パート3では、鈴木一之氏が注目する「配当株投資銘柄」をピックアップしてもらいました。
配当利回りに、DOEと総還元性向も加味して8銘柄を厳選。
各銘柄について、一言コメントでポイント解説もしてもらいました。
大学卒業後、大和証券に入社し、長年にわたり株式トレードの職務に従事。2000年、インフォストックスドットコムに入社し、日本株チーフアナリストとして活躍。2007年よりフリーとなり現在に至る。主な著書 は『きっちりコツコツ株で稼ぐ 中期投資のすすめ』『これならできる! 有望株の選び方』(ともに日本経済新聞出版)など。出演番組に「東京マーケットワイド」(TOKYO MXテレビ)などがある。
配当利回りを基軸に、DOEと総還元性向を加味しピックアップ
※すべて小数点第3位以下を切り捨て
今回は、株主還元の中でも「配当」に着目して8銘柄を選んでみました。
選考においては、「配当利回り」(利回り)を基軸にしつつ、「DOE」と「総還元性向」を加味してピックアップしました。
まずは、簡単にDOEと総還元性向について説明します。
なお、利回りについては、パート1で解説していますので、そちらの記事を参照してください。
DOEとは「自己資本配当率」です。
企業が自己資本(株主資本)に対してどれくらいの配当金を支払っているかを示す指標で、「株主資本配当率」と表記されることもあります。
利益に対する年間の支払い配当金の尺度としては「配当性向」が用いられることが一般的ですが、当期純利益を基準として計算するため、年度によって変動幅が大きい側面があります。
そのため、株主に対する還元策としては、より安定している自己資本を基準としたDOEを採用する企業が増加しています。
総還元性向は、企業が株主に対して還元する利益の割合で、配当金の金額に自社株買いを加えた金額と純利益の比率で表します。
計算式は「総還元性向=(配当金の支払総額+自社株買いの総額)÷純利益×100」となります。
総還元性向が高いほど、株主還元に力を入れている企業であることを示します。
以上を踏まえたうえで、それぞれの銘柄について簡単に解説していきます。
※本文中の銘柄名をクリックすると野村證券の「銘柄詳細」ページに移動します
注目8銘柄へのワンポイント解説
ピックアップした8社のうち3社が総合商社ですが、もともと総合商社は「配当」への意識が高い傾向があります。
特に住友商事[8053]は、毎年増えていく自己資本(株主資本)に関してDOE 3.5%を定めています。
三井物産[8031]と三菱商事[8058]も、総還元性向を30%以上に設定しています。
総合商社は景気に左右されますが、頑張っている印象ですね。
有沢製作所[5208]は、プリント基板向け電子材料が主力のメーカーです。
総還元性向が80%と非常に高く、ぜひチェックしておきたい銘柄です。
非鉄大手で川下分野を得意としている三井金属鉱業[5706]は、景気敏感株といえますが、株価が安定していて割高ではないのが好印象です。
独立系半導体商社として国内トップクラスのマクニカホールディングス[3132]は、半導体不足の渦中にありながら、それに振り回されることなく業績は好調です。
DOEも4%と安定しており、株主還元に努力をしているのが感じられます。
事務機国内最大手のリコー[7752]は、総還元性向が50%となっています。
調査時点での株価は低位安定傾向ですが、この企業規模で50%というのは、投資家に積極的にアピールしようという姿勢がうかがえます。
最後にピックアップしたのは、無添加化粧品メーカーのファンケル[4921]です。
配当利回り上では見劣りするかもしれませんが、今後に期待したい銘柄としてご紹介します。
業績面では、ここ数年、インバウンドの恩恵が大きかったのでコロナ禍で大打撃を受けました。復活しようと頑張っていますが、コロナ禍前の水準までは戻っていません。
だからこそDOE5%は強力なアピールになっています。
財務体質がとても良いので注目しています。
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