セックは1970年に、3人の大学院生によって設立されたソフトウエア開発企業だ。以来「社会の安全と発展のために」を理念として、社会基盤システムから、宇宙開発、ロボットやAIなどの先端分野まで、さまざまな分野で実績を重ね、成長を遂げてきた。ここ数年好調に推移する業績に注目が集まる同社の成長の源泉は何か。また、将来性はどうなのか。代表取締役社長の櫻井伸太郎氏に、“スズカズ”こと株式アナリストの鈴木一之氏が直撃した。
1983年株式会社セック入社。開発部門で数々のプロジェクトを担当の後、2016年4月に開発本部長(現任)、2019年4月、代表取締役社長に就任した。
左:株式アナリスト 鈴木一之氏
証券会社で株式トレードに従事した後、インフォストックスドットコムで日本株チーフアナリスト。2007年よりフリー。出演番組に「東京マーケットワイド」(TOKYO MXテレビ)など。
未来を拓く「リアルタイム技術」
鈴木 貴社の業績は非常に好調で、2022年3月期まで5期連続で過去最高益を更新しています。貴社には社会基盤システム、宇宙先端システム、モバイルネットワーク、そしてインターネットの4つのビジネスフィールド(BF)がありますが、この収益を牽引している事業領域は何でしょうか?
櫻井 ここ数年、業績を順調に伸ばしていたのは宇宙先端システムBFで、そのなかでも車両自動走行を含めたロボットの研究開発案件が好調でした。一方、モバイルネットワークBFは売り上げが減少傾向にありましたが、XR(クロスリアリティ)関連の開発が好調で、今期(2023年3月期)は増加傾向に転じています。社会基盤システムBFも好調です。官公庁向けの開発を中心に、当社の業績を支えています。
※2023年3月期の予想値は2023年2月9日の公表値
鈴木 「リアルタイム技術専門のソフトウエア会社」を標榜されていますが、この「リアルタイム技術」を改めて説明していただけますか。
櫻井 わかりやすい例は、クルマの自動運転です。自動運転の機能があるクルマはカメラやセンサーを搭載していて、道路の白線や信号の色、車間距離といった運転に必要な情報を常に検出しています。これらの情報を取り込んだコンピュータが、人が介在することなく自動的に判断して、ブレーキを利かせたり、加速させたり、方向を変えたり、ということをするわけです。
ここで重要なのは、このさまざまな情報がどんなタイミングで、どんな順序で入ってくるのか、予測したりコントロールしたりできないということです。予測のできない情報に対して、瞬時に応答し、止まることなく動き続ける、高度な信頼性が求められるシステムを設計する技術が、「リアルタイム技術」です。
鈴木 命の危険に直結しますから、コンマ何秒、またはもっと短い時間で、必ず動作することが保証されなければなりませんね。
櫻井 おっしゃるとおりです。そのために、膨大な時間とコストをかけて、あらゆるケースを網羅し、当社のソフトウエアが正しく判断しているか検証を重ねています。
鈴木 リアルタイム技術は、小惑星探査機「はやぶさ2」にも使われたとか。
櫻井 当社の大きな役割は、はやぶさ2の頭脳に相当する「自動化・自律化運用」の機能の開発、小惑星着陸誘導のための画像処理機能の開発の2つでした。人間が一切介在せず、はやぶさ2のなかで解決しなければならないという点では、クルマの自動運転と一緒です。
鈴木 宇宙開発はこれからたいへん注目される分野で、そうしたなかに貴社の技術が使われることになるわけですね。
櫻井 私たちの言葉で「QCD&I」(品質・価格・納期およびイノベーション)といっていますが、注文通りに(ソフトウエアを)実装して結果を出すだけではなくて、お客さまの想定を超える便益を提案できるところが、当社を選んでいただける理由だと思っています。そういう開発をやらせてもらうことによって新しい技術の知見を得て、それをまたほかのお客さまにも提案していく。これが、当社が成長しつづけるためのポイントだと考えています。
セックの次代を担う新技術への挑戦
鈴木 貴社がさらなる成長のためのエンジンとして、注力している分野はありますか?
櫻井 当社はソフトウエア会社ですが、経済産業省のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助を受けて、「エッジAIチップ」を開発しようとしています。これまでのように、情報をサーバーに集約するのではなく、個々のデバイスで分散してやっていくという「Web3.0」という概念があります。これが実現した時に、デバイス側に搭載してその場で判断するのが「エッジAIチップ」で、IoTやロボット分野での応用を目指しています。
鈴木 「エッジコンピューティング」は、私の理解ではクラウドやサーバーが不要になるというものですが、これは本当ですか?
櫻井 まったくいらなくなるわけではありませんが、クラウド一辺倒ではなくなります。世界のクラウドビジネスで覇権を握るGAFAM*に対して、クラウドやサーバーがなくてもいろいろなことができるということを、日本発で世界へ広めていく。ここが当社の目指すところです。
さらに、2017年からJAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同で研究開発を始めたMR(Mixed Reality=複合現実)もそうです。現実世界とデジタル世界の境界をなくし、デジタル世界に直接アクセスできるようにする技術です。まずBtoCのコンシューマー向けのサービス市場では、メタバースのプラットフォームを開発しています。次にBtoBのビジネス向け市場では、製造業の工場などさまざまな領域にソリューションを展開し始めています。
(データ提供:JAXA)
新卒採用にこだわる理由
鈴木 すばらしいビジョン、美しい成長戦略をお持ちだなと思いながらうかがってきましたが、今後の課題については、どう認識されていますか?
櫻井 なんといっても、優秀なエンジニアの採用です。リアルタイム技術を習得するためには、コンピュータの基礎を徹底的に身につける必要があります。そこで、当社では新卒採用にこだわっています。
鈴木 選抜方法も独自の方法で行っていると聞いています。
櫻井 応募者ひとりひとりについて、当社で活躍できるエンジニアとしての素養を丁寧に確認しています。まず、論理的思考力を重視しています。筆記試験だけでなく、自分で書いた論文をプレゼンテーションしてもらっています。非常に手間がかかりますし、コストも膨大ですが、なぜ論文にこのテーマを選んだのか、どういうアプローチでテーマに対峙したのかを見ることで、その人の考え抜く力がわかります。さらに最終面接では、私自身が対面で人となりを見極めています。また入社後には、個々の持つ潜在能力を顕在化させるために、6カ月の研修期間を設けています。
鈴木 人材の採用、育成に時間と手間をかけることで、世界初、日本初の技術やシステムが生まれてくるというわけですね。
セックに頼めば必ず何か結果を出してくれる
鈴木 最後に個人投資家の皆さまに向けてメッセージをお願いします。
櫻井 3つあります。まず、当社のあり方を端的にお伝えする例として、「大企業とセックの違い」をご紹介します。これは採用時に学生に話すのですが、「大企業には多くの線路がすでに用意されていて、あなたが入社すれば決まった目的地に安定的にたどり着ける」と。それに対して、「線路のないところに、線路の作り方から教える。それがセックだ」と話しています。
次に、私が最近よく使う言葉に、「ディペンダブル(dependable) セック」があります。直訳すれば「頼りがいのあるセック」となりますが、セックに頼めば必ず何か結果を出してくれる。課題を見つけて解決してくれる。そう頼られる会社であり続けたい。それにはやはり、トップがしっかりと方向性を示していかねばならない。そう思っています。
最後に、「世界のサンゴ礁の総面積は地球表面の0.1%にすぎないが、そこに全世界の海洋生物種の25%が生息している」という話に感銘を受けたことがあります。規模は小さくても多くの方に頼っていただけるような、そういう会社であり続けたいと思っています。
この3つの考えをベースに、まずはしっかりと業績をあげ、株主の皆さまに還元し、かつ社員にも還元する。そのためには、やはり研究開発を止めるわけにはいきませんし、採用にも注力していきます。当社は、今申し上げたことがうまく回り始めているということを、個人投資家の皆さまにご理解いただきたいと思います。
鈴木 ありがとうございます。櫻井社長は優秀な社員を束ねて推進していくパワーをお持ちだなと実感できました。楽しい時間をありがとうございます。
※2018年3月期配当は、普通配当36円に東証1部指定記念配当10円を加えた金額。また2020年3月期配当は、普通配当53円に創立50周年記念配当20円を加えた金額。2023年3月期の予想値は2023年2月9日の公表値
●会社概要(2023年2月10日現在)
概要 | |
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株式会社セック |
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情報・通信 |
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1970年5月 |
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3月 |
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東証プライム |
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代表取締役社長 櫻井伸太郎 |
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4億7,730万円 |
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5,120千株 |
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342人(2022年4月1日現在) |
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セックの櫻井伸太郎 代表取締役社長の素顔を紹介
トップの素顔「リアルタイム技術で豊かな社会の実現に貢献する」