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信託の力で資金・資産・資本の好循環<br>を促し、お客さまとともに成長していく

社会課題に対峙し、豊かな未来づくりに貢献 信託の力で資金・資産・資本の好循環
を促し、お客さまとともに成長していく

2025年8月7日
8309 三井住友トラストグループ
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2024年に創業100年を迎え、 商号も変更して新たな100年への歩みを開始した三井住友トラストグループは、 中期経営計画 (2023~2025年度) の主要な経営指標を2024年度に1年前倒しで達成した。 そして、 2030年度までにROE10%以上を達成という目標に向けて、 さまざまな施策を配置し前進している。 その根底には、 どのようなビジネスモデルと成長戦略があるのだろうか。

加藤 信( かとう ・ しん )
IR ・ SR部長

主要な経営指標を前倒しで達成

――昨年100周年を迎え10月には商号も変更されました。 新たな100年に向けて、 まずは貴社グループの強みを教えてください。

加藤 2024年4月に当グループは100周年を迎えました。 創業の原点に立ち返って次の100年も果敢に挑戦し、 グループ全体で連携して成長していくというメッセージを込めて、 同年10月に商号を 「三井住友トラストグループ」 に変更しました。

 信託銀行は、 日本が抱える社会課題を解決しながら、 産業の発展や国民の資産形成に寄与していく役割を担っています。 100年の歴史を振り返っても、 例えば戦後の高度経済成長期には、 巨額の資金を必要とする重厚長大産業と資産形成を望む国民を貸付信託という商品でつなぎ、 わが国の経済発展において重要な役割を果たしました。 現在では、 年金信託や遺言信託、 投資信託などをはじめとして、 国民の資産形成や資産管理に欠かせない多様な信託商品を提供しています。

 当グループのビジネスモデルにおける強みは、 多様なビジネス領域と手数料収益にあります。 ビジネス領域は金融市場、 不動産などの資産市場、 資産運用や資産管理などの資本市場などに幅広く分散しています。 こうしたビジネスの収益は手数料としていただくのが基本ですが、 収益額は残高×報酬率で計算されるのが一般的で、 とても安定した収益構造になっています。 当社の手数料収益比率は2024年度で約54%を占めていて、 30%台半ばの水準であるメガバンクグループとは大きな差があります。 現在の緩やかなインフレ局面では資産価格の上昇が期待できますので、 当グループの手数料収益にとっても追い風です。

 

――中期経営計画で目標としている主要な経営指標を1年前倒しで達成されました。

加藤 計画の順調な進行とともに、 策定時点では想定していなかった金利と株価の上昇がありました。 また賃金と物価も上昇しているため、 投資をしなければ資産が目減りすると多くの方が気づき始めていますし、 昨年から新NISAが始まって個人の資金が株式市場に流入してきています。 こうしたマクロ環境の構造的な変化も追い風になっています。

 ただ現中計の中で、 将来成長のための投資や準備などやるべきことがまだ残っています。 これらをしっかりとやり切ったうえで、 2026年5月に新しい3年間の中期経営計画を公表する予定です。 現在、 2030年度までにROE10%を達成する目標を掲げていますが、 新中計の期間でどこまで近づくことができるか、 ROE10%を達成する時期をどこまで早められるかという検討を社内で行っています。

 
 

――ROE10%達成に向けて、 どのような点に注力されていますか。

加藤 当グループのROE向上には、 自社で資産を保有せずに、 投資家の資産の運用を通じて利益を上げる資産運用 ・ 資産管理ビジネスの成長が重要です。 資産運用では、 当グループは三井住友トラスト ・ アセットマネジメントと日興アセットマネジメント (2025年9月1日より商号を 「アモーヴァ ・ アセットマネジメント㈱」 に変更予定) の2社を擁しますが、 グループ運用残高は合計で140兆円を超えており、 アジア最大です。
 もともと、 日興アセットマネジメントは海外に強く、 強力なネットワークも有しているので、 当社は2023~2025年度に連続してアジアのアセットマネジメント会社に出資をするなどの成長投資を行っています。



 

事業ポートフォリオの強化

――資本効率性の向上に向けて事業ポートフォリオの強化も重視されていますが。

加藤 現在、 事業ポートフォリオを見直していますが、 当グループ内に居ることで、 これ以上の成長が難しそうな企業も見えてきます。

 例えば、 三井住友トラスト ・ ローン&ファイナンスは不動産担保ローンを主な事業とし、 利益もしっかり出ている子会社でした。 ただ、 当グループ内ではこれ以上の成長余地が乏しいと判断し、 2024年11月にコンコルディア ・ フィナンシャルグループ (以下、 コンコルディア) との共同事業化に踏み切りました。コンコルディアは、 横浜銀行、 東日本銀行、 神奈川銀行を傘下に有し、 同社の傘下に入ったほうが新たな顧客層を獲得できるなどの成長が展望できるからです。

 85%の株式を譲渡はしましたが、 完全に切り離してしまうのではなく当社も15%の株式は保有しています。 そして2025年4月には社名も ㈱ L&Fアセットファイナンス (以下、 L&F) へと変更しました。
 当社としては、 L&Fが地銀との協業で一層成長し、 同社のアセットが増えていくことを期待するとともに、 そのアセットを活用した信託商品の開発や投資家向け提供なども展望できると考えています。

 

――政策保有株式の削減が進捗していますが、 株主や投資家へのメリットをどうお考えですか。

加藤 現中計では3年間で取得原価1,500億円の削減目標を達成する計画でしたが、  こちらも1年前倒しで達成しました。 2021年に当社が真っ先に 「従来型の政策保有株式をゼロにする」 と宣言し、 現在では多くの金融機関や保険会社に動きが広がっています。 当社がリーダーシップを持って推進してきた活動であり、 今後さらに4年間で2,600億円を削減する新しい計画を本年5月に公表したところです。

 この削減を通じた投資家の皆さまへのメリットですが、 ひとつは売却益で株主還元に回せる資金が増える点です。

 もうひとつは、 株式市場の活性化につながります。 政策保有株式はいわゆる株式の持ち合いです。 株主総会の議決権機能の低下や株主監視機能の低下といった弊害もありますが、 何よりも持ち合ったまま資本が停滞してしまう問題が指摘されています。 持ち合いの解消は株式市場の健全な発展に資することになり、 株主や投資家の皆さまのメリットにつながると考えています。

NTTドコモとのシナジーは未知数

――NTTドコモ (以下、 ドコモ) による住信SBIネット銀行 (以下、 ネット銀行) のTOBにより、 三井住友信託銀行とドコモが共同経営パートナーになりますが、 どのようなシナジーを想定されていますか。

加藤 三井住友信託銀行はおよそ20年前にSBIホールディングス (以下、 SBI) とともに国内初のネット専業銀行を始めました。 当グループの成長戦略において、 ネット銀行の利便性や顧客基盤は引き続き重要です。 今回の件は、 シンプルにネット銀行を経営するパートナーがSBIからドコモに変更したという位置づけです。


 ドコモと三井住友信託銀行は、 ネット銀行の共同経営パートナーとして両社の提携関係も深めていく予定です。 ドコモは会員数が1億人を超え、 ドコモショップという対面チャネルも多数展開していますので、 シナジーの大きさは未知数です。 2025年7月10日にTOBが終了、 成立しました。 SBIからドコモへの資本移動が完了した後は、 さまざまな協業の可能性についてお話しできるようになると思いますので、 ご期待ください。

今後も累進的に配当を強化

――今後の配当方針について教えてください。

加藤 当社は2023年に1株当たり配当金の累進運営について公表しています。 これまでを振り返ると、 2011年度の年間配当42円50銭 (株式分割分を算入) から、 一度も減配することなく、 今年度予想は1株当たり160円と4倍近くに増やしています。 2024年度は記念配当10円を含めると前年比で45円増配でした。 当社株主のほとんどは長期保有の方であり、 株主の皆さまからの信頼や期待に報いるために配当を増やしていくことは当然と考えています。

 

――最後に個人投資家の皆さまへのメッセージをお願いします。

加藤 政府が資産運用立国に向け動き出しましたが、 この思いと当グループのパーパスは一致しています。 100年の信託の歴史も、 日本の富をどうやってまもり、 ふやし、 のこしていくかを考え、 取り組んできた歴史です。

 当社は自ら保有する資産の規模を拡大し、 成長していくビジネスモデルではありません。 3,000兆円を超える家計資産を社会課題の解決につながる投資として循環させ、 国民の皆さまが受け取るリターンを少しでもふやす。 社会や企業の発展と国民の資産形成を進めながら、 当グループもともに成長していくという戦略です。

 三井住友トラストグループは、 日本の将来に悲観せず、 明るく豊かな未来を期待する方にとって、 その思いに合致した成長を目指す企業です。 緩やかなインフレ局面では、 信託グループの強みである手数料収益も増加が期待できます。 PBRが1倍を下回っている今のタイミングで、 ぜひ当社の株主になることをご検討いただけたら幸いです。

●会社概要(2025年3月末日現在)

  概要
商号
三井住友トラストグループ株式会社
Sumitomo Mitsui Trust Group, Inc.
業種
銀行業
設立
2002年2月
決算月
3月
市場
東証プライム、 名証プレミア
代表者
取締役執行役社長(CEO)  高倉 透
資本金
2,616億8百万円
発行済株式数
721,355千株
従業員数
23,125人 (連結)


 

三井住友トラストグループ