前回のIRレポート(2024年3月25日掲載)では、久野貴久代表取締役社長へのインタビューを通じて日清オイリオグループの「市場創出力」について事例を交えながら紹介した。今回は、油脂の可能性を引き出し同社の「市場創出力」を支える研究開発とその具体的な展開を追いながら、市場優位性の源泉を探っていく。日清オイリオグループの研究開発が、新たな市場を創出する戦略的な取り組みであることをお伝えしたい。
「Marketing」「Technology」「Globalization」を軸にビジネス展開
日清オイリオグループは2030年の目指す姿を「ビジョン2030」として制定。同社の強みである「Marketing」「Technology」「Globalization」を基軸に「もっとお客さまの近く」でビジネスを展開し、多様な価値を創造し続ける企業グループに飛躍することを打ち出している。
この「ビジョン2030」の実現を支えるカギは「Technology」にあたる研究開発だ。
日清オイリオグループは、マーケティング・販売につながる技術開発や商品開発・生産を深化させることにより油脂をさらに究め、多様なお客さまへ連続的なソリューション提案を創造し、共創によるイノベーション創出およびバリューチェーンの多層化による油脂の提供価値の拡大に取り組んでいる。
そのなかで、同社の研究開発機能は、コアとなる油脂群のさらなる磨き上げと周辺領域の素材の活用により、同社の油脂を使用する最終製品に対して品質改善や環境への配慮、コスト削減・省人化などの生産性向上、持続的な供給への対処などの付加価値を提供し、さまざまなソリューション提案を実現している。
さらに、潜在・顕在ニーズの調査などによる新たな課題・知見の発見が次のソリューション提案につながり、これが新市場の創出力を支えていくといった好循環が形成されている。
技術力と市場創出力を象徴するMCT
MCT関連商品の開発と市場浸透の取り組みは、そうした日清オイリオグループの技術力と市場創出力の象徴ともいえる。
MCT(中鎖脂肪酸油)は、通常の食用油に含まれる長鎖脂肪酸よりも素早く消化されエネルギーになりやすいという特長を有しており、体脂肪燃焼効果、低栄養素改善効果なども期待される。このMCTについて同社は50年以上の研究開発の歴史を有し、同社独自のエステル交換技術を確立し、中鎖脂肪酸の機能を食用油として活かすことに成功している。
2003年には、体に脂肪がつきにくい健康オイルとして、特定保健用食品「ヘルシーリセッタ」(現・「日清MCTリセッタ」)を発売。その後も、体脂肪やウエストサイズを減らす効果のある機能性表示食品として「日清MCTオイルHC」を製品化した。さらには、加工食品メーカーなどのパートナー企業と共創し新たな価値を実装した製品の開発にも取り組んでいる。
連続的なソリューション創出の中核を担う新開発拠点
新たな研究開発の拠点として同社横浜磯子事業場内で2024年から稼働を開始した「インキュベーションスクエア」は、日清オイリオグループとパートナー企業との価値の共創を推進する基盤構築の役割を担っている。
この拠点は、研究室の実験のスケール(ラボスケール)と実際製品化した際の生産設備のスケール(実機スケール)の中間にあたるパイロットスケールの設備を有し、1つの拠点内で製品の設計・試作・評価を少量で効率的に繰り返し行うことが可能で、ソリューションの提案力や製造のフレキシビリティの強化を実現することができる。
また、これらの機能を1拠点に集中させることで、同社の複数の部門とパートナー企業との技術や情報の交流が促進され、新たな価値創造を生み出すことが期待されている。具体的な技術としては、中鎖脂肪酸の酸化を利用した植物性乳フレーバーなどがあるようだ。
日清オイリオグループの研究開発は、同社が「グローバルトップレベルの油脂ソリューション企業」となるための基盤となる機能のひとつである。
これからも同社は、油脂加工に関わる幅広い領域における高付加価値化の取り組みと、パートナー企業との共創により、切れ目のないソリューション提案を実現し、イノベーションの創出と油脂の価値を向上させていく方針だ。
●会社概要(2024年3月31日現在)
概要 | |
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日清オイリオグループ株式会社 The Nisshin OilliO Group, Ltd. |
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食料品 |
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1907年3月 |
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3月 |
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東証プライム |
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代表取締役社長 久野 貴久 |
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163億3,200万円 |
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33,716千株 |
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3,078人(連結) |
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