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創業115年の老舗に新たな息吹を

パートナー企業、社員との“協創”で 創業115年の老舗に新たな息吹を

2022年5月27日
7525 リックス
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2019年4月、40歳の若さでリックスの社長に就任した安井卓氏──。技術と経営の双方に精通した逸材として業界内外の評価は高い。有明海の干潟で遊んだ子供時代から、中期経営計画GP2023のもとでポートフォリオの変革に取り組む現在まで、半生の軌跡をたどりながらその素顔に迫ってみた。

安井 卓

安井 卓
Takashi Yasui
代表取締役社長

Profile やすい・たかし
1978年、佐賀県生まれ。福岡大学工学部卒、九州大学大学院修了。古河電気工業勤務の後、2006年リックスに入社。2013年、事業開発本部事業企画部長。2014年に取締役に就任。事業開発本部副本部長、企画本部長、海外子会社管理部長、 瑞顧斯貿易(上海)有限公司董事長、営業本部副本部長を経て、2019年4月、代表取締役社長に就任。


 

31歳差の「世代交代」で、歴史ある企業のリーダーに

 リックスにおいて1947年生まれの松浦賢治前社長から1978年生まれの安井社長にバトンが渡されたのは2019年4月のこと。ふたりの年齢差は31歳だ。世代交代と呼ぶにふさわしい新社長の誕生であった。

 リックスは1907年の創業から現在まで黒字経営を継続している優良企業だ。この抜擢人事は、松浦前社長と先々代社長の安井龍之助氏が安井社長のなかに経営者としての高い資質と優れた人間性を見出していたことの証左でもあった。

 安井社長は、安井龍之助氏の女婿である。

 

基本はチームワークと社員相互の信頼関係

 安井社長は佐賀県杵島郡白石町に3人兄妹の長男として生を受けた。白石町は佐賀県の中南部、有明海に面したのどかな町だ。干潟を遊び場として育った活動的な安井社長は学生時代、一貫してスポーツに打ち込んでいる。
 
 小学校では剣道、中学校では軟式野球、高校では硬式野球部に所属した。佐賀商業や佐賀北など甲子園で優勝経験のある強豪が引っ張る佐賀県の高校野球界──。進学した白石高校は県大会ベスト8レベルだったが、その経験は社会人になってから役に立ったと述懐する。

「当時は、練習中に水を飲むなとか、上下関係は絶対だとか、いわゆる“スポ根”がまかり通っていた時代です。理不尽なこともたくさんありましたが、練習や試合を一緒にがんばるなかで仲間との友情を育むことができました。野球を通じて人間関係やコミュニケーション術を学んだことが、社会人になってからも役立ちました。世の中がどんなに変わっても、仕事の基本はチームワークと社員相互の信頼関係ですから」
 

幼少期の安井社長

「君はどう考えても理数系だよ」──恩師の助言で工学部に

 高校卒業後は福岡大学工学部(化学工学科)に進学した。もともと英語が得意で、文系学部に進もうと考えていた安井社長だが、高校1年の担任教師に「君はどう考えても理数系だよ」と言われ、方向転換したという。安井社長のその後の人生を考えると、担任の助言は実に正鵠(せいこく)を射たものだったといえるだろう。学部で温室効果ガスの特性や影響を学んだ後、九州大学の大学院(物質理工学専攻)に進み、赤潮の原因となるリン酸イオンの定量分析に携わった。

 2003年に大学院を修了すると、就職氷河期の只中であったものの、教授推薦で古河電気工業に就職。長い歴史と光ファイバーなどの先端テクノロジー開発に積極的な革新性、その2つを併せ持った会社であることが志望の理由だ。そして古河電気工業時代には、大学時代にバイト先で出会った現在の夫人と結婚し、新生活をスタートさせている。

「家内が安井龍之助社長(当時)の娘だったことから、リックスで働かないかという打診を受けたわけです。最初は技術者である自分が商社でやっていけるのか懸念もありましたが、リックスが工場や技術開発拠点を擁する<メーカー商社>だと知って不安は払拭されました。また、福岡市に本拠を置いているので郷里の佐賀にも帰りやすいということで、最終的にリックスへの入社を決断しました」
 

リックス入社当時の安井社長(後列 左)。前列中央が、岳父でもある先々代社長の安井龍之助氏

会社の中枢部門で辣腕を振るう

 リックス入社8年後の2014年には取締役(事業開発本部副本部長兼事業企画部長)に就任。その後は企画本部長、海外子会社管理部長、上海子会社代表、営業本部副本部長など会社の中枢部門を統括・管掌し、辣腕(らつわん)を振るってきた。企画から海外、営業とバラエティに富んでいるのは、将来の経営トップとして幅広い経験を積んでもらいたいという安井家の期待があったからだろう。

 そして2019年4月、安井社長はリックスの代表取締役社長に就任した。いつかはグループの舵取りをすることになるだろうと漠然と考えていたが、就任を打診された時、安井社長は40歳。少し早すぎるのではないかと感じたという。しかし、「自分はひとりではない、世界中に仲間がいて一緒に会社を創り上げていけばいいのだ」と思い定めて、申し出を受諾した。

 

産業社会に新たな価値を提案する

 社長就任から3年余り、安井社長は同社の創業来のDNAである「公正さを重視する経営姿勢」を継承しつつ、新たな領域を開拓することに腐心してきた。

「リックスは今、中期経営計画GP2023(Rix Growth Plan)を推進しています。本中計のビジョンは、販売・技術・製造・サービスの高度な融合とパートナーとの“協創”により、世界の産業界の課題解決のためのソリューションを提供すること。1社単独でできることは限られている。当社グループがさらなる成長を実現するうえで、パートナーとの“協創”は不可欠の要素だと考えています」

 “協創”は製品サプライヤーとの協業だけを意味するものではない。株主・投資家との連携、地域社会との共生、そして社員間の緊密なコミュニケーションも価値共創のひとつのあり方である。世界のリックス社員とともに歩むことを信条とする安井社長にとって、“協創”とは社会価値を生み出し、持続可能な企業グループを形成していくうえで、欠くことのできない絶対条件なのだ。


*協創:リックスの独自表記。社内はもちろん、顧客、仕⼊先、⼤学、ベンチャー、国の機関などと“協”力してソリューションを“創”り上げること



 

「着眼大局着手小局」を胸に変革に挑む

 安井社長が常に意識しているという言葉は「着眼大局着手小局」だ。これは岳父である安井龍之助氏が大切にしていた銘文でもある。物事にあたる際は全体像を俯瞰で捉え、実行する際はPDCAサイクルを素早く回し、集中して取り組む。安井社長はこの言葉をそう理解している。

 稼ぐ力の源泉であるオリジナル品の開発促進や海外売上高比率の向上など、リックスグループが取り組むべき課題は多い。

 リックスグループの若きリーダー、安井社長の挑戦はまだ始まったばかりだ。
 

野球好きの息子との試合観戦やキャッチボールが休日の楽しみ


※リックスのIRレポート
「卓越した技術基盤を持つ『メーカー商社』-生産現場の諸課題に最適なソリューションを提供」