1896(明治29)年、日本初の民間による機械式製粉会社「日本製粉株式会社」として創立されたニップンは、創業125年にあたる2021年の「株式会社ニップン」への社名変更を機に、新たな経営理念、長期ビジョンを掲げ、総合食品企業として進化すべく、その実現に向けて邁進している。今後の成長戦略、あるいは将来像について、代表取締役社長の前鶴俊哉氏にうかがった。
前鶴 俊哉
Toshiya Maezuru
代表取締役社長 社長執行役員
強みは製粉をベースに積み上げた商品開発力
――「ニップン」という社名もすっかり浸透したと思いますが、まだ前社名の製粉会社のイメージを持っている方も多いかもしれません。
前鶴 社名を変更したのは、製粉だけにこだわらない総合食品企業として成長するという意欲を、皆さまにお伝えするためでした。当社は1950年代から事業領域の拡大に努めており、現在では食品事業の売上高比率(連結)が約6割、製粉事業が約3割となっています。
――食品事業の概要を教えてください。
前鶴 当社の食品事業は、食品素材(プレミックス*¹やコーン等の業務用食品)、加工食品(オーマイブランドの家庭用パスタやドライグロッサリー等)、冷凍食品(冷凍パスタや冷凍米飯等)、中食(弁当や調理麺等の供給)の4部門がメインとなります。なかでも冷凍食品事業と中食事業は今後の重点領域と位置付けています。
――製粉事業の状況はいかがでしょうか?
前鶴 生活に欠かせない小麦粉を供給する製粉事業は、今後も当社にとって重要であることは間違いありません。愛知県知多市に新設を予定している製粉工場が2026年2月に稼働すると、当社製粉工場の臨海比率は95%になります*²。小麦粉を安定的に供給するための施策には、引き続き積極的に取り組んでいきます。
*1 ケーキ、パン、惣菜などを簡便に調理できる調製粉。Prepared Mixの略
*2 臨海工場は大型穀物船が接岸でき、工場の原料小麦サイロに直結できることなどから、原料調達コストの削減につながる
――食品業界は競争が激しい環境にあると思いますが、他社にはない食品企業としてのニップンの強みとは、何でしょうか?
前鶴 創業来の主力事業である製粉をベースとした商品開発にはさまざまなノウハウが積み上げられており、そうした「商品開発力」が、当社の強みであると考えています。例えば、他社に先駆けて2003年から販売している「アマニ関連商品」では、油だけでなく粒の状態でローストしたもの、粉末にしたもの、マヨネーズやドレッシングといった派生商品も開発しています。
また当社の開発部門には、自由な発想で取り組む風土があり、豆腐の加工技術を応用したプラントベースフード(植物由来の原材料を使用した食品)の「ソイルプロ」は、メンバーが自主的に取り組んで開発した商品です。
長期ビジョン達成で存在感ある総合食品企業へ
――2022年に制定された経営理念についてご説明ください。
前鶴 新たに定めた経営理念(下図参照)には、食の提供をきちんと実現し、お客さまの健康に貢献するとともに、おいしいと感じていただき、幸せ・笑顔になっていただきたいという思いを込めました。またステークホルダーの皆さまや、社会に必要とされる会社であり続けるため、環境への配慮や社会貢献、ガバナンスも、しっかりやっていきたいという決意も表しています。
前鶴 あわせて発表した「長期ビジョン」では、総合食品企業としての存在感を高めるため、売上高5,000億円(連結/以下同)、営業利益250億円の規模まで成長していくという目標を掲げました。この「長期ビジョン」を実現するためのマイルストーンとして、2026年度までに売上高4,000 億円、営業利益150 億円を目指す、「2022-2026中期目標」を策定しました。
中期目標を達成するため、基盤事業の収益力を強化するとともに、冷食・中食等の成長事業に対しては、戦略的な投資を実施して成長を加速します。また、新規事業や海外での新たな取り組みについても検討を進めており、なるべく早く具体的なものを提示したいと考えています。
※2020年度は、会計方針の変更に伴い遡及適用が行われたため、遡及適用後の数値を記載。2022年度の予想値は、2023年2月3日の公表値
――中期目標を実現するための成長ドライバーとして、どのような分野に期待されていますか?
前鶴 重点領域として、冷凍食品事業、中食事業、ヘルスケア事業、海外事業の4つに注力します。
冷凍食品事業は、特徴ある品揃えによる新規顧客の獲得や販売チャネルの強化により売り上げを拡大し、確実に利益に貢献する事業に育てていきます。中食事業は、生産規模の拡大とDXの導入などによる効率化、さらには販売先の多角化等により、利益率の向上とマーケットの拡大を図ります。ヘルスケア事業は、「セラミド」「パミスエキス」「オリーブ果実マスリン酸」といった機能性素材の認知拡大策の実行や、販路拡大等の施策を推進します。海外事業は、2023年8月にインドネシアでプレミックス工場が稼働予定で、同地を含めたASEAN地域の販売を拡大するとともに、アメリカでも販売拠点の拡大と供給体制の拡充を進め、現在3%程度の海外売上高比率(連結)を、2倍(6%台)とすることを目指します。
食を通じて人々のために貢献できる会社に
――サステナビリティへの取り組みについてお聞かせください。
前鶴 「小麦」という自然の恵みを享受して事業を行っているので、サステナビリティについては経営の根幹に関わる課題として、きちんと注力していきます。環境課題に対しては、工場での環境ISOの取得や太陽光発電設備の設置、冷凍食品のトレーの森林認証紙への変更など、以前から積極的に取り組んできました。また、次世代につなぐための人財投資にも注力しており、教育研修プログラムの充実を図るとともに、多様な人財が幅広い分野で活躍できるよう、職場環境の整備に努めています。社会貢献やガバナンスの強化も含め、今後もサステナビリティを基軸とした経営を推進していきます。
――最後に、個人投資家の皆さまへのメッセージをお願いします。
前鶴 新たな経営理念にある「人々」には、当然ながら株主の皆さまも含まれます。きちんと配当を実施すること、株価の上昇に努めることが、きわめて大切であると認識しています。これからもご期待に沿うパフォーマンスを発揮できるよう精励するとともに、コミュニケーションをより一層大切にして、信頼獲得のためのエンゲージメント活動にもしっかりと取り組んでいきます。
当社ではさまざまなアプローチで事業展開を行っていますが、そのベースにある「食を通じて人々のために貢献できる会社でありたい」という思いは、いささかも揺らぐことはありません。当社事業に関心をお寄せいただき、見守っていただけますと幸いです。
※2022年度の予想値は、2023年2月3日の公表値
●会社概要(2022年9月30日現在)
概要 | |
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株式会社ニップン NIPPN CORPORATION |
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食料品 |
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1896年9月 |
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3月 |
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東証プライム |
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代表取締役社長 社長執行役員 前鶴 俊哉 |
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122億4,000万円 |
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78,824千株 |
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3,908人 |
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