今後は「さまざまな分野で逆転現象が起きていくのではないか」と語るのは、ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長・櫻井英明氏です。そうした社会の変化を作り出す要因のひとつが、政府の推進する数々の政策です。櫻井氏に、今後の政策動向から見た2023年の注目銘柄を教えていただきました。
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今後数年間のトレンドは“逆転現象”!?
――2023年の日本経済をどう展望しますか?
過去30年間、マネーにしてもモノづくりにしても、日本から逃げ出していくばかりでした。これは、(海外のほうが)賃金が安く済むからとか、(日本は)成長性が低いし円高だからということでしたが、今後数年間のトレンドは、それがみんな逆転していくのではないでしょうか。
代表的な例としては、台湾のTSMCが熊本に工場を作る、あるいはダイキン工業〔6367〕が、中国から国内に工場を戻すことを検討していると発表しました。日本は物流が安定稼働していて滞ることは稀ですし、工場が国内に戻ってくれば再び技術力も高まることでしょう。さらには賃金も、これから上がっていくかもしれませんが、まだ低い水準にある。これまでの発想は180度変えられるのではないかと思います。
加えて、2015年に中国が「中国製造2025」という国家方針を打ち出していたのを覚えていますでしょうか? 彼らは2025年に、航空宇宙、海洋、鉄道、自動車、エネルギー、バイオ、農業などの各分野で、トップになると宣言している。中国がこうした戦いに打って出ているなら、日米をはじめとした自由主義陣営の国々も、当然この分野で対抗することになるわけです。
しかし、中国が世界で通用する半導体をすべてオリジナルで作るのは、まだ難しいといわれます。そういった点が、逆に日本企業の株価の材料になるわけです。例えば半導体の製造装置を誰が作っているのか? 東京エレクトロン〔8035〕です。今後重要性が高まる5ナノ以下の半導体を作るとしたら何が必要か。日本企業がシェアを握る高純度の薬剤を使う。そうやってあげていくと、日本企業も決して負けてはいないし、投資の検討対象になってきます。
2023年に注目するセクターは?
――なるほど、国内回帰のトレンドから、日本のモノづくり企業が息を吹き返し、逃げていったマネーも戻ってくるという展望ですね。期待しましょう。ではそんななかにあって、櫻井さんがこの2023年に注目する銘柄を教えてください。
まずは防衛費の大幅増という政府方針に関連した銘柄です。これは単純に武器弾薬を作る、調達するという話ではありません。防衛省の出している資料によれば、民生用にも使えるようにすることで、突出した規模の予算の承認を得ようという論調です。航空機、宇宙衛星を含めて広い意味での防衛産業は、日本で立ち遅れていた部分なので、それを牽引していく動きが出てくると思われます。その意味で、防衛関連企業では筆頭の三菱重工業〔7011〕の動きは要注目だと思います。
最先端技術では、量子コンピュータと6G通信に注目が集まっています。量子コンピュータといわれても、ほとんどの人が訳がわからないと思いますが、とにかくもの凄い技術革新なわけです。それで世界と戦うと宣言しているのは、NTT(日本電信電話)〔9432〕だけです。彼らは6G通信についても、光通信の技術を使って取り組んでいます。
もうひとつ紹介したい企業が、セック〔3741〕です。ソフトウエア開発に定評ある企業で、「自動運転」の技術開発をすでに終えており、現在はメタバースとロボットに技術開発を集中させています。彼らが開発しているということは、国の予算を使って大手企業の受託開発をしているということを意味します。当然今後の流れもそちらにあるということです。
加えて私が注目しているのが、バイオテクノロジーです。ガンに関する研究を行っているいくつかの企業の社長が、2024年から2025年にかけて、制ガン剤の製造承認申請上申のタイミングを迎えるだろうといっています。ひとつは、キャンバス〔4575〕です。この会社はすい臓ガンの末期患者を延命させる薬――免疫着火剤といいます――の治験が成功を収めていて、上申は2025年ぐらいにはできるだろうとのコメントも出しています。
加えて、白血病や末期の肺がん患者のための薬の治験をアメリカで行っているDelta-Fly Pharma(デルタフライファーマ)〔4598〕、さらにウイルスを使って末期の食道がんに対応する薬を開発中の、オンコリスバイオファーマ〔4588〕などが、やはり2024年から2025年がターゲットとのコメントを出しています。2、3年後が目標ということは、2023年にはきっといいニュースが出てくるはずです。
国の政策資料に投資のヒントが載っている
――多様な分野の銘柄をご紹介いただきましたが、注目すべきテーマを見つけるコツがありましたら教えてください。
一番使えるのが、政府の資料です。内閣府や、首相官邸のHPを見てください。経産省、厚労省、総務省、文科省などからも資料が発表されています。50枚とか100枚とかあったりするのは大変ですから、用紙1枚ぐらいにまとめられた資料で十分です。このなかに、キーワードが入っています。
例えば首相官邸のHPを見ていくと、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」の概要を用紙1枚にまとめた資料が掲出されています。あるいは厚労省や経産省のHPにバイオテクノロジーに関する今後の展望が出ていたり、文科省は教育に関する展望を出しています。そうした資料からキーワードを拾い、関連する企業を探してみてはいかがでしょう。何しろ全部無料で読めて、毎日のように楽しめますから、こよなくいい株式投資術ではないかと思います。国策がどこを向いているか、あるいはお金が流れる方向が見えてくるので、とても役に立つと思います。
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