ものづくりの伝統に支えられ、 今も匠の精神が息づく飛騨高山 ──。
この地に本拠を置くのが、 「特殊研削盤」 で国内トップシェア※を誇る和井田製作所だ。 同社の森下博社長は 「ニッチ市場で高シェアを獲得することで高い収益性を維持してきた」 と語る。 現在は、 2024年5月に公表した 「中長期ビジョン」 のもと、 グローバル ・ ニッチトップ戦略を展開中。 その目標は、 2030年3月期に売上高105億円 (2024年3月期比39.3%増)、 営業利益16億円 (同65.1%増)と意欲的なものになっている。 森下社長に話を聞いた。
※和井田製作所による推計。 以下、 市場シェア関連記述は同様

森下 博(もりした ・ ひろし)

高付加価値製品で競争優位性を確立
―― 「特殊研削盤」 という工作機械の製造 ・ 販売を手がけられています。 まずは、 研削盤とはどのようなものかをお教えください。
森下 工作機械とは、 機械や部品を作り出す 「マザーマシン (母なる機械)」 と呼ばれ、 世界のものづくりを支える重要な製品です。 当社はそのなかでも、 特殊な素材を砥石で研磨する 「研削」 によって超精密加工する、 特殊研削盤の製造 ・ 販売をしています。
当社の特殊研削盤は、 超硬合金やセラミック、 人工ダイヤモンドなどの 「硬くてもろい素材」 を1,000分の1ミリメートル単位の高精度で仕上げることが可能です。 これは、 限られたメーカーしか製造していません。
スマホなどの電子機器の製造に用いられる精密金型部品や、 航空機や自動車のエンジンなどの金属加工のための超硬刃物 (切削工具) の製造などに当社の特殊研削盤が使われています。

デジタルプロファイル研削盤 SPG-XV
―― その特殊研削盤で国内トップのシェアを獲得しているとのことですが、 どのあたりに競争優位性があるのでしょうか?
森下 製品の開発 ・ 製造から販売、 アフターサービスまでを一気通貫で扱っている点です。 まず、 当社の研削盤は設計開発から部品加工や組み立てまで、 かなり特殊なノウハウが必要です。 そして、 お客さまの特殊なニーズに応えるため、 営業から生産やアフターサービスまで、 密接な連携が必要です。
こうしたノウハウの蓄積や社内の連携体制が、 付加価値を生み出し効率アップやコストダウンにつながっています。
―― 売上総利益率が約40%と比較的高いのはなぜですか?
森下 売上総利益率は40%程度を維持するようにしてきました。 これは、 原価を安く抑えることに加え、 付加価値を高め売り値を下げない努力をした結果だと捉えています。
―― 高付加価値戦略をとってきたとすると、 営業力が重要に思えます。
森下 はい、 営業やアフターサービスまで自社で行い、 お客さまとなるべく直接対話することを大切にしています。 商社や代理店を通じた商談でも、 当社の社員が必ず出向いてお客さまと直接、 密接なコミュニケーションをとるようにしています。
これによってお客さまの要望に沿った製品やサービスを提供できますし、 なかには一緒に開発を進めるお客さまもいらっしゃいます。
―― 例えばどのような要望に応えてきたのでしょうか?
森下 端的な例だと、 デジタル式のプロファイル研削盤です。 従来の投影機式では、 職人のような熟練作業員しか使いこなせませんでした。 当社の製品では、 これをデジタル式へと発展させたことにより、 新入社員でも1週間で使える 「スキルレス化」 を実現しました。
こうした高付加価値製品を順次市場投入することで、 競争優位性を高めています。


主力製品の世界シェア60%を目指す
―― 主要顧客は自動車や電子部品メーカーとのことですが、 顧客の設備投資によって貴社の売上高もかなり変動するのではないですか?
森下 おっしゃるとおり、 景気変動の影響を強く受けます。 ほかにも海外市場においては為替レートの変動、 また、 極端な関税政策などもリスク要因となります。 これらのリスクを回避するため、 厚い自己資本の蓄積 (自己資本比率約80%) や流動性の確保を進めてきました。
―― 高い安全性を確保されているということですね。 貴社はこれまで非常に手堅い経営をされてきましたが、 2024年5月に公表された 「中長期ビジョン」では、 景気変動により40億円から80億円の間で推移してきた売上高を、 70億円から110億円までスケールアップする方針を打ち出されました。 2030年3月期の連結売上高目標を105億円としていますが、 達成への道筋をお聞かせください。
森下 当社が手がける主要製品の市場規模は、 特殊で狭いニッチな市場です。 このニッチな市場で当社は、 推定でプロファイル研削盤が50%、ツール研削盤が40%の世界シェアを獲得できています。 これをさらに高めていくことでスケールアップを実現させていきます。
具体的には、 2030年3月期までに、 シェアアップと高付加価値化によって、 プロファイル研削盤で6億円増、 ツール研削盤で20億円増とし、 その他製品も4億円増を目指します。 これで合計30億円程度の売り上げ増ですから、 2025年3月期の連結売上高予想75億円に30億円をプラスして105億円を目標に設定しました。
―― シェアアップの手立ては?
森下 既存市場では、 まだ高いシェアを確保できていない欧州 ・ 米国市場への攻略を進めていきます。 すでに欧州拠点としてドイツに現地法人を設立していますし、 2025年1月には北米市場の営業拠点を現地法人化しました。 アジアにおいても、 台湾子会社の持株比率を高めて販売強化を進めています。
また、 新市場では、 今後の発展が期待されるインド市場へのリサーチを行い、 手がかりを得たことから、 現地代理店を設置し、 展示会への出展などで市場開拓に注力しています。 さらには、 ブラジルやメキシコなどからの商談も広がりつつあります。 これらの市場で当社の強みである高付加価値製品の提案営業を進め、 設備更新の需要喚起に取り組んでいきます。
―― 海外ではどのような製品のニーズが高いのですか?
森下 欧米先進国のほうは、 高機能タイプのツール研削盤の需要が大きいです。 また、 新興国では、 アジアを中心にプロファイル研削盤の需要が増えています。 当社の製品は品質が高く競争力があるので、 海外において他社製品からの置き換えが少しずつ進んできています。 拠点やアフターサービスの拡充などを総合すると、 スケールアップへの道筋はついたという感触があります。
資本コストや株価を意識した経営
―― 「資本コストや株価を意識した経営」 が注目されていますが、 どのようにお考えでしょうか。
森下 当社のPBRは、 東京証券取引所の提示する目安である1倍を下回っている状況であり、 経営課題として強く認識しております。 既に公表済みの 「中長期ビジョン」 は簡潔な内容でしたので、 「資本コストや株価を意識した経営」 を念頭に、 より踏み込んだ内容を公表できるよう、 現在準備を進めています。
長期的な視点から一層の成長を目指し、 当社は今、 積極的な投資を行っています。 社員全員がこの業界における世界トップを目指しています。 少し時間をいただければ、 実現できる自信があります。 個人投資家の皆さまに長期にわたるご支援をいただけるよう、 経営に一層努めてまいります。
●会社概要(2024年9月末日現在)
概要 | |
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株式会社 和井田製作所 WAIDA MFG.CO.,LTD. |
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機械 |
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1946年10月 |
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3月 |
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東証スタンダード |
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代表取締役社長 森下 博 |
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8億4,330万円 |
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7,028千株 |
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195人 |
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