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いのちと自然を守り育てる化学企業

卓越した研究開発力で世界の農業に貢献 いのちと自然を守り育てる化学企業

2021年7月1日
4996 クミアイ化学工業
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日本初の国産農薬の開発から始まり、数々の画期的な農薬を創製。世界の農業に貢献してきたクミアイ化学工業。2019年10月期には、目標としていた売上高1,000億円超を達成するなど、その成長スピードが加速している。代表取締役社長の小池好智氏に、その要因と、創立100周年を見据えた新しい中期経営計画について聞いた。

小池 好智

小池 好智
Yoshitomo Koike
代表取締役社長

コア事業は農薬および農業関連。高確率な研究開発力に強み


――貴社の事業内容についてご説明ください。

小池好智社長(以下、小池)  当社の中核事業は、農薬の新規有効成分の創製から研究開発、工業的な生産、製剤化した製品の販売までを手がける農薬および農業関連事業です。国内では主に農協を通じて農家の皆さまへの販売を行っている点も特徴のひとつでしょう。海外では、当社が創製、製造した有効成分(原体)を提携メーカーに販売し、提携先が製品化して販売しています。

 第2の柱である化成品事業は、4分野(塩素化事業、精密化学品事業、発泡スチロール事業、産業用薬品事業)で構成されています。農薬原体の開発で培った有機合成の技術力を駆使し、国内外で高性能樹脂や繊維の原料などを製造販売しています。

――貴社の強みを教えてください。

小池  2010年から10年間で6剤の新規有効成分の登録を取得し、販売してきた研究開発力です。農薬の開発は、一般的に10数万化合物に1つの製品化率といわれますが、当社では8千化合物に1つという高確率を誇っています。

 また現在、日本の農業は担い手の高齢化や耕作放棄地の増加が問題となっており、農地の集約や省力化で生産性向上を目指す「スマート農業」の推進が急務です。当社では、独自の製剤技術として開発した「豆つぶ®剤」で散布効率を高めることで省力化を実現したり、ドローンメーカーと連携して適時適所に農薬を散布する研究など、さまざまな面で研究を進めています。


――畑作用の除草剤「アクシーブ®」が海外で好評です。海外市場での戦略をお聞かせください。

小池  海外のメジャー企業に比べると、日本の農薬メーカーが規模で劣ることは否めません。しかし、メジャー企業では水稲用農薬のような世界での市場規模が相対的に小さいニッチな商品の開発は優先度が低く、当社も十分に存在感を発揮できると考えています。

 一方、当社の商品群は水稲用が主となるため、畑作中心の海外市場のニーズに対して万全ではありませんでした。農薬業界では、一般に各メーカーが他社と提携して相互の品揃えを充実させますが、売上高300億円にまで成長したアクシーブ®のような商品は、メジャー企業との連携が図りやすくなるという意味でも、多大なメリットがあります。


 また海外では、ジェネリック農薬(*1)の登録環境の整備が進んでいるため、そこへの対応が課題です。既存ブランドの競争力向上にも取り組む必要があります。

*1 特許期間が切れた薬剤成分を用いた後発農薬

長期ビジョンを基にまとめた〝あるべき姿〟に向かうために


――2019年10月期に、目標としていた連結売上高1,000億円を達成されました。

小池  前中期経営計画(2018年10月期~2020年10月期)の成果だと考えています。前中計の主眼は、2017年に実施したイハラケミカル工業との経営統合に伴う、新たな成長の土台づくりでした。同社は農薬開発、商品化・販売と有効成分の製造を、長らく当社と分業して行っていました。まず、これらを一気通貫できるようになったメリットを活かすための体制づくりに取り組みました。また、同社から継承した「化成品事業」を事業の第2の柱に育てることにも注力しました。世界的に需要が高まるアラミド繊維原料の製造工場をタイに新設するなど、成長基盤の構築が進んでいます。

――2021年10月期からスタートした新中期経営計画(~2023年10月期)では、「100年企業」というキーワードが出てきました。

小池  新中計では、当社が創立100周年を迎える2049年頃を見据えた長期ビジョンである「あるべき姿」を設定し、そこに向かうはじめの3年間の施策をまとめました。次の4つの重要方針に基づく施策に取り組み、最終年度には、連結売上高1,260億円の達成を目指します。

  「研究領域、事業領域の拡大」では、共同研究やM&Aなどを通して事業領域の拡大を推進します。また研究開発力の底上げを図るべく、化学系研究所を統合した新研究所が2023年、静岡市清水区に竣工予定です。

 「販売ルートの多様性確保」としては、2021年2月、アジア・アフリカで農薬製造・販売を展開するAsiatic Agricultural Industries(シンガポール)を連結子会社化し、アジア・アフリカ地域の一部で直販がスタートしました。海外市場での販売戦略の可能性を追求します。


 「コスト競争力の確保」では、効率的な調達、輸送、製造をさらに突き詰めます。そして、「ESGを重視した企業活動」では、農業イノベーションの創出、働きがいと人財の育成・活用を最重要課題に、サスティナビリティを意識した取り組みを進めます。


――
持続的な成長に向けた課題は何だと認識されていますか。

小池  当社は「いのちと自然を守り育てる」を企業理念に、安全安心な農薬の開発・提供を続けてきましたが、政府が提唱する「2050年カーボンニュートラル」に対応し、さらなる生物多様性の確保、環境負荷低減に向けた取り組みも進めなければなりません。また2021年5月に、政府が策定した「みどりの食料システム戦略」では、新たな技術体系の確立とさらなるイノベーションの創造によって生産力向上と持続性の両立を実現することが求められています。

 農薬は、農業の生産性向上、省力化および品質・収量確保のために必須な資材ですから、研究開発型の農薬メーカーとして、より環境に優しい化学農薬の開発に加え、生物農薬やバイオスティミュラント(*2)といった新しい技術の研究も付加しつつ、農業生産に寄与していきます。

――株主還元に関する基本姿勢をお聞かせください。

小池 当社では経営統合後の業績拡大に伴い、中間配当の実施や業績に応じた増配を行っております。今後も株主の皆さまと社員への還元、次世代に向けた投資のバランスを総合的に勘案し、安定した配当を継続的に行っていきます。

 農薬事業は研究開発から収益化までのスパンの長いビジネスモデルであり、先行投資型の企業であることをご理解いただき、長期的な視点で当社を見守っていただければ幸いです。

*2 気候や土壌に起因する植物の生育に関わる負荷を軽減する技術。“Bio Stimulants”

 

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