2024年からスタートする新しいNISA(少額投資非課税制度)。現行NISAから大幅に制度改正され、使い勝手が飛躍的に向上したといわれています。そこで、個人投資家(MIR@I会員)3万3,000人から新NISAについて疑問・質問を募集。数の多かった質問のなかからいくつかをピックアップし、人気の株式アナリストのスズカズこと鈴木一之氏に答えていただきました。
Part.2では、新NISA活用の留意点などについて解説してもらいます。
新NISAのメリットとデメリット
――MIR@I会員からは、まだまだたくさんの質問が寄せられています。ここからは、そうした質問のいくつかに回答いただけますでしょうか。
NISAを始めるメリットを教えてほしい。(神奈川県・男性・60代・自営業)
※質問の文言は、文意を損なわない程度に修正しています
鈴木 最大のメリットは、いうまでもなく、一定の投資枠までの運用益が非課税(通常の税率は20.315%)になることです。成長投資枠であれば、年間240万円までの株式投資の配当金や売買益にかかる税金が減免されます。
一方、デメリットは、値下がりに弱いことです。損益通算ができないので、値が下がった場合、どうしても含み損を抱えたまま保有し続けてしまいがちで、売るのが遅くなってしまいます。下がり続ける株を手放さないのが、一番、損をするパターンです。新NISAでは売却した分の投資枠が翌年以降に再利用できるので、値を下げた場合は、早めに損切りすることをお勧めします。
現在NISA未活用の人が、新NISAを待たずに現行NISAを活用するメリットとデメリットを知りたい。(茨城県・男性・50代・無職)
※質問の文言は、文意を損なわない程度に修正しています
鈴木 メリットしかありませんから、2024年を待たずに現行NISAを活用しましょう。現行NISAの5年もしくは20年の口座開設期間中は、現行NISAと新NISAの併用が可能となっています。
新NISA活用における銘柄の選び方
新NISAで銘柄を選ぶ場合、一番重視すべき項目は?(大阪府・男性・60代・会社員)
※質問の文言は、文意を損なわない程度に修正しています
鈴木 銘柄選定では、値上がり期待のグロース株より、値動きが小さくて配当金狙いのディフェンシブ銘柄のほうがNISA制度には合っていると思います。基本、増収増益で、できれば増配を継続している手堅い銘柄がいいでしょう。
NISAに適した投資信託は、どのようなタイプのものですか?(千葉県・男性・70代以上・無職)
※質問の文言は、文意を損なわない程度に修正しています
鈴木 アクティブファンドよりインデックスファンドのほうがいいでしょうね。
スズカズが新NISAで買いたい銘柄
NISAで買うべき、おすすめ銘柄は?(東京都・男性・40代・会社員)
※質問の文言は、文意を損なわない程度に修正しています
鈴木 私が銘柄選定するなら、①業績が堅調、②連続増配か増配基調(タコ足配当*は除く)、③配当利回り3%程度、④大型株かつディフェンシブ銘柄――を条件にします。
* タコ足配当 利益がないにもかかわらず過分な配当金を出すこと。資産の売却や積み立て金の取り崩しなどを行っている状態で、業績や財務状況に難点がある可能性がある
具体名をあげれば、積水ハウス[1928]、アステラス製薬[4503]、稲畑産業[8098]、三菱HCキャピタル[8593]、MS&ADインシュアランスグループホールディングス[8725]の5銘柄。市況が悪く、マーケット全体が下げているタイミングを狙って、これらの銘柄を買います。
※銘柄名をクリックすると、野村證券の銘柄詳細ページに移動します
長期運用が基本スタンス
新NISAでは、投資枠を早めに埋めるべきか、10年以上の長期で運用すべきかで少し迷っています。(兵庫県・女性・50代・主婦)
※質問の文言は、文意を損なわない程度に修正しています
鈴木 非課税保有限度額は総枠で1,800万円、年間で360万円までなので、最短5年で限度額に到達します。ただ個人的には、5年で総枠を埋めるよりも、インカムゲイン重視で、もう少し長期の保有のほうが向いていると思います。 今の時代は、だいたい3年置きに大きな暴落があって、3カ月に1度は小さな下げがあります。非課税保有限度枠にある程度の余裕を残しておいて、そうした下落のタイミングを狙い、あらかじめ選定しておいた銘柄を集中的に買い入れるようにします。損益通算ができないNISAでは値下がりを極力避けたいので、高値つかみを避けつつ、底値圏を狙うわけです。
NISA枠で購入した株式は、株価の上下にかかわらず、配当金重視で長く保有し続けたい。これでいいのか?(東京都・男性・70代以上・無職)
※質問の文言は、文意を損なわない程度に修正しています
鈴木 基本的に配当金重視で問題ないと思いますが、配当金をあまり重視しすぎると選定対象に小型株が多くなりがちな点には注意が必要です。配当利回りが3%程度で業績も安定している、比較的大型の銘柄を意識的に選ぶといいでしょう。
――最後に、全体を通したアドバイスをお願いできますでしょうか。
鈴木 個人投資家の最大の武器は「時間」です。時間を味方につけることで、金融危機の時ほど絶好の買いのチャンスになります。そして、配当金などで得られた利益は、再投資に回す。NISAでの運用は、10年かけて30%ほどの儲けを目指すといった運用方針が合っていると思います。
★新NISA制度をもっと詳しく知りたい方へ★
野村證券の特設ページ「2024年から始まる、新NISA制度」もあわせてご覧ください。
「Part.3 個人投資家が選ぶ! 新NISAで買いたい銘柄トップ20」はこちら
「Part.1 制度改正の背景にある“異次元の本気度”」はこちら
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