第一生命ホールディングスは、2021年度にグループビジョンを刷新するとともに、3カ年の新中期経営計画「Re-connect 2023」をスタートさせた。新中期経営計画では、すべてのステークホルダーとの向き合い方を抜本的に見直し、信頼の回復に努めることで、再度、より良い形でつながり直すことを目指すという。その骨子となる部分を稲垣精二社長にうかがった。
稲垣 精二
Seiji Inagaki
代表取締役社長
グループビジョンを刷新
第一生命において元社員による金銭不正取得事案が発生したことにつきまして、被害を受けられたお客さまや関係者の皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけしていることを、深くお詫び申し上げます。
当社グループを取り巻く環境は急速に変化しています。世界では地球温暖化への対応など、持続的社会の実現が課題となっています。また、デジタルリテラシーが高いミレニアル世代・Z世代が2035年には国内全人口の半分を超過するともいわれており、当社グループには大きな変革が求められています。私たちはグループビジョンを刷新し、新たな中期経営計画を始動しました。
当社グループは将来あるべき姿について、「100年先を見据え、事業領域を4つの体験価値(*1)へと拡げ、社会の持続性確保を通じて、すべての人々の”well-being(*2)”を守り・改善させていく」ものと設定しました。その実現には、持続的社会の存在が大前提であると考えており、私たちは社会、地域、地球環境の維持向上への取組みで世界をリードする存在を目指していきます。こうした考えのもと、当社グループが一丸となって将来に向かうため、グループビジョンを 「Protect and improve the well-being of all(すべての人々の幸せを守り、高める。)」へと定めました。
*1 「保障」「資産形成・承継」「健康・医療」「つながり・絆」
*2 安心に満ち、豊かで健康な人生を送り、幸せな状態であること

新中計で展開する重要施策
この新ビジョンを実現するために策定したのが、新中期経営計画「Re-connect 2023」です。「Re- connect」には、すべてのステークホルダーとのつながりを「再度、より良い形でつながり直す」という意味を込めています。新中計の3年間で4つの重要施策を展開し、将来の持続的な成長に向けて、「中核事業の深化」と「新たな組織能力の獲得への探索」を図ります。
①国内事業戦略
CX(*3)デザイン戦略の推進を通じて、これまでの国内ビジネスモデルにおけるお客さま接点から一線を画す変革を目指します。CXデザイン戦略とは、マルチブランド・マルチチャネル戦略を基盤としつつ、保険の枠やチャネルの垣根を越えて、お客さま接点をひとつにつなげ最良の体験価値を創出する戦略のことです。この戦略のもと、これまでにない体験価値を日常的に実感いただくための基盤「CXデザイン・システム」を2022年度中に稼働させ、お客さまにとって 「ほしいものがほしいときに自然な形で」手に入るように、人生の節目を支えるビジネスから、日常に寄り添うビジネスへ深化させます。
また、NPS®(*4)(顧客推奨度)を第一生命の重要指標とするなど、生涯設計デザイナーの評価制度見直しやデジタルツールの活用による生涯設計デザイナー体制の改革・高能率化を進めます。
そうした取組みにより、当社グループは事業領域を4つの体験価値へと拡げていきます。まず「保障」においては、デジタル完結型保険をはじめとした多様なニーズに対応する商品などを拡充します。「資産形成・承継」では老後収支の見える化を実現し、グループ内リソースを活用した新たな商品開発や関連サービスを、「健康・医療」では健保組合向け医療費抑制支援事業を始めるなど、未病・予防領域のサービスを展開していきます。最後に「つながり・絆」では住宅ローンなどの協業や事業承継・M&A支援などを通じてお客さま接点の創出を目指していきます。
*3 カスタマーエクスペリエンス
*4 NPSは、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標

② 海外事業戦略
成長を牽引する事業ポートフォリオの構築、つまり、既存事業における利益貢献の拡大やさらなる成長に向け挑戦していきます。
具体的には、❶安定成長・早期利益貢献が期待できる米国・豪州での成長、❷中長期・超長期の利益貢献を見込むアジア新興国・アーリーステージの市場への進出、といった市場ステージに応じたポートフォリオ戦略を推進し、海外生保事業の深化に取り組みます。加えて、将来のさらなる環境変化に備えたイノベーティブなビジネスモデルの取込みにより新ビジネスを探索し、海外生保事業における修正利益は直近の602億円から、2023年度には約850億円を目指していきます。
③ 財務・資本戦略
市場関連リスクを削減し、保険リスク中心のリスクプロファイルへ変革することで、グローバル大手生保に伍する資本充足率を安定確保するとともに、リスク・リターン評価を踏まえた積極的な成長投資や適切な資本調整なども通じ、資本コストを上回る資本効率を目指します。
また、株主還元の方針を変更しました。配当性向は30%以上として安定配当を目指し、原則として1株当たり配当の減配は行いません。そして、機動的・柔軟な追加還元を戦略的に行い、総還元性向の目標を中期の平均値として50%とし、株主還元の大幅強化を目指していきます。

④サステナビリティ・経営基盤
第一生命は「RE100」や「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス」に加盟しており、事業活動で消費する電力の100%再生可能エネルギー化や運用ポートフォリオのカーボンニュートラルを実現すべく、機関投資家として投資先企業との対話(エンゲージメント)などを通じて、CO2排出量削減に貢献します。そして、新中計におけるビジネスモデル変革の原動力となる人財の育成と戦略的な人財配置を行うとともに、国内外の環境変化を踏まえグループガバナンスを深化させることで、経営基盤の強化を図っていきます。
新中計は不確実な外部環境のもと、さまざまな変革に向けてトライ&エラーを繰り返す3年間となります。当社グループの全従業員が価値観を共有し、共鳴しあいながら変革を遂げるために改めて結束を強めていきます。今後ともなお一層のご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
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