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【特別対談】複眼経済塾 渡部清二塾長×エミン・ユルマズ塾頭 〈後編〉

2021/04/16(金)

MIR@I会員限定コンテンツ

四季報の達人 ・ 渡部清二氏 (複眼経済塾 代表取締役 ・ 塾長) とトルコ出身の天才エコノミスト、 エミン ・ ユルマズ氏( 複眼経済塾 取締役 ・ 塾頭) が、 賢い資産運用法と日経平均の先行きを解説してきた本シリーズ。
最終回となる今回は、 銘柄選択の着眼点や相場の分析 ・ 予測法について語り合った対談 (後半) の模様をお届けします。

【 後編 】 「 時代の変化 」 から相場の先行きを読む !

経営者の 「精神性」 に着目する

渡部清二塾長(以下、 渡部) 企業分析の話をしますと、 エミンと私は、 企業や経営者の精神性を重視するという点で一致していますね。 何のために会社を立ち上げたのか、 経営を通じて何をやりたいのか、 それが明確になっている企業は、 結果として好業績を残しているような気がします。 投資においても同様です。 金融メディアは金銭的リターンの獲得を投資の唯一の目的として喧伝しますが、 私は企業活動を通じて自己実現を図ることが本来の経営のあり方であり、 それを応援するのが投資行為だと信じています。  

エミン ・ ユルマズ塾頭(以下、 エミン) 渡部さんがおっしゃる通り、 株式投資にあたっては、 経営者や社員がどのような気持ちで働いているのかをしっかり把握しておくことが大切ですね。 社員が10人の会社と1000人の会社では、 ガバナンスの形態も経営リスクの種類も異なりますが、 極論すれば、 組織をつくること自体はそれほど難しいことではありません。 創業の精神が失われない限り、 組織や体制は後からついてくるもの。 企業の支柱である経営理念や創業精神がしっかり確立され、 継承されているか。 それを見極めることが肝要です。

バイデン政権が 「脱炭素」 を牽引

渡部 もうひとつ私たち投資家にとって大事なことは、 企業の変化を鋭敏に感知し、 その背後にある社会の動きを正しく理解することでしょう。 エミンは日経平均30万円を提唱しているけれども、 明日いきなり30万円時代が到来するわけではない。 日々の小さな変化が積み重なって大きなトレンドが形成されるわけですから、 日本の代表的企業の動向や産業社会の趨勢を注視し、 市場の大規模な構造変化を予見することが何より重要になってきます。

エミン 個人投資家の皆さんには、 政治にも関心を持っていただきたいですね。 国際政治が世界の経済や株式市場に与える影響は小さくないですから…。 たとえば、 米国では国際派のバイデン氏が大統領に就任して以降、 日本など同盟国に対する協調姿勢が一段と鮮明になってきました。 これは、 米中を両軸とする「新冷戦」が今後さらに拡大していくことを示唆しています。 またバイデン氏は、 地球温暖化対策に積極的に取り組んでいくことを表明しています。 これからの30年、 電気自動車やクリーンエネルギーなどの脱炭素化の動きが一層加速し、 世界の産業社会を動かすエンジンになるでしょう。 
 

デジタルネイティブ世代が社会変革の担い手に

渡部 アメリカや日本では企業経営の在り方自体も大きな転換期を迎えています。 米国では2019年に、 大手企業のCEOらが所属する経済団体が、 従来の株主至上主義を見直し、 顧客、 従業員、 サプライヤー、 地域社会などすべてのステークホルダーを尊重するという新たな方針を打ち出しました。 この方向転換の背景には、 企業の社会的使命を重視するミレニアル世代の台頭があると指摘されています。 

日本でも、 2000年代に成人を迎えたミレニアル世代や、 1990年代の後半から2010年までに生まれたジェネレーションZが社会の第一線に立つようになった。 ジェネレーションZはネットやスマホのある暮らしを当然のこととして育った「デジタルネイティブ」世代です。 物事の本質を見抜く能力に長けていて、 企業の利益至上主義にも批判的ですから、 彼らが今後の社会変革をリードする存在になるかもしれませんね。 

エミン キャッシュレス化の進展も要注目のトレンドです。 PASMOやPayPayなどが決済手段の主役になりつつあるように、 今では支払において現金を使用しないことがあたりまえの時代になりました。 ただ、 キャッシュレス決済は消費者一人ひとりの購買履歴が情報として外部に蓄積されることですから、 個人のプライバシー保護の観点からも厳格なデータ管理が求められます。 個人情報を適切に管理し、 保護するための法整備も必要です。 

渡部 私はキャッシュレスの時代になっても、 普通の通貨(現金)は残ると思いますね。 決済情報がオープンになる表側の世界と、 情報がオープンにならない裏側の世界、 その両方で経済は成り立っていると考えていますから。 取引の内容がすべて可視化されたら、 経済は活性化しないし、 GDPも増加しないでしょう。 
では最後に、 私たち二人のこれからの抱負を述べて、 対談の締めくくりとしましょうか。 私は日本にある市町村をすべて回りたいという夢を持っています。 日本の市町村数は2020年12月末現在で1,741あります。 『会社四季報』の銘柄はすべてチェック済みなので、 今度は、 全国の町を巡って、 その歴史や特産物、 雰囲気を味わってみたいですね。 ただ、 すべての市町村を訪れるには、 1日5市町村ぐらいずつこなさなくてはなりませんが(笑)。 

エミン
 私は今後10年以内を目処に、 まずは日本人に日本株の良さを知ってもらい、 続いて外国人にもその魅力を伝えていきたいと考えています。 宝物(日本株と日本企業)を自分だけのものにしたいという気持ちもありますが(笑)、 それでは人類に対する責任を果たせません。 トルコと日本の両国に軸足を置くエコノミストとして、 世界に日本経済と日本企業の可能性を発信していくことが、 私の使命だと考えています。

〈 完 〉

複眼対談 前編  
【 前編 】  エミン氏の参画が複眼経済塾の躍進を決定づけた 

渡部清二塾長インタビュー 「 会社四季報で有望銘柄を探す 」  

【 第1回 】  四季報はいかにすぐれた投資ツールであるか 
【 
第2回 】  四季報はこう読む  ~次のテンバガー (10倍株) を見つける方法 ・ 前篇 ~ 

【 第3回 】  四季報はこう読む  ~次のテンバガー (10倍株) を見つける方法 ・ 後篇 ~ 

【 第4回 】  加速する日本企業のコスト構造改革 

エミン・ユルマズ塾頭インタビュー 「 日経平均が30万円になるこれだけの理由 」 
【 第1回 】  エミンさんってどんな人? 日経平均30万円って本当!?  
【 第2回 】  「新冷戦」の進展が日経平均30万円のトリガーになる ! 
【 第3回 】  時代は変わった! ── 「日経平均30万円」への懐疑の声に答える 
【 第4回 】  日本に世界の投資マネーが還ってくる 

 

 

 

 
 
渡部 清二  Seiji Watanabe

野村證券に23年間在籍。 中堅企業、 個人投資家向けの資産コンサルティング、 世界の運用会社向けの日本株セールスに携わる。 2014年4月、 「四季リサーチ」設立。 2016年1月、 「複眼経済観測所」を設立、 2018年4月、 「複眼経済塾」に社名変更、 代表取締役 ・ 塾長。 90冊以上の 『会社四季報』 を読破した知見を基に、 世界で初めて、 四季報を活用した企業分析をビジネス化している。


エミン ・ ユルマズ  Emin Yurumazu

トルコ ・ イスタンブール出身。 1996年、 国際生物学オリンピックで優勝。2004年、 東京大学工学部卒業。 2006年、 同大学院で生命科学修士を取得。 同年、 野村證券入社。 企業情報部、 機関投資家営業部、 外国株式営業部などに携わり、 2014年、 野村證券退社。 翌年に四季リサーチ入社、 2016年に複眼経済塾の取締役 ・ 塾頭に就任。 天才エコノミストとして、 さまざまなメディアで活躍中。