30代から60代までの男女4人の個人投資家(MIR@I会員)の方々にお集まりいただき、本音トーク満載の座談会を開催。前編、後編の2回に分けて、銘柄選定で重視するポイントや企業研究方法といった投資ライフについて語り合っていただきました。
進行役は、ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長・櫻井英明氏が務めます。
前編では、2022年前半に投資した銘柄の選定基準などについてお聞きしました。
■参加者(MIR@I会員)の皆さん
Cさん 30代男性 (上掲写真右奥)
会社員。株式投資歴10年未満。配当利回り重視
Sさん 40代女性 (上掲写真左奥)
会社員。株式投資歴10年以上。配当利回り重視
Tさん 50代男性 (上掲写真右手前)
会社員。株式投資歴10年以上。値上がり追求
Kさん 60代女性 (上掲写真左手前)
会社員。株式投資歴10年未満。配当利回り重視
※MIR@Iとは、野村IRが運営する会員制の投資家向け情報サービス
■司会
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長
櫻井英明(さくらい・えいめい)氏
1980年明治大学卒。機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly」編集長などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。
■開催日:2022年7月1日
※本文中の発言はすべて、2022年7月1日時点での各人の個人的見解によるものです。
2022年前半に投資した銘柄の選定基準は?
櫻井氏 2022年も半分が過ぎました。まずは2022年前半に買った銘柄の選定基準や購入の決め手について聞かせてください。
Cさん 選定基準としては、直近5年間連続増益かつ連続増配の銘柄です。増配する企業は株価もしっかりしているので、そういう会社を重点的に選んでいます。さらにそのなかからPER(株価収益率)が同業企業と同水準または若干低い銘柄を探し、1単元を買うようにしています。
Sさん 私は詳しいことはわからないので、応援したいと思える会社の株を買うようにしています。好きな会社に投資しているので、業績などは、正直あまり気にしていません。そもそも株の売買で儲けたいという気持ちが少なくて、できるだけ長く保有したいし、実際にこれまで一度も保有株式を売ったことがないんです。将来もしも生活に困ったら、損をしない程度の価格で売れたらいいかな、くらいに考えています。
櫻井氏 どのような会社を好きになるんですか?
Sさん 身近な会社ですね。業種でいうと外食とか、自分がよく利用する企業に投資します。例えば、モスバーガーが好きなのでモスフードサービス[8153]の株を買いました。モスバーガーは本当に好きなので、ハンバーガーが小さくなっても値上げされても食べに行きますし、業績が悪くなっても株を買い増して応援したいと思っています。
Tさん 私は20代から株をやっているので投資歴は結構長いほうだと思います。株式売買委託手数料が自由化された時からなので20年以上になります。長くやっている分、リーマンショックの際に株価が半分になったりと、いろいろな経験をしてきました。ここ最近は、配当重視で買うことが多くなっています。昔は配当利回り1%以下が普通でしたが、今は高いと10%超の銘柄もあります。最近だと日本郵船[9101]と商船三井[9104]を購入しました。もちろんインカムゲイン(保有によって得られる収益)だけでなくキャピタルゲイン(売買差益)も重視していますが、マネーゲームが苦手なので結果的に高配当利回り銘柄の長期保有になる感じです。
Kさん 私は、誰もが知っている企業で減配もしていない安定性のある銘柄を選んでいます。不祥事を起こした企業は好きになれないので、たとえ業績が良くても買いません。最近だと、いったん売却したあとに値が下がったので買い戻したケースと、話題になっていた銘柄を買ったくらいです。値動きを見て買うので10銘柄程度しか保有していません。これ以上多く保有すると値動きが追えなくなるので……。
2022年後半に注目するセクター、銘柄は?
櫻井氏 2022年の後半戦に向けて、今、注目しているセクター、銘柄を教えてください。
Cさん 引き続き「直近5年間連続増益かつ連続増配」を選定基準にしていきます。加えて、企業の設備投資は2022年後半も抑制傾向が続くといわれているので、景気動向に業績が左右されにくいディフェンシブ銘柄を中心に物色しようと考えています。プライム上場も条件のひとつですね。
Sさん 注目している銘柄は、武田薬品工業[4502]、NTT(日本電信電話)[9432]、ホンダ(本田技研工業)[7267]、すかいらーくホールディングス[3197]、大塚ホールディングス[4578]の5つです。
武田薬品工業は買い増しです。配当利回りも5%近くで高いし、開発力も高く経営が安定しているイメージがあります。
NTTは、以前から欲しかったのですが、高いイメージがあったんですね。でも実際は(PERが12倍弱と)割安だということがわかり、改めて注目しています。
ホンダは自宅の近くに社屋があって、小さい頃から好きな会社だったからです。
すかいらーくホールディングスは勤め先のそばにあって、よくお昼を食べに行くから。コロナ禍で空席が目立っていたので、応援する気持ちから投資しようと考えています。
大塚ホールディングスは、経営が安定していそうだし、同社の栄養ドリンクをよく買うので(笑)
Tさん 私は、後半も引き続き割安感のある海運セクターに注目しています。また、同じ割安感から地銀セクターも気になっています。地銀は、この10年、20年くらい株価的には振るわないのですが、配当利回りが業界平均約4%で、さらに株主優待も魅力的。これで評価されないのはなぜだろうと思いますね。
Kさん セクターだと通信、商社、鉄鋼の3つに注目しています。買うタイミングが難しいので、流れのなかで買いたいなと……。ただ、通信はNTTの一択かなと考えています。
櫻井英明氏の前編総括
櫻井氏 長くなってしまったので、ここまでを前場として、いったん私の所感を述べたいと思います。
Cさんは「5年連続増配」を選定基準のひとつにしていました。近年は増配する企業が増えています。これは良い傾向だと思いますし、堅実志向の投資家にとっては注目できるポイントだと思います。
また、Sさんの「好きになった企業の株を買う」という姿勢からは、1995年に日本で刊行された『ビアーズタウンのおばあちゃんたちの株式投資大作戦』(日本経済新聞社)を思い出しました。これは、ビアーズタウンというアメリカの田舎町に住むおばあちゃんたちが株式投資で全米ナンバーワンのパフォーマンスを出したという話です。おばあちゃんたちは、Sさんと同様によく知る会社の株だけを長期運用することで高パフォーマンスを実現したそうです。
Tさんは配当利回りの高い海運株に注目していました。このセクターは成長性のある銘柄が結構あるので、それを見出す楽しみもあります。
Kさんは、10銘柄程度に保有銘柄を絞って常に値動きをウォッチしていました。プロのファンドマネジャーでも25銘柄以上は管理できないといいます。しっかり値動きをチェックするのなら10銘柄程度が適切なのかもしれません。
また、2022年後半の注目セクター、銘柄では、SさんとKさんのおふたりが、ともにNTTをあげていました。実は私も、2021年末頃からNTTに注目していました。注目した理由は、東京大学などと共同で開発している光量子コンピュータチップや、NTTドコモの6Gを活用した「人間拡張基盤」戦略などの技術力の高さです。お二方と同様に、私も割安だと感じていました。
引き続き座談会の後編では、皆さんの「銘柄選定に活用している情報源」や「株式投資を行う目的」などについてお聞きしていきます。
座談会の後半につづく