個人投資家を対象としたアンケート調査で最も人気の高かったテーマ 「医薬 ・ バイオ」。 業界の現況と今後について、 松原アナリストに解説いただいた。
松原 弘幸
Hiroyuki Matsubara
野村證券 エクイティ・リサーチ部
医薬開発パイプラインの進捗が株価を動かすカタリストに
医薬品 ・ バイオ銘柄の最も重要なカタリスト(相場を動かすイベントや材料)は、 医薬開発パイプライン*1の進捗です。
新薬の開発にあたっては、 まず研究室レベルで細胞や動物を用いて有効性の検討を行い、 次にP1(Phase1)からP3(Phase3)までの3段階の臨床試験を実施します。 P1は人体に対する安全性の検討、 P2で少数の患者さんを対象に有効性と安全性を確認し、 最後のP3で多数の患者さんを対象に新薬としての評価を行います。
株価はパイプラインの進捗状況に敏感に反応しますので、 個人投資家の皆さまには、 初期の非臨床試験や3段階の臨床試験がどのように進んでいるのか、 業界各社の動向を注視していただきたいと思います。
*1 医療用医薬品候補化合物、新薬候補

新薬の承認申請を間近に控えるサンバイオとヘリオスに注目
私が今注目しているのは、 サンバイオ(4592) と ヘリオス(4593)です。 両社ともここ数年、 赤字決算が続いていますが、 ようやく再生医療等製品の市場投入時期が見えてきました。
サンバイオは、2022年3月にTBI (外傷性脳損傷)を対象として承認申請を行いました。
ヘリオスは、この4月にARDS(急性呼吸窮迫症候群)の承認申請を目指していたところ、延期になりました。一方、急性期脳梗塞に関しては、2022年5月に治験結果を発表し、 その後有効性が示唆されれば承認申請を行う予定です。
さらに、 現在も新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていますが、 私がカバーしている企業では、 JCRファーマ(4552) や タカラバイオ(4974) がワクチンの製造受託を手がけており、 そーせいグループ(4565) や ペプチドリーム(4587) はワクチンや治療薬の開発を進めています。
慎重な銘柄検討で、株価のダウンリスクを回避する
バイオテック企業は、再生医療や遺伝子治療における先駆的な取り組みを通じて、 さまざまな難治性疾患の克服に挑戦しています。 また、 新薬の速やかな開発により、 アンメット ・ メディカル ・ ニーズ*2の充足と患者さんのQOL向上を追求しています。 個人投資家の皆さまには、 新しいアプローチで医薬 ・ 医療の高度化に取り組んでいるバイオテック企業を、 ぜひ投資先として検討していただければと思います。
ただ、 バイオテック企業の業績は新薬開発の成否に懸かっていることから、 開発に成功すれば株価の急伸が期待できる半面、 開発が遅延もしくは失敗すると大幅な下落も避けられません。 株価のダウンリスクに注意を払いつつ、 非臨床 ・ 臨床試験のデータを精査し、 投資先を慎重に検討することが必須といえるでしょう。
*2 医療において、 有効な治療方法がない疾患に対するニーズのこと
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