではなく、 これからさらに大きく変わり、 進化していかなくてはなりません。 現在、 80周年に向けて、 製造業としての力をもっと培っていこうとしています。 例えば研究開発に力を入れることを宣言していますが、 そのために研究棟を新設します。 そして、 何よりも重要なのは社員の意識改革です。 チェンジ (革新) ・ チャレンジ (挑戦) ・ コミュニケート (連携)という 「3つのC」 の取り組みが、 各部署や各工場で始まっています。 この 「3つのC」 のうちのどれを重点的に取り組むのかを部署ごとに議論して決めて、 自分たちの課題として取り組むムーブメントです。 これらの取り組みを通じて、 社員が自ら発想し、 発信して、 会社を変革し進化させていく。 そうした企業文化を築こうとしています。
事業領域では、 現在の中期経営計画においては既存の可変抵抗器を中心とした分野に加えて、 医療 ・ ヘルスケアの成長分野と、 社会的課題解決に他社と協働して取り組むチャレンジ分野に注力していますが、 この分野構成そのものも20年先には変わっているでしょう。 しかし、 その時代にあっても効率的で質の高い生産技術と研究開発力、 そして自ら発想し発信できる企業文化が根付いていけば、 どんな変化にも対応できる企業へと成長し続けられると確信しています。
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新生NOBLEとして、 新しい領域にチャレンジ
――これまで世に送り出した電子部品のなかで、 もっと世間に知ってほしいと思われるのは何でしょう。
羽生 例えばフィルム基板があります。 これはフィルムの上に電子回路パターンを印刷するもので、 「薄く、 軽く、 柔らかい」 という特長を持ちます。 可動部を持った製品や曲面デザインの製品に活用でき、 消費者向けメーカーにとって製品デザインの幅を画期的に広げることができます。 これなどは、 ぜひもっと広く知ってもらって活用していただきたいし、 当社が用途開発やソリューションを提案して、 さらに普及を拡大させていくべき製品だと思います。
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今後も幅広い分野での用途が期待できる
――羽生社長から見た、 帝国通信工業の強み、 競争優位は何でしょうか。
羽生 ひと言でいえば、 お客さまの要望に応えられることだと思います。 まず社内に研究開発部門を擁していて、 お客さまの要望に応えた設計ができます。 そして自社で製造 ・ 組み立てができます。 しかも金型づくりやプレス加工まで社内で可能なので、 ものづくりに必要なすべての工程を一貫して社内で賄えるというのは、 電子部品メーカーとしては圧倒的な強みだと思っています。
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――中期経営計画では 「新生NOBLE」 を掲げられていますが、 どのような領域でどのようなことに挑戦しているのでしょうか。
羽生 次の事業の柱として、 当社の印刷技術や抵抗技術を活かして、 医療 ・ ヘルスケア部門を構築 ・ 拡大しようとしています。 脳波や筋肉の電気信号を検出するセンサーについては、 すでに一部では増産に入っていますが、 さらに拡大を追求していきます。 例えば、 これらのセンサーを搭載した医療機器は現在では病院でのみ使用されていますが、 これが保険適用されれば将来は個人利用への拡大も見込め、 そうなるとロットがまったく異なるレベルへと拡大します。 この医療 ・ ヘルスケア部門については、 中期経営計画の最終年度である2025年度に連結売上高の6%程度まで持っていき、 最終的には抵抗器など基幹部門と同程度の15~20%規模にまで引き上げ、 当社の柱のひとつにすることが目標です。
またチャレンジ分野としては、 印刷技術を転用した水漏れの検出などに取り組んでいます。 これは水族館での活用も想定していますが、 増水による川の氾濫の兆候を事前に検出することや、 地面の下の水を検出して土砂崩れなどを予知するといった、 社会的課題の解決という意味合いを強く持った取り組みです。 この分野も、 将来的には柱のひとつにしていければと考えています。
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帝国通信工業の成長可能性を認識していただきたい
――株主還元についてのお考えをお聞かせください。
羽生 配当については、 中期経営計画の期間中、 最低でも1株当たり60円を維持することを決定しています。 2023年度は増額して70円の配当になりますし、 2024年度の80周年には記念配当も行う予定です。 また、 自己株式の取得を推進することも検討しており、 自己株式の有効活用として、 事業提携や従業員持株対策といったことも考えています。
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――最後に個人投資家へのメッセージをお願いします。
羽生 当社はBtoBの会社なので、 一般の方への知名度が浸透していかないという問題がありました。 しかし、 それを不可避な問題としてあきらめてしまうのではなく、 当社からの情報発信を強めることで克服しようとしています。 さらに社内でも意識改革を進め、 新スローガン 「さぁ、 NOBLEと実現しよう。 Together, we make good sense.」 を制定して、 人にとって心地よいgood senseな製品を開発しながら成長していきます。 個人投資家の皆さまには当社の成長への可能性を認識していただきたいと思いますので、 どうぞよろしくお願いいたします。
●会社概要(2023年3月31日現在)
概要 | |
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帝国通信工業株式会社 Teikoku Tsushin Kogyo Co., Ltd. |
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電気機器 |
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1944年8月 |
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3月 |
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東証プライム |
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代表取締役社長 羽生 満寿夫 |
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34億53百万円 |
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10,141千株 |
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1,677人 (連結) |
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