日本最大の信託銀行を中核とした金融グループの持株会社である、 三井住友トラスト・ホールディングス。 規模で勝るメガバンクに比べると知名度はそれほど高くないが、 ESGや超高齢社会などの社会課題の解決を通じて着実な成長を続けており、 今後の成長という観点でも大きなポテンシャルが期待できる。 今回、 加藤 信 IR部長に同社の強みと成長戦略を聞いた。
IR部長
身近なところで社会を支える信託銀行を中核とする金融グループ
―― 三井住友トラスト ・ ホールディングスとはどのような企業でしょうか。
加藤 馴染みのない方もいらっしゃるかもしれませんが、 当社は三井住友信託銀行を中核とした金融グループの持株会社です。 傘下には、 ほかに三井住友トラスト ・ アセットマネジメント、 日興アセットマネジメントなどの資産運用会社、 ダイナースブランドを展開する三井住友トラストクラブ、 三井住友トラスト不動産や住信SBIネット銀行など業界トップクラスの企業を擁しています。 資産運用 ・ 資産管理ビジネスや不動産ビジネスといった信託関連ビジネスを展開し、 企業年金や不動産仲介、 証券代行など、 実は皆さまの身近なところで暮らしと社会を支えています。
―― それぞれの分野でのステータスを教えてください。
加藤 資産運用 ・ 資産管理の預かり資産は合計で400兆円弱に達しています。 これは日本No.1 であり、 おそらくアジアでもNo.1 だと認識しています。 また、 株主総会の運営や株主名簿管理などを行う証券代行業務では、 全上場企業に対するシェアが42%と、 国内1位の地位にあります。 さらに、 不動産の仲介や証券化、 建築コンサルティングなどの業務を行う不動産ビジネスにおいても国内トップクラスの地位を占めています。
これらトップクラスの地位を占める事業領域の多くが信託ビジネスに該当し、 お客さまから手数料をいただくビジネスです。 その結果、 財務面の特徴としては、 総収益に対する手数料比率が商業銀行では30~40%程度であるのに対して、 当社は55%と安定した収益構造になっています。
低金利環境においては、 融資などによる金利収益が伸び悩むなか、 金利環境に左右されにくい手数料収益が当社の着実な収益成長を支えてきました。 これで金利が今後上昇すれば、 金利収益もプラスに働いてきます。 当社の強みであり、 過去から安定的に増やしてきている手数料収益のさらなる拡大と相まって、 より持続的な成長が期待できる状況になります。
社会課題の解決を通じて成長を実現
―― 成長戦略について教えてください。
加藤 ひとことで言えば、 社会課題の解決を通じて成長することです。 今年2022年は、 1922年に信託法 ・ 信託業法が公布されてからちょうど100年という節目の年にあたります。 その2年後の1924年に、 同法に基づく初の信託会社 「三井信託株式会社」 が設立されました。 現在の三井住友トラスト ・ グループの前身のひとつであり、 約100年の歴史を有するグループへと発展していくことになります。
信託は、 個人や企業から資産を受託し、 管理する仕組みですが、 さまざまな社会課題の解決に柔軟に対応しお役に立つということを積み重ねてきた結果、 社会、 お客さまにとって不可欠な存在となり、 当社自身も時代とともに成長してきました。
例えば、 戦後の高度経済成長期には、 重厚長大産業をはじめとする企業の巨額の長期資金需要に対し、 銀行からの融資だけではそれを充足できないという課題がありました。 そこで当社は、 国民が保有する預貯金を直接企業に 「つなぐ」 ために 「貸付信託」 を開発し、 各家庭のタンスに眠っている預金を直接企業に融資する仕組みを構築しました。 この貸付信託は、 企業の資金調達という課題を解決すると同時に、 個人の資産形成にも貢献することができました。
その後も、 「年金信託」 を通じて企業とその従業員の福利厚生の充実に貢献したり、 「流動化信託」 を通じて多様な資金調達手段を提供することで市場経済の発展に貢献するなど、 時代の変化に応じて信託の機能を柔軟に発揮してさまざまな社会課題を解決し、 自らも成長してきました。 現在も超高齢社会やESGなどの社会課題が山積みの状態ですが、 これまでと同様に、 当グループは信託の力を活かしたさまざまなソリューションを提供することでこれらの課題を解決し、 さらなる成長を実現していけると考えています。
―― 法人のお客さまへの特徴的なソリューションについて具体的に教えていただけますか。
加藤 企業を取り巻く環境は大きく変化し、 法人のお客さまが直面する経営課題も多様化 ・ 複雑化しています。 その変化に応じて、 当社もESG関連のソリューションに力を入れており、 企業からの相談の増加に伴って業容を拡大させています。
ファイナンス分野では、 ESGを推進する企業に融資する 「ポジティブ ・ インパクト ・ ファイナンス」、 温室効果ガスの排出量削減に長期的に取り組む企業を支援する 「トランジション ・ ローン」、 太陽光発電や風力発電などのプロジェクトに融資する 「再生可能エネルギーファイナンス」 など、 お客さまのカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを支援しています。
また、 2021年4月には先端テクノロジーにおける工学 ・ 理学博士号を持つ研究者などで構成される Technology-Based Finance Teamを結成しました。 この取り組みは、 ファイナンスにとどまらない技術的見地からの企業サポートという点で金融機関としては画期的なもので、 気候変動などの課題に対し、 専門知識を活かして新たな事業モデルを提案 ・ 創出する取り組みを進めています。
超高齢社会での資産運用および資産管理・承継への貢献を通じて成長
―─ 超高齢社会への対応についてはいかがでしょうか。
加藤 人生100年時代になると、 60代や70代でも資産形成を考える必要があります。 また、 現役世代のうちから準備する必要性も高まっています。 資産の組み換えを含む資産形成や資産保全などにおいて、 不動産業やアセットマネジメントを擁する当グループが果たす役割はかつてと比べてもたいへん大きくなり、 お客さまとのタッチポイントの増加に伴って当社の成長機会も増えています。
将来への資産形成に加えて、 超高齢社会では、 「シニア層から次世代への円滑な資産承継」 が非常に大きなテーマとなっています。 当社は、 財務コンサルタントという専門知識と豊富な経験を持つ社員を各支店に配置し、 お客さま一人ひとりに寄り添ったきめ細かなコンサルティングを行っています。
また、 遺言信託に加え、 長寿化に伴う資産管理ニーズの増大に対応した新たな信託商品の開発も積極的に行っており、 お客さまのライフステージに合わせたサービスラインアップの強化 ・ 拡充に取り組んでいます。
深く、 長く、 お客さまに寄り添う
――信託銀行ならではの強みを教えてください。
加藤 お客さまとの長期にわたるお取引のなかで、 専門性や付加価値の高い、 ひと味違うソリューションをご提供できることが当社の強みです。 個人のお客さまのニーズはライフステージごとに変化しますが、 特に資産管理 ・ 承継でのソリューションのご提供には自信があります。 法人のお客さまのニーズもファイナンス以外のESG関連など、 非財務領域でのニーズが増えていますが、 証券代行や年金といった当社が得意とするビジネスとの連関が強く、 特徴ある商品 ・ サービス提供ができることが強みです。
また、 信託銀行は商業銀行と比較しても、 はるかに多くのタッチポイントをお客さまとの間に築いています。 一例をあげますと、 当グループの信託銀行の法人営業担当者は、 ひとつのお客さま企業の人事部、 総務部、 財務部などと深いお付き合いをします。 人事部で年金運用の話題が出たり、 総務部で株主総会のお問い合わせを受けたり、 財務部でファイナンスのご相談を受けたりなど、 ある意味ではお客さま企業のことを誰よりもよく知っており、 潜在ニーズまで踏まえた最善の提案ができるのです。
2022年度目標は純利益1,900億円、 配当性向40%
―― 2022年度は中期経営計画の最終年度ですが、 進捗はいかがですか。
加藤 現在の中期経営計画では、 2022年度の連結純利益1,900億円、 配当性向40%程度を目標に掲げていますが、 第1四半期の実績など足元は順調に推移しています。 また、 現在策定中の次期中期経営計画においても、 さらなる利益成長とその成長に沿った株主還元の強化を進めていきますので、 ご期待ください。
「受託者精神」で新たな可能性に挑む
―― 最後に、 読者の皆さまへのメッセージをお願いします。
加藤 当社が大切にしている言葉に 「受託者精神」 があります。 私たちはお客さまから大切な財産はもちろん、 さまざまな想いまでも託されています。 資産を信託されるということは、 資産が当社名義になるということであり、 私たちがお客さまと一体となる 「真の」 お客さま主義を実施することにほかなりません。
三井住友トラスト・ホールディングスは、 受託者精神を持ってすべてのお客さまに最善を尽くし、 社会やお客さまの課題の解決を通じて、 自らも成長を続けていきます。 ぜひ当社への投資をご検討いただき、 投資家の皆さまにも配当という成長の果実を受け取っていただきたいと考えています。
●会社概要(2022年3月31日現在)
商号 |
三井住友トラスト ・ ホールディングス株式会社 |
業種 |
銀行業 |
設立 |
2002年2月1日 |
決算月 |
3月 |
市場 |
東証プライム、 名証プレミア |
代表者 |
取締役執行役社長 高倉 透 |
資本金 |
2,616億8百万円 |
発行済 |
375,291千株 |
従業員数 |
22,024人 |
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