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【特別対談】複眼経済塾 渡部清二塾長×エミン・ユルマズ塾頭

2021/04/23(金)

MIR@I会員限定コンテンツ

四季報の達人 ・ 渡部清二氏 (複眼経済塾 代表取締役 ・ 塾長) とトルコ出身の天才エコノミスト、 エミン ・ ユルマズ氏( 複眼経済塾 取締役 ・ 塾頭) が、 賢い資産運用法と日経平均の先行きを解説してきた本シリーズ。
その締めくくりとして、 ふたりの出会いや銘柄の選び方などについて語り合った対談を、 前後編の2回にわたってお届けします。


【 前編 】 エミン氏の参画が複眼経済塾の躍進を決定づけた

グローバリズムの基本は己(自国)を知ること

渡部清二塾長(以下、 渡部) 野村證券の機関投資家営業部に所属していた頃、 そこに転勤でエミンが転入してきたのが最初の出会いでしたね。 現在より少し痩せていて、 いかにも切れ者といった印象でした。 バイリンガル、 トリリンガルがあたりまえの機関投資家営業部の中で、 唯一私だけ日本語で押し通していたのですが、 見た目が完全に外国人のエミンが入ってきて、 どうやって話そうかと思っていたら、 向こうから普通に、 「あ、 どうも」 って日本語で話しかけてきた。 飲み会の翌日はお金を出した上司に挨拶に行くものだとか、 白いソックスは履いてはいけないとか(笑)、 日本流のビジネスマナーから教えたことを覚えています。

私が 『会社四季報』(以下、 四季報) をしっかり読めと言ったら、 本当に読破して、 ウエストホールディングスという会社を見つけてきた。 太陽光パネルを設置する工事会社で、 その後の1年で株価が25倍くらいになった。 物事を捉える視点が非常に独創的で、 とにかく面白い男というイメージでしたね。 

エミン ・ ユルマズ塾頭(以下、 エミン) 私は投資銀行部門から異動してきたのですが、 まったく別の会社に来たという感じでした。 機関投資家営業部は日本最大のトレーディングフロアだから、 とにかく躍動感に満ちている。 人々が証券会社という言葉から思い浮かべるイメージに一番近い部署だったかもしれません。

渡部さんはすごく優しい上司で、 たまに厳しい時もありましたが、 それは部下のためを思ってやっていること。 人事評価で、 一番よく叱る部下に最高点を付けるみたいなところがありましたね。 また、 「日本のことを心から愛している人」という印象を持ちました。 グローバルの基本は己を知ることです。 日本を誇りに感じている渡部さんだからこそ、 私の祖国であるトルコの慣習やイスラム文化も尊重してくれるはず。 それが渡部さんを深く信頼するきっかけになりました。 

日本はワークエシックが優れている

渡部 エミンから、 「日本に生まれたのはうらやましい、 素晴らしいことですよ」 と言われたことが、 今も記憶に残っています。 街並みがきれい、 公衆トイレもきれい、 夜ひとりで歩いても安全、 それはあたりまえのことではないのだと。 なるほど、 私たちの先祖、 先輩たちがより良い社会をめざして行ってきたことが、 今の日本の 「あたりまえ」 につながっている。 エミンの言葉で、 投資の原点、 投資の本質に改めて気づくことができました。

私たちは社会のため、 子孫のために投資活動を行うのであって、 メディアが喧伝するように、 何億円稼いだとか利己の成功事例を声高にアピールするためではありません。 エミンと私は投資に対する考え方が非常に似ていて、 それが公益を重視する複眼経済塾の風土になっている。 私ひとりでは今日の複眼経済塾はつくれなかった。  

エミン 日本はこれまで、 さまざまな分野で最高の製品やサービスを創造してきましたが、 その背後には優れたワークエシック(職業倫理)があると感じています。 人と人との信頼関係を大切にしつつ、 時には自分を犠牲にしてでも組織全体の利益を考えて動く。 そうした日本独自の文化が会社の一体感を醸成し、 良質な製品を生み出す基盤になっているのではないでしょうか。 

 

給料は6分の1でも、 「やります」 と即答

渡部 ここで、 複眼経済塾の創成期をふり返りましょうか。 私が野村證券を辞めて、 複眼経済塾の前身である四季報リサーチ株式会社を立ち上げたのが2014年4月です。 それからしばらくしてエミンが野村證券を辞めたので、 ウチに来ないかと。 給料は野村證券時代の3分の1、 当時エミンが内定していた外資系企業の6分の1しか払えないけれど… と言ったら、 その場で 「やります」 と答えてくれた。

エミンは、 国際生物学オリンピックで世界チャンピオンになったり、 ポーカーの全国大会で日本一になるなど、 経歴が非常に面白い。 それに加えてタレント性もあるので、 マスメディアに積極的に出るようになり、 複眼経済塾の広告塔のような役割も果たしてくれました。 エミンの参画で複眼経済塾の活動の幅が拡がり、 発展の道筋が描かれたように思います。  

エミン 渡部さんの生き方に共感していたので、 一緒に仕事をするのは自然な流れでしたね。 それに四季報リサーチでは数多くの学びの機会を提供していただいた。 私はすでに日本通を自認していましたが、 日本でエコノミストを続けていくためには、 もっと日本のことを深く知ることが必要だと考えていました。

そんな折、 渡部さんが日本の産業の起点とか伝統企業の創業の地を巡るツアーを企画してくれた。 最初が日立製作所の創業の地の茨城県日立市で、 次に行ったのが渋沢栄一ゆかりの地(埼玉県深谷市)と、 群馬県の富岡製糸場。 その後も、 全国40カ所ほど連れていってもらいましたね。 渡部さんは神社検定2級をお持ちで、 ツアーでは必ず神社も予定表に組み込まれていました。 日本医薬の総鎮守である大阪 ・ 道修町の少彦名神社が印象に残っています。


渡部
 神社巡りの際、 私がエミンに言ったのは、 神社は教えを強制するような、 いわゆる宗教の施設ではないということです。 生きていることに感謝するとか、 自然を崇拝するといった信仰、 それが日本の神社の在り方だということですね。 当時、 企画したツアーが、 エミンが日本の社会や文化をより深く知るために役立ったとしたら、 先輩として、 またビジネスパートナーとしてこれ以上うれしいことはない。

では次回は、 複眼経済塾をふたりでどのように発展させていったか、 そしてエミンがどのような経緯で日経平均30万円という考え方にたどり着いたかなどについて語り合いましょう。 

〈 後編は近日公開 〉


渡部清二塾長インタビュー 「 会社四季報で有望銘柄を探す 」  
【 第1回 】  四季報はいかにすぐれた投資ツールであるか 
【 
第2回 】  四季報はこう読む  ~次のテンバガー (10倍株) を見つける方法 ・ 前篇 ~ 

【 第3回 】  四季報はこう読む  ~次のテンバガー (10倍株) を見つける方法 ・ 後篇 ~ 

【 第4回 】  加速する日本企業のコスト構造改革 

エミン・ユルマズ塾頭インタビュー 「 日経平均が30万円になるこれだけの理由 」 
【 第1回 】  エミンさんってどんな人? 日経平均30万円って本当!?  
【 第2回 】  「新冷戦」の進展が日経平均30万円のトリガーになる ! 
【 第3回 】  時代は変わった! ── 「日経平均30万円」への懐疑の声に答える 
【 第4回 】  日本に世界の投資マネーが還ってくる 

 

 

 

 
 
渡部 清二  Seiji Watanabe

野村證券に23年間在籍。 中堅企業、 個人投資家向けの資産コンサルティング、 世界の運用会社向けの日本株セールスに携わる。 2014年4月、 「四季リサーチ」設立。 2016年1月、 「複眼経済観測所」を設立、 2018年4月、 「複眼経済塾」に社名変更、 代表取締役 ・ 塾長。 90冊以上の 『会社四季報』 を読破した知見を基に、 世界で初めて、 四季報を活用した企業分析をビジネス化している。


エミン ・ ユルマズ  Emin Yurumazu

トルコ ・ イスタンブール出身。 1996年、 国際生物学オリンピックで優勝。2004年、 東京大学工学部卒業。 2006年、 同大学院で生命科学修士を取得。 同年、 野村證券入社。 企業情報部、 機関投資家営業部、 外国株式営業部などに携わり、 2014年、 野村證券退社。 翌年に四季リサーチ入社、 2016年に複眼経済塾の取締役 ・ 塾頭に就任。 天才エコノミストとして、 さまざまなメディアで活躍中。