「MIRAINIホールディングス」という社名をご存じの方は、まだそれほど多くないかもしれない。
萩原電気ホールディングスと佐鳥電機の経営統合により、2026年4月1日に誕生した新会社である。
今回の統合の背景から今後の成長戦略までを、木村社長と佐鳥副社長に聞いた。
MIRAINIホールディングスは、2026年6月29日に業績予想および配当予想の上方修正を発表したが、本稿は、一部の表記を除き、基本的に取材(2026年6月5日)時点の経営認識をベースに編集している。
第1章:なぜ今、経営統合なのか
2026年4月1日、萩原電気ホールディングス株式会社と佐鳥電機株式会社が経営統合し、「MIRAINI(ミライニ)ホールディングス株式会社」が誕生した。
代表取締役社長執行役員には木村守孝氏、代表取締役副社長執行役員には佐鳥浩之氏が就任した。
今回の経営統合の狙いは何だったのか。
両社の直近決算の売上高を単純合算すると4,319億円*1となり、業界内での存在感は一段と高まる。
とはいえ、「規模拡大だけが経営統合を決断した決め手ではなかった」と木村社長は語る。
*1 萩原電気ホールディングス:2026年3月期連結実績(2026年5月15日開示)、佐鳥電機:2026年5月期第2四半期時点の連結通期見通し(2026年1月14日開示)の合算金額
木村社長 統合を決めた最大の理由は、新しい価値を創造できると感じたことです。
萩原電気は自動車向けに、佐鳥電機は産業向けに強みを持っていましたが、さらなる成長のため、それぞれ他の事業領域への拡大やソリューション企業への進化を目指していました。しかし両社ともに、この戦略を実現するのは容易なことではありませんでした。
そこで、経営を統合し、シナジーとスケールメリットを活かすことが、両社にとって最も有効な選択肢であると考えました。

だからこそ、今、統合なのだ。
萩原電気ホールディングスと佐鳥電機は、共同株式移転の方法によりMIRAINIホールディングスを設立した。両社の株主は、株式移転により新会社の株式を保有する形となる。
第2章:統合で生まれる“シナジー”と“強み”
萩原電気ホールディングスは、デバイスからデータ活用までをカバーする幅広いソリューションを提供する技術系商社として、特に自動車産業向けに強みを有していた。
一方の佐鳥電機は、豊富な製品ラインアップと、インド・アジアを中心とした広範なグローバルネットワークを強みとしていた。

佐鳥副社長 両社が主力とする事業領域や展開エリアに重複は少なく、クロスセルを含めて、大きな相乗効果が見込めます。
現に統合から2カ月*2とまだ日は浅いものの、これまで佐鳥電機が十分にリーチできていなかった市場・お客さまから、佐鳥電機の製品に大口の引き合いをいただいています。
統合後のクロスセルが早くも具体化しつつあります。
*2 取材は2026年6月5日

両社の強みから生まれるシナジーの具体像をまとめると、以下の4点に整理できる。
1.事業領域の補完
2.顧客基盤の相互活用
3.グローバルネットワークの拡大
4.提案力の強化とクロスセルの推進
ただ、課題もある。サプライチェーンの高度化はそのひとつだ。
例えば、属人化しがちな旧来の営業手法や業務執行スタイルを、DXを活用しながら効率化・適正化し、生産性を高めていく必要がある、などと同社では捉えている。
第3章:統合後の課題をどう乗り越えるか
統合後のプロセスをPMI(Post Merger Integration)という。
一般的には、「経営統合(ガバナンス・戦略の統一)」「業務統合(オペレーション・ITの最適化)」「意識統合(企業文化の融合)」の3つがあるといわれている。
このうち「経営統合」については、両社の戦略の一致がスムーズに図られ、佐鳥副社長が語ったように、すでに事業・顧客・地域の相互補完が見え始めている。
ほかの2つはどうか。
「業務統合」について木村社長は次のように説明する。
木村社長 現場の混乱を避けるため、組織・体制の統廃合、システムの統一化、各種手続き、CI刷新など、さまざまな取り組みを進めています。これには相応の費用が伴いますが、当社はこれをコストではなく、将来への戦略的な投資と捉えています。
経営から事業、組織体制、財務政策に至るまで、あらゆる領域でシナジーを追求し、統合コストをはるかに超える効果を生み出すことが最終目的です。新会社が注力すべき重要な経営テーマだと受け止めています。

続けて佐鳥副社長が「意識統合」について語る。
佐鳥副社長 萩原電気と佐鳥電機は、企業風土や社員の気質が非常に似ているという声が社内から聞こえています。統合プロセスには困難がつきものですが、当社の場合は前向きに進めやすい条件が整っていると感じています。

PMIについては難所があるのも確かだが、前向きに着実に進んでいるようだ。
第4章:MIRAINIホールディングスが目指す姿
MIRAINIホールディングスは2026年5月、2030年度に向けたMIRAINIグループ経営方針の骨子*3を策定・公表した。
*3 クリックすると「MIRAINIグループ経営方針の骨子」(PDFファイル)が開きます
本骨子では、両社の経営資源とノウハウの融合により、持続的な売上成長と高収益化を両立する「MIRAINIモデル」の確立を目指す。
今後の基本方針として、インドを中心としたグローバル展開の加速で「成長性」を、高付加価値ソリューションの拡大強化で「収益性」を、トヨタ圏顧客を中心とした強固な事業基盤で「安定性」を追求していく。

また、PBR(株価純資産倍率)向上に向け、ROE(自己資本利益率) 10%以上とPER(株価収益率) 10倍以上の実現に注力していくことを打ち出している。
業績指標については、2030年度(2031年3月期)に売上高6,000億~7,000億円、営業利益210億円以上の達成を目標に設定した。
統合初年度となる2027年3月期の連結売上高は5,000億円を見込んでいる(2026年6月5日時点)。これは旧両社の前期売上高合算の116%に相当するチャレンジングな目標だ。

※佐鳥電機:2026年5月期第2四半期時点の連結通期見通し(2026年1月14日開示)
1.2027年3月期通期連結業績予想
・連結売上高 : 5,420億円(前回予想5,000億円/前回予想からの増減率8.4%)
・連結営業利益: 146億円(前回予想120億円/前回予想からの増減率21.7%)
2.2027年3月期配当予想
・中間配当:48.0円(前回予想45.0円)
・期末配当:48.0円(前回予想48.0円)
・通期合計:96.0円(前回予想93.0円)
木村社長 経営方針の骨子の最大のテーマは、価値のシフトです。
製品単体の安定供給にとどまらず、お客さまの課題解決に寄り添ったソリューション提案を本格化し、当社グループの提供価値、付加価値をもっと上位の存在に持っていく。それによって営業利益率を高め、収益基盤の一層の盤石化を図っていくことが、統合効果を最大化するために不可欠の取り組みだと受け止めています。
佐鳥電機が強みとする産業向けと、萩原電気が存在感を発揮する自動車向けを組み合わせることで、クロスセルだけでなくアップセルを広げていくことが、グループ経営方針で掲げた目標達成のカギとなるでしょう。
2031年3月期までには、営業利益に占めるソリューション型ビジネスの構成比を40%以上まで高めていく方針だと木村社長は話す。
佐鳥副社長には、より具体的に「成長性」「収益性」「安定性」の3つのキーワードで説明いただいた。
――佐鳥副社長 まず「成長性」については、世界のエレクトロニクス産業は今、着実な拡大基調をたどっており、特にインドの半導体市場は高成長を続けています。また萩原電気が軸足を置く自動車向けではAIの活用や電装化が進展しています。
経営統合によって、こうした成長マーケットへのアプローチが一段と加速することにつながりました。
「収益性」に関しては、萩原電気がメーカー機能を有しているため、各種電子部品を単体ではなくモジュールやシステムとして提案・提供することで、高い収益率を確保することが可能になります。
「安定性」については、萩原電気が自動車分野で安定した売り上げ・収益を計上していることに加え、両社ともに強固かつ健全な財務基盤を構築しており、経営と事業の健全性は十分に担保されているものと認識しています。
前述のとおり、MIRAINIホールディングスは2026年6月29日に業績予想の上方修正を発表しており、その要因を「半導体メモリの需要拡大やインド市場向け電子部品の需要増加などが背景」(同社リリースを抜粋・要約)としている。
同社見通しの確度の高さが裏付けられた格好だ。
配当性向40~50%を目安に安定的かつ継続的な配当を行い、成長投資と株主還元を高い次元で両立させていく方針。
2027年3月期の配当については、当初1株当たり年間93円を予定していたが、2026年6月29日の業績予想の上方修正に伴い、3円増配の96円(通期合計)に修正することを公表している。
最終章:統合はゴールではなくスタート
木村社長と佐鳥副社長の胸の内には、経営統合を起点とした新たな成長へのシナリオがしっかりと描かれているように見受けられた。
しかし、MIRAINIホールディングスの挑戦はまだ始まったばかりだ。最後に、新社名に託した木村社長の思いと、今後への決意をご紹介しよう。
木村社長 佐鳥萩原ホールディングスではなく、萩原佐鳥ホールディングスでもない。両社が統合したからこそ生み出せる新しい価値と、未来志向の経営姿勢を象徴する社名として、多数の候補からMIRAINIホールディングスを選びました。
また、当社グループの最大の財産であり、成長と差別化の源泉である人材を、「I」に込めて社名に組み込んでいます。
幸い、佐鳥副社長と私は長年の交流を通じて緊密な信頼関係を築いています。全社一丸となって新たな価値創造に挑戦し、中長期ビジョンの具現化と企業価値の持続的拡大に力を注ぐことで、日本と世界の産業と社会の未来に貢献していきたいと思います。

●会社概要(2026年4月1日時点)
| 概要 | |
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MIRAINIホールディングス株式会社 MIRAINI HOLDINGS CO., LTD. |
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卸売業 |
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2026年4月1日 |
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3月 |
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東証プライム、名証プレミア |
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代表取締役社長執行役員 木村守孝 |
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10,000百万円 |
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1,655名(連結) |
《編集タイアップ企画》




