「ゼリア新薬工業」の名を知らずとも、「ヘパリーゼ」や「コンドロイチン」の名はおなじみだろう。インパクトの強いテレビCMや、ドラッグストアにも並ぶ製品群は知名度抜群といえる。そんな同社だが、実は海外展開に注力しているグローバルな企業であることをご存じだろうか。
消化器系を中心とした「医療用医薬品事業」と、前述の「ヘパリーゼ」や「コンドロイチン」などを取り扱う「コンシューマヘルスケア事業」の2つの事業を展開し、安定した「両輪経営」のもとで着実な成長を積み重ねてきた。さらに近年は、“第3の柱”として「海外事業」に取り組んでいる。歩みを止めないゼリア新薬工業の力の源を解説する。
2021年度 海外事業が大きく躍進
「両輪経営」――ゼリア新薬工業の経営における重要なキーワードである。同社は医療用医薬品事業とコンシューマヘルスケア(以下CHC)事業を「車の両輪」としてバランスのとれた経営を推進してきた。「両輪」への積極的な経営資源投入により成長を遂げ、現在は新たな事業の柱とすべく海外事業を育成している。
国内の医療用医薬品の事業環境は、この数年一層厳しい状況を迎えている。これまで原則として隔年実施であった薬価改定が毎年実施に変更された。さらに、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進など、医療費抑制策が推進されている。CHC事業をめぐっては、市場競争の激化に加え、コロナ禍における外出自粛措置およびインバウンド需要の減少など、厳しい逆風が吹き荒れている。
そんな向かい風にもかかわらず、ゼリア新薬工業の「両輪」は止まることなく、着実に前進しつづけた。さらに「両輪」を後押ししたのは同社が育成を続けている「海外事業」だ。“Reach out to the world”(世界に目を向けて)は企業理念のひとつである。同社の海外売上高比率は年々高まっており、2021年度は41.4%になっている。

戦略的M&Aで新市場を開拓
ゼリア新薬工業は、既存事業とのシナジーが期待できるアライアンスやM&Aで新たな市場を開拓してきた。現在、海外に3つの子会社を擁している。
■ティロッツ・ファーマ(スイス)……2009年 全株式取得
■ZPD(デンマーク)……2010年 Biofac Esbjerg A/S(現・ZPD)全株式取得
■F.T.ファーマ(ベトナム)……2015年
※株式取得関連のリリースにリンク

2021年度、ゼリア新薬工業の連結売上高における海外売上高比率が全体の4割超に伸びた大きな要因は、2020年11月にティロッツ・ファーマが製造販売権を承継したクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤「ディフィクリア」の存在にある。この治療剤は欧州において感染症診療ガイドラインで第一選択薬として推奨されている。また、「アサコール」も高用量製剤1600mg錠が着実に売り上げを伸ばすなど好調に推移しているのに加え、2021年5月には中国にて「アサコール」が発売されており売り上げ増に寄与している。
国内においては、2021年度の売上高はコロナ禍の影響を脱し回復基調となった。続いて国内で活躍する子会社・2社をご紹介する。
■イオナインターナショナル ……2008年 全株式取得
■健創製薬(旧日水製薬医薬品販売)……2020年 全株式取得
※株式取得のリリースにリンク
2008年に全株式を取得したイオナインターナショナルは、スキンケアブランドとして独自の地位を築いている。主要ブランド「IONA」は、基礎化粧品に加え、エイジングケアや敏感肌向け、時短ケアなどのニーズに特化したシリーズを展開している。スキンケア製品のなかにはコンドロイチン研究の知識を応用したシリーズもあり、化粧品メーカーと製薬会社のシナジー効果が発揮されている好例である。
2020年に全株式を取得した健創製薬は、独自のOTC医薬品などの製造販売を行いながら、ゼリア新薬工業の主力製品群である「ヘパリーゼ群」の主原料、肝臓加水分解物を安定供給する役割も担っている。「ヘパリーゼ群」のラインアップ強化と、さらなる成長を実現するには、原料の安定調達ラインの確保、つまり健創製薬は欠かせない存在である。
消化器系をはじめ多彩な製品群を展開
製薬業界においてゼリア新薬工業が長年存在感を示しつづけていられる理由は、個性的で多彩な製品群にある。これこそが同社の強みだ。いくつかご紹介しよう。
【医療用医薬品事業】
主に消化器疾患治療剤・消化器領域の医薬品を展開している。同社が長年中心に据えてきた領域である。

■アサコール……ティロッツ・ファーマが世界60数カ国で展開する潰瘍性大腸炎治療薬。医療用医薬品事業を牽引する存在
■アコファイド……機能性ディスペプシア(原因のはっきりしない胃もたれ症状)治療に用いる
■エントコート(国内販売名:ゼンタコート)……クローン病などの炎症性腸疾患治療に用いる。世界60数カ国で展開
■フェインジェクト……鉄欠乏性貧血治療剤。消化器系・産婦人科系を中心に市場構築中
■ホスリボン配合顆粒……骨の変形や歩行障害などを起こすくる病や骨軟化症をきたす低リン血症の治療剤
さらに、新薬パイプラインとして高カリウム血症治療剤「ZG-801」が控えているほか、アコファイドの効能追加試験(小児機能性ディスペプシア)を実施するなど、国内、海外子会社共に興味深い動きを見せているので目が離せない。
【コンシューマヘルスケア事業】

■ヘパリーゼ群……肝臓や胃腸などに働き、滋養強壮効果を発揮する肝臓水解物と、新陳代謝機能を活発にするビタミンや生薬を配合した医薬品の栄養剤。錠剤とドリンクの2タイプで展開
■コンドロイチン群……軟骨の構成成分コンドロイチン硫酸ナトリウムを主成分とする関節痛治療剤 ※コンドロイチンをもっと知りたい方は⇒コンドロイチンWeb
■ウィズワン群……自然に近いお通じを目指す、食物繊維と生薬によるおなかが痛くなりにくい植物性便秘薬
■西洋ハーブ医薬品
ハーブは古くから欧州諸国で病気の治療に利用されてきた。現代においても、その効き目や安全性は評価されており、欧州ではさまざまな西洋ハーブが医薬品として承認されている
・プレフェミン……2014年発売。チェストベリー乾燥エキスを配合した、OTC医薬品では日本で唯一のPMS(月経前症候群)治療薬。2020年前後から日本でも注目されるようになった「フェムテック」の先駆けのひとつである
・ベルフェミン……2021年12月発売。セイヨウトチノキ種子エキスを配合。軽度の静脈還流障害による、足のむくみやだるさを改善するための経口薬
・コルぺルミン……2022年3月発売。ペパーミントから精製したオイルを配合したIBS(過敏性腸症候群)改善薬。下痢・便秘・混合いずれのタイプにも効果を発揮
ほんの一例を見るだけでも、ゼリア新薬工業の独自性と存在感がわかるだろう。
株主還元への取り組み
ゼリア新薬工業では、株主への利益還元を経営の最重要課題のひとつと位置付け、安定的かつ継続的な配当を基本としている。基本方針は中間・期末の年2回配当。また、同社では株主優待制度として、自社グループ製品を保有株式数に応じて進呈している。一例を紹介する。
Cコース|化粧品・医薬部外品・栄養補助食品「コンドロマックス・アポスティーセット」
(1,000株以上保有)

ゼリア新薬工業の「コンドロイチン群」は、1959年に「コンドロイチン」を発売以降、改良・展開を進め長年多くの人々の膝を支えてきた。「コンドロマックス」は、コンドロイチン硫酸とインド伝承のハーブを配合した栄養補助食品だ。
セットになっているのは、大人ニキビ対策として好評なコンドロイチン含有の「アポスティー洗顔フォーム」および保湿・保水力の高いコンドロイチンにヒアルロン酸と低分子ヒアルロン酸を加え保湿力を高めた「アポスティーモイスチャーローションDX」。コンドロイチンで体の内外ともに快適にケアができるセットである。
Dコース|「イオナ スパ&ミネラル 詰め合わせ」

Eコース|「IONAベーシックスキンケア3点セット」

Fコース|「イオナR スペシャルケア2点セット」

(1,000株以上保有)
この3コースは2008年に子会社化したイオナインターナショナルの製品。Dコースは「スパ&ミネラル詰め合わせ」、Eコースは「ベーシックスキンケア3点セット」、Fコースは「イオナR スペシャルケア2点セット」。なかでもFコースは、ゼリア新薬工業が長年培ってきたコンドロイチン研究の技術が活かされている。このように、株主優待の一例を見るだけでも同社の独自性が感じられ興味深い。
これからも、ゼリア新薬工業は医療用医薬品事業とコンシューマヘルスケア事業の“両輪”を回しながらさらなる海外展開を進めていく 。同社の動きから目が離せない。
●会社概要(2022年3月31日現在)
商号 |
ゼリア新薬工業株式会社 |
業種 |
医薬品 |
設立 |
1955年12月 |
決算月 |
3月 |
市場 |
東証プライム |
代表者 |
代表取締役社長 伊部充弘 |
資本金 |
6,593百万円 |
発行済 |
53,119千株 |
従業員数 |
連結 1,737人 |
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