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【電気機器 産業用エレクトロニクスセクター】<br />
デジタル化・グリーン化の潮流を<br />
大きな成長につなげられるか

【電気機器 産業用エレクトロニクスセクター】
デジタル化・グリーン化の潮流を
大きな成長につなげられるか

2022年1月1日
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半導体不足が足かせとなりながら、コロナ禍の影響も比較的軽微で順調な回復を見せる電気機器業界。2022年度に追い風を迎えると予測される産業用エレクトロニクスセクターの、さらなる成長への注目点を山崎アナリストに解説いただいた。

山崎 雅也 氏

山崎 雅也 氏

野村證券エクイティ・リサーチ部

BtoBビジネスに
活路を求める


 電気機器業界は、産業用・民生用エレクトロニクス、半導体製造装置、電子部品の4つのセクターから構成され、証券コードではおおよそ6500番台以降の銘柄が相当します。

 近年の業界全体の動きとしては、BtoB(企業間)ビジネスへの転換が定着したことが特筆されます。民間・政府系ITシステムの提供や、鉄道、エレベーター等の産業機械のサポートが主体となった日立製作所(日立)〔6501〕をはじめ、NEC〔6701〕と富士通〔6702〕が、国内トップシェアを競ったパソコン事業の開発・製造をLenovo(中国)傘下に移管するなど、多くの企業が実質的に民生機器の分野から撤退しています。

 また、電気機器業界を見る際には、「産業のコメ」としてあらゆる製造業のキーデバイスとなっている、半導体の需給動向が先行指標となります。総合電機メーカーの一部は製造から撤退していますが、日立や東芝〔6502〕、三菱電機〔6503〕、富士電機〔6504〕、半導体専業メーカーのルネサスエレクトロニクス〔6723〕などが存在感を増しています。

 2021年度の電気機器業界全体を俯瞰すると、産業用エレクトロニクスセクターについてコロナ禍からの回復が見えた半面、巣ごもり需要のピークアウトで民生用エレクトロニクスセクターが反動減を示し、BtoBとBtoCの二極化がさらに鮮明になっています。
 

ウィズコロナを前提に
正常化の動きに拍車


 ここからは産業用エレクトロニクスセクターについて解説していきます。産業用エレクトロニクスセクターの業績は、主に以下の3点の影響を受けたと考えます。

 1点目は、ほかの多くの業界と同様に新型コロナウイルス感染症の蔓延と収束です。夏の緊急事態宣言による停滞からの回復に加え、前期の反動から増益となった企業が目立ちました。

 特に第1四半期は、最初の緊急事態宣言(2020年4月)が発出された前年同期比で大幅な増収となりました。第2四半期以降は、ウィズコロナを前提にビジネスの正常化に向かう動きが本格化しています。

 2点目は半導体不足です。ハードウエア関連が幅広くマイナスの影響を受け、第2四半期の業績にネガティブな方向で関わりました。

 3点目は構造改革です。かねての課題であった構造改革が各社で進展し、固定費の削減効果を生みました。事業ポートフォリオの入れ替えや事業撤退をも含めた大規模な構造改革で先駆的な存在である日立が成果をあげています。
 

DXの本格進展で
加速するデジタル化


 この3つの要因で特に大きかったのがコロナ禍の影響です。産業用エレクトロニクスセクターでは、コロナ禍によって比較的ポジティブな変化が見受けられます。
特筆すべき変化は、中長期的な成長要因である「デジタル化」「グリーン化」が前倒しで進んだことです。

 デジタル化については、顧客企業の業績不振によるIT投資の抑制などネガティブな材料はあるものの、自動化や非接触化、ワークスタイルの変更などといった企業のコロナ対策が事業機会となり第2四半期の受注増に寄与しました。

 従来の「省力化」のためのデジタル化とは一線を画す、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展も本格化しています。日立が巨額で買収し話題となったDX支援のGlobalLogicの売上が想定より早い伸びを見せ、その成果は上期決算にも表れました。

 デジタル化でビジネスモデルを見直す動きは、あらゆる産業で生まれています。顧客が持つ情報をイノベーションに活用する日立の「Lumada」のほか、NECや富士通も顧客企業のDX投資をサポートする動きを加速。富士通が自ら率先してDX企業となることを目指す全社プロジェクト「富士通トランスフォーメーション」は、成功体験を顧客企業への提案につなげる新たな試みとして注目されます。
 

省エネ、パワーグリッドが
グローバル市場で存在感


 もうひとつのグリーン化の動きは、産業用エレクトロニクスセクターでは主に①発電、②電力消費、③需給バランス調整の3つの領域に関わります。①では自然エネルギーへの移行、②では二酸化炭素排出量の抑制と省エネルギーの推進、③ではパワーグリッド(送配電網)の普及です。これらを事業機会につなげる動きに拍車がかかっています。

 特に②は、電気自動車(EV)をはじめあらゆる産業にニーズがある有望な領域です。ここで用いられるパワー半導体(高電圧・高電流の電力を制御・変換する機能で省エネをサポートする半導体)の製造で日本企業は競争力を維持しており、三菱電機や富士電機、ルネサスエレクトロニクス、ローム〔6963〕が積極的に投資しています。

 ③では、日立がスイスの重電大手ABBを買収して日立エナジー(旧・日立ABBパワーグリッド)を設立。グローバルな展開を始めています。

 一方で、ESG(環境・社会・ガバナンス)、SDGs、カーボンニュートラルについては、各企業で進捗の度合いに隔たりがあります。グリーン化をさらに進展させるには、個別企業の取り組みだけでなく、国や地方自治体と民間との協働でサプライチェーンを総体的に捉えたバランスのよい取り組みが求められます。
 

SDGsへの取り組みが
今後の成長確保の鍵


 半導体不足が本格回復にブレーキをかけた2021年度を経て、各社が対策を整える2022年度は産業用エレクトロニクスセクター全体が追い風を受けると考えています。もっとも、半導体需要も加速度的に高まりますから、最悪期は脱しても、タイトな需給局面が続くことは念頭に置くべきです。

 こうした事業環境を前提に、デジタル化、グリーン化が本格的に加速する2022年度以降のポイントは、①どれだけ設備投資をしてキャパシティを拡大できるのか、②リスクをコントロールしながらどれだけ開発投資、成長投資に資金を振り向けてデジタル化とグリーン化を成長機会とすることができるか、にあります。

 産業用エレクトロニクスセクターでは、サステナブル社会の形成への取り組みがプラスに寄与します。そもそもSDGsでいう「持続可能な開発」とは、ビジネスモデルとして持続可能な仕組みを作らなければ企業活動が成立しないという問題意識が根底にあります。逆にいえば、サステナブル社会に貢献するビジネスモデルは、業績拡大に結びつくと捉えられるわけです。これは、デジタル化とグリーン化がこのセクターの成長機会となる大きな理由でもあります。
 
(注)本稿は、2021年11月30日時点の情報に基づく解説です。  
業績表数値の出所は、2021年11月30日時点における「有価証券報告書」並びに「決算短信」。未開示情報は「-」と表記。
なお、「売上高」「経常利益」(共に単位末端の数値を切り捨て)については、IFRS(国際財務報告基準)ならば「営業収益」「税引き前利益」など、各会計基準の類似科目の数値を掲載



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