パブリックに加えてプライベート領域を拡大・強化し、社会課題の解決を通じた持続可能な成長を実現する
野村ホールディングスは、世界30以上の国と地域に広がる広範なグローバルネットワークを基盤に、営業、アセット・マネジメント、ホールセール、マーチャント・バンキングの4部門と、未来共創カンパニー、コンテンツ・カンパニーが横断的に連携し、従来の証券・金融の枠組みにとらわれない質の高い商品・サービスを提供している。
顧客資産残高と運用資産残高はいずれも国内最大規模を堅持。
近年はESG/SDGsへの取り組みや地方銀行などほかの金融機関との協業体制の構築、LINE証券への出資など、先駆的な取り組みも推進中だ。
野村ホールディングスの競争優位の源泉と中長期の成長戦略について、奥田健太郎グループCEOにお話をうかがった。
奥田 健太郎
okuda kentaro
代表執行役社長
グループCEO
- 野村ホールディングスには、業界のトップランナーとして金融ビジネスをさらに拡大・発展させていく使命があります
- “商品・サービス” “顧客基盤” “お客さまとの接点”3つの軸を拡大・強化 「あなただけのため」のサービスに注力、差別化された競争力につなげていきます
- 経営ビジョンは「社会課題の解決を通じた持続的な成長を実現すること」 社会課題の解決に向け、さまざまな取り組みを実施し、サステナブル社会の実現に貢献していきます
- 【営業部門】新たなチャネル・フォーメーションのもと、お客さま満足度の最大化を追求し、ビジネスのさらなる拡大を図る
- 【ホールセール部門】成長分野・高収益ビジネスへの注力、ビジネス・ポートフォリオの多様化を通じ、収益力が大幅に向上
- 【アセット・マネジメント部門】目指すのは『世界のお客さまに選ばれる、日本を代表する運用会社』
- 【マーチャント・バンキング部門】事業成長の実現を目指し、プリンシパル・ビジネスを展開
- 【新組織:未来共創カンパニー】デジタルを活用したイノベーションを推進し、新たなサービス展開をリードする
- 【新組織:コンテンツ・カンパニー】有形・無形の情報の一元化、プライベート化したコンテンツの提供を目指す
野村ホールディングスには、業界のトップランナーとして金融ビジネスをさらに拡大・発展させていく使命があります
2020年4月、野村ホールディングスのグループCEOに就任されました。トップとして野村をどのような会社にしていきたいとお考えですか?
次期CEOに指名されてから4月に就任するまでの数カ月、「野村はどうあるべきか」「お客さま、マーケット、社会からは何を求められているのか」「私たちの存在意義は何なのか」について自ら考え、周囲からも意見を聞き、数多くの議論を重ねました。行き着いた結論は、「既存のビジネスの延長線上にはない新しい野村へ変わるための変革が必要」ということでした。私はグループCEOとして、「今、自分たちが立っている場所とは違うところ、新しいステージに野村を進めていく」というビジョンを全社員と共有し、日々ビジネスに取り組んでいます。
新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちがこれまで当たり前と思っていた生活は一変し、明日が今日の延長線上にはないことを改めて思い知らされました。将来コロナ禍が落ち着いた時、人々の生活や考え方が以前と同じものであるという保証はありません。私たちは、社会のさまざまな変化に対応し、金融という社会の重要なインフラを担う企業としての責任を果たすとともに、お客さまをはじめすべてのステークホルダーの方々からの信頼に応えていかなくてはなりません。
野村の強み
●95年の歴史で積み上げたブランドと信頼
●豊富な国内・海外ネットワークと高いプレゼンス
●グループの総合力を活かしたビジネスの展開
●高いコンサルティング力・専門的なスキルを備えた人材の厚み
●強固な財務基盤

“商品・サービス” “顧客基盤” “お客さまとの接点”3つの軸を拡大・強化 「あなただけのため」のサービスに注力、差別化された競争力につなげていきます
トップ就任に合わせて、経営戦略として「パブリックに加えプライベート領域への拡大・強化」を掲げられました。詳しく教えていただけますか?
「プライベート」という言葉はたくさんの意味を持っています。ここでは「お客さま一人ひとり」「あなただけのため」という想いを込めています。
お客さまにとって、最も価値のあるサービスとは何でしょうか。
おそらく多くの方にとって、自分ひとりのために用意され提供されるサービスではないかと思います。従来、このようなプライベートなサービスは比較的コストが高く、特定の方へのみ限定的に提供される傾向がありました。しかし最近のデジタル化の進展に伴い、分野によってはコストが大きく下がってきており、この流れは今後ますます加速すると思います。
お客さまは、自分のニーズに合致した商品やサービスを、最適なタイミングで提供されることを望まれます。「プライベート」という言葉は、お客さまに選ばれ信頼をいただくための重要なキーワードであり、ここにしっかり対応できなければ、次のステージに進むことは到底できないと考えています。
「あなただけのため」のサービス、プライベートなサービスを提供するためには、「商品・サービス」「顧客基盤」「お客さまとの接点」、これら3つの軸の拡大と強化が必要です。
商品・サービスについて、当社は従来、上場株式、投資信託などのパブリックな市場や金融商品に強みを持っていました。これからは、プライベートの領域、例えばプライベート・エクイティやプライベート・デット、インフラなどの事業性資産を含むオルタナティブ投資商品、私募型の商品へと領域を拡大していきます。さらに、ブロックチェーン技術を活用したデジタル債・デジタルアセット債の発行や、機関投資家が安心して投資できるためのデジタル資産の保管、決済、管理を代行するサービスなどにも取り組んでいきます。
顧客基盤の観点では、投資家と発行体をつなぎリスクマネーを供給することは、私たち証券会社/投資銀行にとって大変重要な役割です。これまで当社の投資銀行ビジネスのお客さまは上場企業が中心でしたが、今後は、スタートアップのような非上場企業に対して、IPOだけではなくIPO前の資金調達、パブリックな調達だけでなく私募のプライベートプレイスメントにも注力していきます。さらに、従来からお取引いただいているお客さまはもちろんのこと、今まで接点の少なかった投資家のお客さまへのアプローチも強化し、商品提供だけでなく、コンサルティングやアドバイザリーなど新たなサービスを提供することで、より一層ビジネスを拡大していきます。
お客さまとの接点では、新型コロナウイルスの感染拡大により、デジタルツールの活用は急速に普及しました。すでに野村證券では、対面と非対面を組み合わせたハイブリッド・モデルに移行しています。今後は、コンテンツの提供も含めデジタルの活用を強化し、個々のお客さまのニーズやご都合に合わせ、よりカスタマイズされた提供方法へと進化させていきます。
野村は日本の証券業界のリーディングカンパニーですが、海外でのビジネスの状況はいかがでしょうか?
おそらく大半の読者の方々は、当社に対して「日本国内で事業を展開している証券会社」というイメージをお持ちなのではないでしょうか。もちろん、国内において広範なネットワークと強固なビジネス基盤を有していることは事実です。しかし、リーマン・ブラザーズの承継から10年以上が経ち、現在ではグローバルにフランチャイズを持つ金融機関に進化しています。野村ホールディングスでは現在、世界で2万6,000人を超える社員が働いていますが、そのうちの約半数が海外で勤務しています。
また、先日(2020年10月28日)発表した2021年3月期上半期決算では、海外ビジネスの税前利益は過去最高を記録し、全社の税前利益に占める海外の比率は約4割にまで達しました。これまで精力的に取り組んできたビジネス・ポートフォリオの再構築の成果が表れてきています。最近では、海外ビジネスにおけるさまざまな事例が日本のお客さまへのソリューションの提供に活かされることも着実に増えてきており、グローバルなビジネス体制の強みが明確に出てきています。
オンライン証券が勢いを増していますが、脅威に感じてはいませんか?
オンライン証券だけではなく、金融機関各社がデジタル化に取り組んでいます。また、IT企業からの金融ビジネスへの参入も進んでいます。それぞれの企業が金融のデジタル化を進めていくと、プラットフォームとしては同じようなものができてくるはずです。その際、お客さまへ付加価値を提供する鍵となるのは「コンテンツ」と「人」だと確信しています。
お客さまに選ばれるには、どのようなコンテンツを持っているか、どのようにお届けするかが重要です。そこで、当社は2020年、「コンテンツ・カンパニー」という新しい組織を立ち上げました。これは、リサーチやグループ内に点在する有形無形のコンテンツを一元化し、新しい価値の創造を目指すものです。誰もが入手可能な情報に、野村独自の分析を加えることで価値ある「ナレッジ」に変え、差別化を図ります。また、経験などの暗黙知を顕在化させ、点と点をつなぎ新たな「ナレッジ」を作りだし、デジタルを活用して「あなただけのため」にプライベート化したソリューションとしてお客さまに提供していきます。
同様に、お客さまに直接接する当社の社員(人材)も大切な存在です。今後はあらゆる資産に対して、アセットマネジメント(トータルな資産運用・管理)の考え方、対応が必要となります。また、お客さまの課題に寄り添うための幅広い知識、専門性、問題解決能力が求められます。
さらに、資産形成層のお客さまに対しては、生活スタイルに合わせたアプローチも考えています。2019年8月、当社とLINE (Financial)との合弁でLINE証券を設立しました。LINE証券は、スマートフォン上で慣れ親しんだ「LINE」と、当社が培ってきた金融ビジネスのノウハウを活かし、新しい証券サービスの提供を目指しています。
今の「働く世代」は、従来の雇用慣行の変化や退職後の生活に対する不安などを背景に、お金との向き合い方を考える必要に迫られています。そうしたニーズに応えるため、投資未経験者や投資初心者の方にも、簡単・便利でわかりやすくシンプルなサービスを提供できるよう、LINEグループとともにさまざまな取り組みを進めていきます。

経営ビジョンは「社会課題の解決を通じた持続的な成長を実現すること」 社会課題の解決に向け、さまざまな取り組みを実施し、サステナブル社会の実現に貢献していきます
最近、ESG投資やサステナブル・ファイナンスが注目されています。この分野に対する取り組みについてお聞かせください。
私たちの経営ビジョンは「社会課題の解決を通じた持続的な成長を実現すること」です。
日々取り組んでいるさまざまなビジネスは、お客さまをはじめすべてのステークホルダーの皆さまからの信頼の上に成り立っています。当社の企業価値の向上と社会の持続的な成長はまさに同じ道の上にあるといえます。今世界は、新型コロナウイルスはもちろんのこと、温暖化による異常気象などさまざまな環境問題や社会問題を抱えています。私たち金融機関にも、本業で解決できること、貢献できることは何なのかを考え、具体的な取り組みに移すことが求められています。
野村ホールディングスでは、サステナブル・ファイナンスに注力しており、温暖化対策や社会課題の解決に寄与する資金調達のサポートを推進しています。一例として、コロナ禍において、国際機関などが発行する健康・衛生、経済活動を支援するソーシャル・ボンドと呼ばれる債券の引受・販売を行いました。また、サステナブル・ファイナンスの基準づくりを行っている国際資本市場協会に対してもさまざまな貢献を行っています。
加えて、2019年12月、再生可能エネルギー専門のM&Aブティックであるグリーンテック・キャピタルの買収を発表しました。2020年4月から「ノムラ・グリーンテック」として運営されており、世界最先端のサステナブル・テクノロジーやそのノウハウを世界中のお客さまへ提供する体制を整えています。このような取り組みの結果として、英国の雑誌『The Banker』から、2020年の“Investment Bank of the Year for Sustainable Corporate Finance”に選出されました。
野村ホールディングスは今後も、さまざまなステークホルダーの方々と協力し、多様な力を掛け合わせることで、サステナブル社会の実現を目指していきます。
ESG/SDGsへの取り組み(一例)
●「Drive Sustainability」制定(2020年10月)
●「環境や社会への寄与」の観点で消費やサービスを展開
●グリーンボンドやサステナビリティボンドなどSDGs債の引受
●企業評価の際に非財務価値を重視したコンサルティング業務を拡充
●再生可能エネルギー専門のM&A会社、米国グリーンテック・キャピタルを買収
ノムラ・グリーンテックとして高付加価値のノウハウを提供
※ここからは、野村ホールディングスのビジネス部門とカンパニーについて解説します。各部門・カンパニーが協働し、お客さまのさまざまなニーズに最適なソリューションを提供しています。
【営業部門】新たなチャネル・フォーメーションのもと、お客さま満足度の最大化を追求し、ビジネスのさらなる拡大を図る
全国の本支店・営業所、コンタクトセンター、オンライン媒体を通じて国内の個人や法人のお客さまにさまざまな金融サービスを提供しています。
株式・債券・投資信託・投資一任サービス(SMA・ファンドラップ)など、お客さまのニーズに合わせた資産運用のご相談はもちろんのこと、相続や贈与に関する相談やソリューションの提案、税務相談の仲介、法人の事業承継対策や本業支援など、さまざまなコンサルティング・ビジネスを展開していることが特徴です。
営業部門は、2021年3月期の上半期決算において、マーケットの追い風に加え、2019年に実施したチャネル・フォーメーションの見直しや店舗統合の効果が徐々に顕在化した結果、収益は1,739億円、税前利益は379億円と、前年同期比で増収増益を確保しました。
チャネル・フォーメーションの見直しについては、お客さまのニーズが多様化・複雑化する環境下、これまで以上に専門的できめ細かなサービスを提供すべく、お客さまの属性に合わせ担当するパートナー(営業社員)の配置や役割を変更し、お客さま満足度の向上に向けた態勢づくりを行いました。ビジネス体制の強化を通じて各パートナーが高い専門性とノウハウを身につけるとともに、商品・サービスの一層の拡充を図ることで、お客さまのご資産全体へのコンサルティングをより深化させていきます。
また、コミュニケーションスタイルが多様化するなか、メールやオンラインツールの活用など、非対面によるお客さまとの新たな関係構築にも果敢に取り組んでいます。今後は、デジタル・ツールの活用やコンタクトセンター機能の拡充に加え、CIO(チーフ・インベストメント・オフィス)グループの知見を活用して新たな資産運用サービスの提供を予定しています。また、地域金融機関との業務提携を通じ、さらなるビジネスの拡大に向けた取り組みを進めています。
close-up : 山陰合同銀行グループ・阿波銀行との提携で地域経済の発展に貢献する
野村證券は、2019年8月に山陰合同銀行グループと、2020年1月には阿波銀行と金融商品仲介業務における包括的業務提携を結びました。
地域に強固な顧客基盤と店舗網を持つ地域金融機関と、野村證券の培ってきたノウハウや商品・サービスとの連携によるシナジーが期待されています。2020年9月には、山陰合同銀行との提携業務がスタートし、鳥取・島根県合計6カ所のコンサルティングプラザでお客さまのさまざまなニーズにお応えしています。
【ホールセール部門】成長分野・高収益ビジネスへの注力、ビジネス・ポートフォリオの多様化を通じ、収益力が大幅に向上
ホールセール部門は国内外の事業会社、政府機関、金融機関など幅広いお客さまを対象としており、金融商品やソリューションの提供、市場への流動性供給に関する業務を行うグローバル・マーケッツと、資本・資金調達やアドバイザリーに関する業務を行うインベストメント・バンキングで構成されています。
強固な財務基盤とグローバルフランチャイズを活かし、日本においてトップクラスの市場シェアを誇るとともに、米国を中心に海外での存在感が急速に高まりつつあります。
ホールセール部門は、2021年3月期の上半期決算において1,533億円の税前利益を計上しました。これは、現在の会計基準を導入した2002年3月期以降で最高の上半期利益です。2019年にビジネス・ポートフォリオの見直しを行い、競争優位性のある分野にビジネスの絞り込みを行った結果、基礎的な収益力が大幅に向上したためです。特に海外3地域の収益は部門収益の73%を占めるまでに拡大しており、当社全体の収益基盤の安定化にも寄与しています。
グローバル・マーケッツにおいては、グローバルにビジネスの選択と集中を行いリソースの再配分を行った結果、ビジネスの収益性と安定性を高めることができました。海外においては、従来から強みのある金利ビジネスやエクイティビジネスに加え、ファイナンシングやソリューションなどのビジネスの拡大により、当社の海外におけるプレゼンスは大きく向上しています。
インベストメント・バンキングでは、強みを有する重点セクターにおいて米国中心に人員を強化するとともに、フィナンシャルスポンサー関連のビジネスにも注力しています。また、グローバル連携により、クロスボーダーM&A案件を数多く獲得しています。
さらに、2020年4月には、サステナブル・テクノロジー分野におけるM&A助言会社である米国の「グリーンテック・キャピタル」を買収し、ESG関連分野での取り組みを強化しています。今後は、お客さまからの多様なニーズへの対応として、デジタルを活用したサービスの提供やプライベート市場での資金調達など、テーラーメイド型のソリューションの提供に注力していきます。
部門全体として、今後も収益の多様化とコストの削減を継続し、収益の安定性を高め、2023年3月期までに税前利益1,200億円を達成することを目指しています。
close-up : シェア・リーグテーブル
●米国債マーケットシェア5位(8%)(Greenwich、売買高シェア:2019年1月~12月)
●米国エクイティフローデリバティブ*シェア1位
(第三者調査機関、収入シェア:2019年10月~2020年3月) *米国上場エクイティ・オプション
●グローバルM&Aリーグテーブル9位(Bloomberg:2020年1月~9月)
●日本関連M&Aリーグテーブル1位(Refinitiv:2019年4月~2020年3月)
●日本関連ECMリーグテーブル1位(Refinitiv:2019年4月~2020年3月)
【アセット・マネジメント部門】目指すのは『世界のお客さまに選ばれる、日本を代表する運用会社』
日本最大級の資産運用会社である野村アセットマネジメントを中核として、グローバル・ネットワークを活かした資産運用ビジネスを展開しています。
運用資産残高は国内トップクラスであり、ETF運用資産残高と公募投信シェアは国内1位*です。
個人投資家および機関投資家のお客さまに、特徴ある多様な投資信託の商品ラインアップや、高度な調査および運用力を活かした資産運用サービスを提供し、個々のお客さまのさまざまなニーズにお応えしています。 * 自社調べ
2021年3月期の上半期決算においてアセットマネジメント部門は、306億円の税前利益を計上しました。資産運用意識の高まりを背景に、確定拠出年金(DC)専用の投信残高が増加したほか、ETFへの資金流入も継続しました。市場要因の追い風もあり、運用資産残高は四半期ベースで過去最高の55.7兆円となりました。
目標とする「世界のお客さまに選ばれる、日本を代表する運用会社」の実現に向け、2023年3月期までに取り組むポイントは次の3点です。
まず1つ目は、「新たな価値を提供する運用領域のさらなる強化」です。先行きが不透明な状況下では、リターンの源泉の多様化とリスク分散に資する運用提案が望まれます。このため、ESG運用、オルタナティブ運用、マルチ・アセット運用の3つを成長領域として強化していきます。
2つ目は、日本と海外各市場での取り組みです。まず日本では、「成長領域のシェア拡大によるプレゼンス確立」を目指します。国内では資産運用への関心が高まっており、公募投資信託市場でのさらなるシェア拡大に向け、高い運用成果の提供に加え、わかりやすくかつ有益な情報・サービス提供に取り組みます。DC関連の制度面の整備を追い風に新規加入者の増加が期待できるため、資産形成の支援や啓発、豊富な商品を幅広く提供する運用会社として、引き続きプレゼンス向上に向けた取り組みを推進します。海外では、競争力のある運用商品を拡充し、運用資産残高のさらなる増加を目指します。提携先のアメリカン・センチュリー・インベストメンツの商品群の活用も推進します。
3つ目は「持続的成長に向けた経営資源の配分」です。ESG、オルタナティブなどの運用領域で競争力を強化し顧客基盤を拡大するとともに、業務の効率化を促し、生産性を高める取り組みを進めます。こうした取り組みを着実に実行し、持続的成長を実現します。
close-up : 確定拠出年金(企業型DC)専用投信の残高が増加
確定給付企業年金(DB)から確定拠出年金(企業型DC)への制度移行などを背景に、DC市場が拡大基調にあります。
野村アセットマネジメントは、お客さまのリスク許容度に見合った長期的な資産形成をサポートする商品を多数取り揃え、残高が4年半で2倍にまで増加、シェアも確実に上昇しています。

【マーチャント・バンキング部門】事業成長の実現を目指し、プリンシパル・ビジネスを展開
マーチャント・バンキング部門は、2018年設立の「野村キャピタル・パートナーズ(NCAP)」をはじめとする4つの投資会社で構成されており、各社がそれぞれ特色ある投資事業活動を展開しています。
中核会社であるNCAPは、野村ホールディングスの1,000億円の自己資金を基にしたプライベート・エクイティ(PE)投資を通じて、事業再編・事業再生・事業承継・MBOなどの案件において、お客さまへのソリューションのひとつとして主にエクイティを提供するプリンシパル・ビジネスを展開しています。
多様化・複雑化するお客さまのニーズに対し、自己資金を活用したエクイティなどの資金提供と、人的な支援を含むさまざまなソリューション提供とお客さまとの協働を通じて、課題の解決と事業成長の実現を共に目指しています。
PE投資は、未上場企業への出資と同時に当該企業の経営にも深く関与することになるという特色を持ち、金融や証券という枠を超えて産業と実業の領域にも踏み込むことになる投資事業であり、まさに「プライベート」を本業とするビジネスといえます。
NCAPでは現在までに4つの未上場企業への投資を完了しています。
また、メザニン・ローンなどを通じた投資事業を展開している野村メザニン・パートナーズでは、野村の自己資金だけでなく年金、地域金融機関などの投資家の資金の運用も担っており、こうした経験を基にして、今後はマーチャント・バンキング部門においてオルタナティブ領域のアセットマネジメント・ビジネスへの取り組みについても進めていきます。
【新組織:未来共創カンパニー】デジタルを活用したイノベーションを推進し、新たなサービス展開をリードする
2019年4月に設立された「未来共創カンパニー」は、デジタルを最大限活用し、お客さまに最良のサービスをお届けすることを目指すカンパニーです。
お客さまとともに理想のサービス、未来を創ることをビジョンとして、常に新しいテクノロジーを取り込みながら、新たなサービスを開発するとともに、金融におけるイノベーションを推進しています。
主な取り組みとしては、スマホ向け資産管理アプリ「OneStock」の開発や、Boostry*1が開発した、ブロックチェーン共有基盤「ibet」を通じた日本初のデジタル社債の発行、ファンベース・カンパニー*2によるファンベースマーケティングの展開、SRIインターナショナルとの提携によるイノベーション支援の推進、LINE証券*3への包括的サポートなどがあげられます。
*1 2019年9月、野村HDと野村総合研究所が設立した、ブロックチェーン技術を活用した有価証券などの権利を交換する基盤の開発・提供を行う合弁会社。
*2 2019年5月、野村HDとアライドアーキテクツ、およびコミュニケーション・ディレクター佐藤尚之氏が設立した、「ファンベース」を基盤としたマーケティング事業を行う合弁会社。
*3 2018年6月、LINE Financialと野村HDの合弁会社として設立。
close-up : 資産管理アプリ「OneStock」の提供を開始
2020年6月、マネーフォワードと共同で資産管理スマホアプリ「OneStock」をリリースしました。これは預貯金や有価証券などさまざまな資産の一元管理と資産寿命の把握ができる資産管理アプリで、最近世の中で高まりを見せている資産形成ニーズの一助になるサービスを展開しています。
【新組織:コンテンツ・カンパニー】有形・無形の情報の一元化、プライベート化したコンテンツの提供を目指す
2020年7月に発足した「コンテンツ・カンパニー」は、従来からお客さまに提供しているリサーチレポートだけではなく、グループ内に存在する有形・無形の情報や経験を一元化し、新しい価値を創造することを目的に設立されました。
一般的な情報に独自の分析を加え、また経験などの暗黙知を顕在化させることで、価値ある「体系的な情報(コンテンツ)」を作ります。そのコンテンツについて、人を通じて、あるいはデジタル・ツールを活用して、お客さまが欲しいものを、欲しいタイミングで、欲しい形で届けることを目指しています。
また、コンテンツ・カンパニーの傘下にある「CIOグループ」は、従来、機関投資家向けに提供していた運用コンサルティングサービスを個人投資家にも展開し、ファンドラップなどの一任運用をはじめとした資産運用サービスのアセット・アロケーションや投資ストラテジーの策定までを行います。

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