“サステナブルな社会の実現”――。著しい産業発展の一方で、気候変動や食糧危機などの問題が浮き彫りとなり、今やそれは全世界的な重要課題となった。松田産業は、創業から約90年の間、「地球資源の有効活用」を理念とした事業を通じて、お客さまの課題解決と地球環境の保全に取り組んできた。循環型社会の構築を通じて事業の発展を目指す松田産業の成長の軌跡をレポートする。
代表取締役社長
「資源の有効活用」により、循環型社会の構築へ貢献
松田産業は、「限りある地球資源を有効活用し、業を通じて社会に貢献する」という企業理念のもと、「貴金属関連事業」と「食品関連事業」の2事業を展開する。創業は1935年、写真の感光材料や現像廃液を回収し銀を取り出す貴金属関連事業から始まった。その後、創業地のそばにあったマヨネーズ工場で不用となっていた卵白を、練り製品の「つなぎ」として販売したことで食品関連事業へ拡大、両事業において活躍フィールドが発展し、多岐にわたるソリューションを提供する異業種混成型の企業となった。
貴金属関連事業は、国内外メーカーの製造工程から排出されるスクラップなどに含まれる金・銀・プラチナ・パラジウムなどの貴金属を回収・製錬し、地金やめっき薬品などの製品に変えて資源を循環させる貴金属リサイクル事業を主軸とする。さらに、産業廃棄物の収集運搬・無害化処理なども行い、最先端産業を支えながら地球環境への負荷低減に寄与している。
食品関連事業では世界各国から多種多様な食品原材料を調達し、加工食品メーカーや外食・中食業界へ販売。安全・安心な食材を安定供給するという使命のもと、事業を通じ人々の豊かな食生活を支えている。
両事業に共通するのは、地球環境の保全と人々の生活の豊かさ・幸せを両立したい、「人を豊かに、地球を美しく」という思いである。
新中期経営計画開始 「社会変化に適応し進化し続ける企業」を目指して
前中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)を振り返ると、事業戦略の推進や経営基盤の強化などを進めた結果、業績は好調に推移し、3期連続の増収増益、各経営指標の目標達成、過去最高益を記録した。
その勢いで走り出した新中期経営計画(2023年3月期~2026年3月期)では、「積極投資の継続による収益基盤強化と新規収益源の創出」「持続的成長を支え加速させる経営基盤の強化」「ESG経営の推進による企業価値の向上」を成長戦略の基本方針としている。また、さらなる長期的な事業拡大を目指した大型投資計画や、ESGに関する重要課題の設定も盛り込んでいる。
目指す姿である「社会変化に適応し、進化し続ける、お客さま・社会から常に必要とされる企業へ」を実現すべく、お客さまや社会の課題解決に資する高い付加価値を提供していく。
大型投資と拠点展開により長期的な事業拡大を狙う
今般の新中計では、収益基盤の強化、新規事業展開ならびに経営基盤強化を目的に、4カ年累計で300億円規模の投資を予定している。
貴金属関連事業では、生産・物流機能の充実に向けて拠点を整備するため、埼玉県入間市と福岡県北九州市に、合わせて約86億円、約7万9千㎡の土地・建物を取得した。同社にとっては2017年に岐阜県関市に工場を建設して以来の大型案件だ。入間市においては、処理・生産能力拡充や効率の向上を目指す投資を計画している。また、北九州市については、エレクトロニクス産業の一大拠点である九州に大型拠点を設置することで、お客さまにより近い場所で質の高いサービスを提供でき、加えて地域性を活かして効率的かつ迅速に事業を拡大できると判断し、進出に踏み切った。また同市は、都市と自然が共存し、ゼロカーボンシティを表明するなど環境負荷低減に対する市政の取り組みが非常に強いことに加え、エコファクトリーを目指す同社にとって必要不可欠なインフラが整備されている地域であることも決め手となった。
食品関連事業では、海外拠点の展開を進め、現地市場への参入も見据えている。2022年3月、新たな現地法人としてインド・ムンバイにMATSUDA SANGYO TRADING INDIA PRIVATE LIMITEDを設立し、5月より営業を始めた。インドは水産品や農産品などの食品原料の調達先として有望であるだけでなく、世界第2位の人口を抱え経済成長を継続していることから、将来的には現地市場への販売も期待できる。今後インド国内だけでなく、さらに西の中東やアフリカまでも視野に入れたサプライチェーンの構築・拡大を図る。
生産性向上のためのIT化推進や人財育成および確保などの経営基盤強化へも積極的に投資をする予定だ。近年、業績を伸ばし続けている同社だが、拠点展開と成長投資を進めることで、長期的な視野でさらなる企業成長に取り組んでいく。
5期連続の増配、株主還元の充実に今後も取り組む
松田産業は事業拡大に向けて投資を積極的に進めているが、成長性を捉えた事業機会への最適資源配分、財務健全性の確保、株主還元のバランスを考慮し、持続的に企業価値を向上させることを資本政策の基本方針としている。株主還元については、成長投資のための内部留保とのバランスを考慮しつつ「安定かつ持続的な配当の実施」という定性的な方針に加え、新中計においては、株主資本配当率1.5%以上を目安とする方針を設置した。近年で急激に業績が拡大していることから配当性向では若干見劣りするものの、2023年3月期には5期連続の増配、年間配当50円を予定している。新中計の着実な実行とともに株主還元の充実も引き続き検討する構えである。
|||■COLUMN■|||
製薬業界の脱炭素化に貢献! 医療分野で新たなリサイクルスキームを構築。
松田産業は、2022年9月、大同樹脂と技術提携し、医薬品の錠剤の包装などに用いられるPTP(Press Through Pack)シートを新たな製品の原料として再利用するリサイクルの取り組みを開始した。
廃棄物処理施設として「PTPのアルミ箔とプラスチックフィルムの分離」に特化した破砕分離設備を関第二工場に導入し、松田産業の廃棄物への知見や機能と、大同樹脂の破砕・分離技術を融合することで、焼却処理を伴わず、CO2を発生させないリサイクル方法の構築を目指す。
すでに多くの製薬メーカーから高い注目を集めているが、この技術を他業界のニーズにも応用し、さらなる国内資源の循環を促進していく。
●会社概要(2022年12月1日現在)
概要 | |
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商号 | 松田産業株式会社 MATSUDA SANGYO Co., Ltd. |
業種 | 卸売業 |
設立 | 1951年6月18日 |
決算月 | 3月 |
市場 | 東証プライム |
代表者 | 代表取締役社長 松田 芳明 |
資本金 | 35億5千9百万円 |
発行済株式数 | 26,908千株 |
従業員数 | 1,544人※連結・2022年9月末日時点 |
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