鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構/JRTT)は、鉄道や船舶による交通ネットワークの整備などを行う独立行政法人。九州新幹線や北陸新幹線など、これまでに3,600キロメートル以上の鉄道建設を手がけてきた。また船舶においても、旅客船・貨物船合わせて4,100隻以上の建造実績がある。
こうしたプロジェクトに必要な資金調達も同機構が担っており、その手段のひとつとして「サステナビリティボンド」を発行しているという。鉄道・運輸機構の米田純一理事(※)に、機構が担う役割と同債券発行の意義などについて聞いた。
※肩書はインタビュー当時のものです

理事 米田 純一氏
鉄道、船舶による国内交通ネットワークの整備を担う
――整備新幹線の線路や駅などを建設する事業をされているとのことですが、事業内容についてご説明ください。
米田 鉄道・運輸機構は、「明日を担う交通ネットワークづくりに貢献します」を基本理念に掲げ、わが国の交通ネットワーク整備に寄与し、経済社会の発展に貢献すべく事業を行っています。
鉄道建設を例に説明すると、整備新幹線や都市鉄道など多数の鉄道建設プロジェクトを当機構が担っています。完成後は施設を当機構から鉄道事業者に貸し付けもしくは譲渡し、貸付料等をいただくスキームです。
――鉄道会社がそれぞれ鉄道整備をしていると思っていました。
米田 鉄道会社の役割は旅客輸送などの営業です。当機構は国からの指示・認可に基づき、多くの鉄道建設プロジェクトを担ってきました。
――整備実績を教えてください。
米田 全国120路線以上、総延長は約3,600キロメートル以上に及びます。うち整備新幹線建設では、全国の新幹線路線の約47%にあたる1,386キロメートルを当機構が建設しました。

――船舶建造事業も行っていますね。
米田 内航海運事業者からの相談や申し込みを受け、船舶を共同で建造しています。内航貨物船や国内旅客船の建造支援により、これまで4,100隻以上の船舶を建造しました。
内航貨物船は国内貨物輸送の約4割を占める重要な輸送手段です。また、本土と離島を結ぶ「離島航路船」は住民に不可欠な交通インフラです。このように、船舶を通じて物流や地域交通の維持・発展に貢献しています。

財投機関として初! 47都道府県すべての投資家から投資表明
――交通インフラ整備には多額の資金が必要です。機構では資金調達のために財投機関債の発行も行っているとうかがっています。
米田 2019年以来、グリーンボンドをさらに進化させた形で、サステナビリティボンドを継続的に発行しています。
サステナビリティボンドは、調達資金の充当先を環境にやさしく環境改善効果を持つ「グリーン性」と、社会的課題解決を目指す「ソーシャル性」を併せ持つ事業に限定した債券です。2025年度は、5年・10年の年限で年3回発行を予定し、合計271億円の調達を計画しています。

――グリーン性とソーシャル性が鍵ですね。交通インフラ整備に充当するためソーシャル性の高さは理解できますが、グリーン性についても教えてください。
米田 鉄道や船舶による旅客・貨物輸送は、ほかの輸送手段に比べCO2排出量が少ないのが特徴です。例えば鉄道旅客のCO2排出量は、自家用乗用車の約7分の1です。
当機構は2019年に、グリーン性の厳格な基準を定める認証機関CBIのプログラム認証をアジアで初めて取得しました。
――どのような投資家が購入しているのでしょうか?
米田 地方公共団体や銀行、信用金庫などから表明をいただいています。2022年には、財投機関として初めて、47都道府県すべての投資家から投資表明をいただきました。2025年8月末時点での投資表明件数は424件で、最初に発行した6年前の約9.6倍となっています。
――最後に、読者である個人投資家へメッセージをお願いします。
米田 私たちの業務は、SDGsの各目標や2050年のカーボンニュートラルの達成に資するものであり、良質なサステナビリティボンドの継続的発行を通じてわが国の債券市場の発展に貢献できると考えています。
個人投資家の皆さまがサステナビリティボンドを直接購入することは難しいかもしれませんが、当機構の基本理念や業務へのご理解をいただき、今後ともご支援賜りますようお願い申し上げます。

●法人概要(2025年3月25日現在)
概要 | |
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独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 Japan Railway Construction, Transport and Technology Agency |
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鉄道・運輸機構(英文略称:JRTT) |
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2003年10月 |
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藤田 耕三 |
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新幹線鉄道等の鉄道施設の建設、貸付け等 海外高速鉄道の調査等 船舶の共有建造 地域公共交通への出資等 鉄道施設整備を行う鉄道事業者等に対する補助金等の交付 旧国鉄職員等の年金等の給付に要する費用等の支払 |
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1,153億8,734万2,338円 |
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国土交通大臣 |
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独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法(平成14年法律第180号) 独立行政法人通則法(平成11年法律第103号) |