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7つの切り口から
400銘柄をスクリーニング
投資スタイル別「銘柄選定リスト」




いくつもある投資の判断材料を、
どれだけ効果的に活用できているのだろうか――。
そんな思いを持つ個人投資家は少なくないのではないでしょうか。
広大な投資情報の海を迷わず進むための羅針盤となるのが、
確固とした “投資スタイル”です。
株式アナリスト・鈴木一之氏による解説とともに、
代表的な4つの投資スタイルの銘柄選定リストを紹介します。


※本特集は、基本的に2020年5月15日時点の情報に基づいて編集しています。

荒れた市況ほど実感する
投資スタイルの強み


 2020年6月2日時点での上場企業数は3,712社に上ります。これだけの数のIR情報を確認するのは至難の業です。証券各社のサイトにはスクリーニング機能などの便利なサービスもありますが、どれだけ使いこなせているか不安な方も多いでしょう。そんな時に指針となるのが“投資スタイル”です。
「有名投資家を語る時、必ずその投資手法がセットであるように、資産を増やすという目的を達成するには的を絞らなければなりません」と話すのは、『賢者に学ぶ 有望株の選び方』などの著者である株式アナリスト・鈴木一之氏。鈴木氏は「投資スタイルを持つ強みは株式市場が荒れた時ほど実感できる」といいます。
「市況が荒れると値下がり銘柄が多く出るので、投資家には大きなチャンスです。しかし値動きは短期的なので、目移りしてしまってはチャンスを逃してしまう。確固としたスタイルがあれば、迷うことなく目指す銘柄にたどり着くことができます」
 また平常時においても、さまざまな投資スタイルを把握しておくことで、自分の投資行動を客観視でき、より冷静な判断が行えると鈴木氏は付け加えます。
「平常時の株価の変動期間は、バリュー株なら1年のうち2週間~1カ月程度。この期間以外の〝待ちの時間〟に耐えられず見切り売りをする方が多いようですが、例えば『今はグロース株狙いのタイミング。バリュー株投資派の自分は待ちで大丈夫』と納得できれば、性急な判断を防ぐことができます」
 投資スタイルが確立しているからこそ、こうした判断ができるわけです。
 そこで本特集では、代表的な4つの投資スタイルを取り上げ、それぞれの切り口で銘柄選定リストを作成。鈴木氏に、各スタイルの特徴や注意点を解説してもらいました。

自分に合ったスタイルを
どのように決めるのか?


 紹介する投資スタイルは、「バリュー(割安)株投資派」「グロース(成長)株投資派」「配当利回り重視派」「優待銘柄選好派」です。配当と優待を重視するスタイルはバリュー株投資の一種といえますから、まずは自分がバリュー株投資派とグロース株投資派のどちらに当たるかを考えましょう。手がかりは、自分の好みや得意・不得意です。大まかにいえば、企業業績の分析などが得意な方はバリュー株投資派、革新的な新サービスなどに興味がある方はグロース株投資派となります。
 さらに、投資との向き合い方から考えることもできます。投資初心者で「手元の10万円を10倍にしたい」ならグロース株から始め、試行錯誤しながらバリュー株や細かいノウハウに手を伸ばすといいでしょう。ある程度ゆとりがあり、堅実に老後の資産を構築したい方はその逆です。


4つのスタイル
その特色とは?


 では、4つのスタイルのポイントをかいつまんで見ていきます。
①バリュー株投資派
 企業の資産価値に対して株価が割安な銘柄を狙う投資スタイルです。「割安」の理由を許容できるか、株価上昇まで待てるかがカギです。
②グロース株投資派
 企業の将来性に注目して、業績の伸びが期待できる銘柄を狙う投資スタイルです。テンバガー(株価が10倍以上に成長する銘柄)の可能性もある一方で、将来の企業価値が織り込まれて株価が割高になることも。
③配当利回り重視派
 大型株やディフェンシブ株を対象として、長期保有でインカムゲインを狙う投資スタイルです。堅実な資産形成向きですが、高配当銘柄はその背景にも注意したいところです。
④優待銘柄選好派
 100株保有から優待を受けられる銘柄も多く、比較的少額から始められる気軽さが魅力です。ただし、売買のタイミングによっては、優待から得られる利益と値下がり時の評価損のバランスを欠くこともあるので注意が必要です。

 さらにこのほかにも、本誌が実施した読者アンケートの集計結果に基づいて個人投資家が参考にできると思う銘柄リストを3つ作成しました。
 投資スタイルは十人十色です。どのスタイルが「正しい」「間違っている」ということはありません。鈴木氏は「株式投資とは、投資した企業の経営を、自分の代わりにその企業の経営者に委ねるようなもの」と語ります。これは鈴木氏の投資哲学ともいえるでしょう。投資スタイルとは、銘柄選定における「規律」であり、その根底には投資家それぞれの「哲学」があります。
「マネーに対する考え方にはその人の人生が投影されます。お金の扱い方を通して生き方を考える。それが“投資スタイル”なのです」(鈴木氏)
 本特集が、読者の方々の投資スタイルを確立するうえでひとつのヒントになれば幸いです。

List.1:バリュー株投資派
PBR1倍未満
100銘柄

バリュー(割安)株投資派が狙うのは、企業の資産価値に対して株価が“割安”な銘柄です。銘柄の “割安度”を測る指標のひとつに、株価と企業の資産価値を比較したPBR(株価純資産倍率)があり、この値が1倍未満の銘柄は一般に割安と判断されます。


「隠れた価値」のある
企業を見つける


 株価が割安である要因には、大きく分けて①企業の成長が見込めない、②世のなかが企業の隠れた価値に気づいていない、の二つがあります。「企業の成長性」は見極めが難しいので、「隠れた価値」のほうに着目しましょう。本来の価値に気づかれずに安値で放置されている銘柄ほど、いったん注目を浴びると株価が急上昇します。これが、バリュー株投資の醍醐味といえます。
 隠れた価値が見出され注目を集めた最近の例としては、海外投資ファンドなどから買収提案が相次ぎ、TOB合戦に発展したユニゾホールディングス[3258]があります。銀行系の不動産デベロッパーである同社の隠れた価値とは、都心一等地に数多く保有する優良不動産でした。同社保有物件を時価評価した場合の1株当たりの実質純資産額は7,000~8,000円だったと推定され、これを加味して算出した実質的なPBRは0.6倍ほどと見られていました。結局、TOB合戦は従業員による自社株買いで収束し、現在のPBRは約1・8倍(*1)になっています。
 ただ、ユニゾホールディングスのような銘柄を個人投資家が見出すのは難しいのも事実です。そこで、PBR1倍割れを続ける銘柄のなかから自分なりの判断で「隠れた価値」のある企業を見つけていくことが現実的な方法だと思います。
 例えば、トヨタ自動車グループの主要企業である、デンソー[6902]アイシン精機[7259]は、PBRが0.7~0.8倍程度(*1)です。世界中の投資家がチェックしているはずなのに、この2社が割安である理由は何でしょうか。成長性の観点で見ると、電気自動車(EV)や自動運転の時代が予想されるなかで将来的に生き残れるのか、といった点が最大の懸念事項といえます。
 それでも「投資できる」と判断した投資家が注目したのは、両社の高い技術力だと思われます。デンソーは自動車部品全般で世界2位、アイシン精機はAT(自動変速機)で世界シェア1位です。これだけの技術力を活かし、両社が新しい時代に対応できるかどうかは、経営力にかかっています。つまり「経営力」を「隠れた価値」として評価できるかが、投資判断の分かれ目となるわけです。
 バリュー株は、隠れた価値に多くの投資家が気づき、注目されて初めて株価が上がっていきます。それだけに、注目を浴びるまで保有しつづける忍耐力が必要となります。

*1 2020年5月15日時点

 

List.2:グロース株投資派
3期平均成長率
上位100銘柄

グロース(成長)株投資とは、企業の将来性と株価の上昇余地を吟味して投資するスタイル。成長が期待できる銘柄をうまく見つけられれば、テンバガー(株価10倍)も夢ではありません。


“半径2メートルの変化
にも注目する


 グロース株投資の銘柄選定のポイントは、売上高が伸びている企業をいかに見つけるかに尽きます。赤字の新興企業でも、売り上げがあればいずれは利益が出ます。
 最近のグロース株の代表例は、ダイキン工業[6367]です。グローバリゼーションで日本企業が製造拠点を海外に移したことに伴って、業務用エアコンの輸出量が飛躍的に増え10期連続増収増益。アジア、ヨーロッパをも席巻し、経常利益はここ10年近くで817億円から約2,700億円へ、株価は6倍に上昇しました。このように、社会構造の変化をきっかけに発展する企業はグロース株になる可能性を秘めています。
 エムスリー[2413](医療従事者向けネットサービス)、MonotaRO[3064](工事用資材等のネット通販)、プレステージ・インターナショナル[4290](損保等のサービス代行)なども、社会の変化を追い風に成長してきた企業です。
 MonotaROは、2010年度の売上高176億円、経常利益13億円から2019年度は売上高1,314億円、経常利益158億円へと成長し、株価も49.3円(*)(2010年12月30日終値)から3,815円(2020年5月15日終値)へと約77倍になっています。同社のように経常利益10億~20億円前後からステップアップしていくケースが、日本の株式市場での典型的なグロース株です。
 個人投資家が行うスクリーニングでは、まず過去3年間で売上高が10%超の成長を続けているかでふるいにかけます。次に決算短信や企業のホームページなどに目を通して、経常利益や株価の変化などを踏まえてさらに絞り込んでいきます。
 また、〝半径2メートルの変化〟に注目することも大切です。例えば「家族が新商品を買った」「職場の同僚が新しいスマホアプリを使い始めた」「異業種の会社の友人が勤める部署が、最近忙しいらしい」といった身近な話から着想を得て、それらの背景に何があるのかを考えていきます。些細な変化から、世のなかの動きやトレンドを推測するのです。
 将来性が期待されるグロース株は常に割高の傾向にあります。反面、競争に敗れると株価は急降下します。そうしたリスクがつきまとうため、四半期決算ごとの業績チェックも欠かせません。

*調整後株価


 

List.3:配当利回り重視派
配当利回り
上位50銘柄

配当利回り重視派が狙う大型株やディフェンシブ株は、値動きのダイナミックさには欠ける一方で、安定的に長期保有でき、堅実な資産形成を目的とした人に向いています。ただし、高配当であることの背景を見極める必要もあります。


“高配当の理由”が
許容できるか判断


 マネーの世界では、リスクが高い商品ほどリターンも大きく設定されます。リスクとリターンはトレードオフの関係にあります。高い配当利回りもまた、何かとのトレードオフであると捉える必要があります。
 配当利回りが高い会社は、景気変動の影響を受けにくく、業績が安定している成熟企業、銘柄的には「大型株」や「ディフェンシブ株」である傾向が見られます。そうした企業は、利益の多くを次のビジネスへの投資ではなく配当に回していることが多く、また事業の急成長も見込めませんから株価上昇もあまり期待できません。結果として高配当利回り銘柄になるわけです。このように高配当の銘柄を狙う際は、〝高配当の理由〟を見極め、それが許容できるかを判断することが重要となります。
 また、過大な有利子負債などが潜んでいれば、減配や、最悪の場合には倒産のリスクもありますから、あわせて財務の安定性を確認することも重要です。安定性を計るうえで目安となる指標は、自己資本比率です。金融情勢で借入金の重みは変わりますが、現在なら40~50%あれば問題なしと見ていいでしょう。
 さらに、意外なところでは大株主との関係もポイントとなります。しっかりした財閥企業などが支えている場合は、減配などを回避できる安心材料になります。一例をあげると、ローソン[2651]にとっての三菱商事[8058]などです。
 高配当銘柄の代表格であるJT(日本たばこ産業)[2914]はどうでしょうか。同社は、2019年12月期まで16期連続で増配し、現在の配当利回りは7~8%です。3%を超えれば高配当といえますから、配当利回り重視派にとって非常に魅力的です。財務の安定性も、自己資本比率が47.95%(2019年12月期)で問題はありません。専売公社が民営化した経緯から筆頭株主が財務大臣という特殊性もあります。
 それでは、JTがこれだけの高配当を維持する理由は何でしょう?
 結論としては、主要事業がたばこの製造・販売であることが大きいと想像されます。近年、禁煙ブームや受動喫煙対策の本格化でたばこ事業の将来性には懸念が持たれています。そのためか、業績は横ばいで経営が急激に悪化する心配がほぼないにもかかわらず、ここ数年、株価は軟調に推移しています。これらを踏まえたうえでの投資判断が肝要となります。
 

List.4:優待銘柄選好派
割当基準月別
人気優待50銘柄

暮らしや趣味と直結し、より身近に企業を感じられることから、昨今は優待銘柄の人気が高まっています。ただ、売買のタイミングによっては、優待で得られる利益と株価の値下がり時の評価損とのバランスを欠くこともあるので注意も必要です。

早めの行動が鉄則
準備は決算3カ月前から


 旅行が趣味なら航空や鉄道、近所のスーパーの割引目当てなら小売りなど、自分の生活と銘柄選びが直結するのが優待銘柄の楽しさです。
 ただし、高値づかみのリスクは認識しておかなければなりません。株主優待を受けるには、配当金と同様に権利付き最終日(権利確定日の2営業日前)までに株式を購入する必要があります。裏を返せば、権利付き最終日に株式を購入すればその条件を満たすため、人気銘柄はその日の大引けに向けて値上がりする傾向があり、想定外の高騰もありえます。さらに、権利を確定させると同時に売りに出す投資家も少なくないため、権利落ち日になった途端に値下がりすることもあります。優待人気の定着でライバルが増えていますから、早め早めの行動が鉄則です。
 そのためには、準備は遅くとも決算日の3カ月前から始めましょう。優待人気が高い小売り、外食産業の決算期は2月、8月に多い傾向があります。また、飲料会社は12月決算が多いようです。いずれにしても、優待で得た利益を値下がりの評価損が超えないように、できるだけ安いタイミングで購入するのが肝要です。年間計画に沿った準備・行動が必要になりますが、常にキャッシュを用意しておき、年に数回訪れる株価急落場面を見計らって購入する方法もあります。
 銘柄選定で特筆すべき指標はありませんが、強いてあげれば小ぶりな銘柄は避けて大企業を狙うといいでしょう。売上高、経常利益、時価総額などでチェックします。また、株式の保有期間の長さに応じて優待内容をアップグレードする「長期保有優遇制度」を導入する企業も増えてきました。こうした条件も加味しながら検討するといいでしょう。


*決算日と株主優待を受けるための権利確定日が異なる場合もあるので、ご自身でご確認ください
 

List.5:読者アンケート
個人投資家が
参考にしたい
銘柄リスト3選

本誌では、個人投資家が、投資銘柄を選ぶ際に参考にしたいと思う銘柄リストについてWebアンケートを実施しました。
その上位の3つのリストを紹介します。


※実施期間2020年4月24日~5月1日
※有効回答者数:2,535人