60年培った加工技術力と工程開発力を核として、 環境・エネルギー、 航空・宇宙など、 さまざまな事業分野に最適なソリューションを提供してきた放電精密加工研究所。 2021年4月には、 収益構造の改革を骨子とした新たな中期経営計画を始動させ、 持続可能な社会の構築に従来以上に貢献していくことを打ち出した。 同社の現況と将来展望を工藤紀雄代表取締役社長に聞いた。
工藤 紀雄
norio kudo
代表取締役社長
オンリーワンの独創技術でお客さまの課題解決に貢献
──はじめに、貴社の現在の事業内容をご紹介ください。
当社は、放電加工を含む特殊金属の加工技術による部品製造や金型製造、さらにプレス機を中心とした機械装置の製造販売など、モノづくり企業として創造的な発想と技術で、幅広いビジネスを展開しています。
事業分野は、環境・エネルギー、航空・宇宙、交通・輸送、住宅、機械設備など多岐にわたり、国内大手企業を中心とする多くのお客さまにとって、なくてはならないパートナーとしての地位を確立しています。
──貴社のビジネスの特長をどのようにご認識されていますか。
1961年の創業以来、当社は独創的な技術と製品の創出を通じて産業界の発展に貢献してきました。「安く早く」だけでなく、お客さまが抱えている課題に向き合い、独自技術に基づく最適なソリューションを提供する。「お客さまの発展に貢献できてこそ、当社の発展がある」という信念のもとに、たゆまぬ研究開発を続け、加工技術力と工程開発力を培ってきました。これらが当社の競争優位性であり、持続的成長への原動力だと捉えています。
経済社会の潮流を見据えて長期ビジョンを策定
──2026年2月期までの長期ビジョンを策定された狙いと、目指す企業像についてご説明ください。
新型コロナウイルス感染症の流行や、脱炭素社会、資源循環社会への転換など、世界情勢は急激に変化してきています。こうした時代において、当社が持続的成長を実現していくためには、経済社会の潮流を見据えて果たすべき使命とあるべき企業像を明確化することが欠かせません。この認識に基づいて長期ビジョンを再検討し、目指す姿として、「持続可能な社会の実現に貢献するコトづくり企業として、創造的な発想と技術で人と社会に必要なカタチを提供できる企業」を掲げました。
収益重視の経営を徹底し営業利益率5・5%達成へ
──長期ビジョンの実現に向けて推進中の『中期経営計画2024』についてお聞かせください。
2021年2月期は、新型コロナの影響を大きく受け業績が悪化したことから、『中期経営計画2024』では、2024年2月期までの3年間を『利益を重視し、筋肉質で骨太な収益構造への改革を行う充電期間』と位置付け、次世代に向けた経営と事業の再構築を進めています。これにより、2024年2月期には連結売上高137億円、同営業利益率5.5%を目指します。
航空・宇宙分野では、航空業界がコロナの影響を大きく受けましたが、最悪期は脱したと見ています。世界の旅客数がコロナ前までに回復するのは2024年頃と見ており、当社ではそれに向けて、航空機エンジン部品のメンテナンスサービスを本格稼働させるほか、航空・宇宙部品メーカーに向けてトータルソリューションの能力強化を進めています。
環境・エネルギー分野では、脱炭素化の潮流の中で、石炭に比べ環境負荷の低い天然ガス火力発電の需要増加に伴い、当社の主力製品のひとつである産業用ガスタービンも堅調に推移すると見ており、それに対応すべく、サプライチェーンの強化など生産体制を盤石なものにします。
また、機械設備分野では、当社の高精度なデジタルサーボプレス機「ZENFormer」が、最近ではFCVの燃料電池部品であるセパレーターの成形において注目を集めています。脱炭素社会に対応した自社製品でさらなる優位性を高めるため、シェアリングサービスを強化し、次世代モノづくりの支援を強力に推進していきます。
すべての事業分野の戦略はお伝えしきれませんが、将来の飛躍に向けた取り組みを着実に進めています。
次世代に向けた再構築を進め、成長軌道への回帰を図る
──最後に、個人投資家の方々にメッセージをお願いします。
2021年2月期はコロナ禍の影響による業績悪化で上場以来初の無配となり、株主の皆さまには改めてお詫び申し上げます。この厳しい状況下で私たちは利益を創出する体制の構築に努め、2022年2月期は収益改善に伴って復配を計画しています。そして、『中期経営計画2024』で成長軌道への回帰を図り、強みである加工技術力と工程開発力に磨きをかけることで持続可能な成長を目指します。当社の描く未来にぜひご期待ください。
資源問題の解消に寄与する混合溶融技術
混合溶融とは、これまで混ぜることが困難だった異なる融点の材料を、物質同士が衝突する際に発生する熱エネルギーを用いて溶融する新技術です。例えばプラスチック素材に木材などのバイオマス素材を混合して環境にやさしいバイオマスコンポジットを作ることができるため、さまざまな領域、用途への展開が期待されています。
また、通常のプラスチック製品と異なり、焼却炉で処理できることから、昨今、喫緊の国家課題となっている廃プラスチックの削減とプラスチックリサイクル社会の確立にも寄与します。
当社では引き続き、サーキュラーエコノミーに貢献する取り組みの一環として、混合溶融技術の一層の高度化と用途開発に力を注いでいくとともに、理解促進のための地域や業界を越えた活動も積極的に進めていきます。
