1. ホーム
  2. アイアールマガジン
  3. バックナンバー
  4. トップの素顔
  5. 3186 ネクステージ|トップの素顔

アイアールマガジン

IR MAGAZINE
トップの素顔

業界を革新するビジネスモデルで圧倒的な差別化を実現

広田 靖治

広田 靖治
Seiji Hirota
代表取締役社長兼CEO

“お客さま目線”の徹底で自動車販売の常識を覆す

1996年創業と中古車販売業界では後発でありながら、常識を覆すチャレンジを積み重ね、全国に136の販売拠点を展開(2020年5月末時点)するなど、突出したスピードで成長を続けているネクステージ。中古車販売業をたった2台の在庫から始め、今日の姿へと導いたのが、代表取締役社長の広田靖治氏だ。2030年には業界初の“1兆円企業”になるという目標を掲げた同社の飛躍の原点を探るべく、その半生を取材した。

Profile
1973年7月31日、大阪府出身。96年、愛知県尾張旭市で中古車販売業を始め、98年に㈲オートステージヒロタを設立。代表取締役社長に就任した。2002年6月、スバル車販売を目的に㈱ネクステージを設立。同8月、㈲オートステージヒロタを㈱オートステージに組織と商号を変更。2004年12月、㈱オートステージと㈱ネクステージを統合し、㈱ネクステージへ商号変更。2010年2月、同社代表取締役社長兼CEOとなり、現在に至る。

 

独立独歩の戦略で
飛躍的な成長を続ける


 ネクステージは、創業以来メーカー別、カテゴリー別の専門店や、仕入値での販売という価格設定など、独自のビジネスモデルで中古車販売業界に革新をもたらしてきた。

 近年では、「顧客のライフスタイルに合わせたライフタイムバリューの獲得」という新機軸で店舗の大型化を進め、カーライフを支えるあらゆるサービスのワンストップ化を実現。他社の追随を許さない差別化を進めている。

 飛躍するネクステージの源泉は、こうした「徹底したお客さま目線」にある。それが生まれたきっかけは、普通のクルマ好きの青年だった広田社長が抱いた、自動車販売業者への“ある思い”であった。

 

ひと足早く覗き見た
働く大人たちの世界


 団塊ジュニア世代の広田社長は、1973年、大阪市西成区で4人兄弟の末っ子として生まれた。両親の離婚に伴い7歳の時に母親の実家に近い愛知県尾張旭市に引っ越すが、一緒に遊ぶのは本当に親しい友人だけという内向的な子供時代だった。

 家庭は経済的に厳しく、高校は働きながら定時制に通ってほしいと母親に告げられた広田少年は、学生の頃から学費を稼ぐためのアルバイトをしていた。ただ、知人に紹介された飲食店での仕事はとても楽しかった。お金も稼げるのだから、なおさらだ。特に印象深かったのは、お客として接したビジネスマンの姿である。

 「仕事終わりのビジネスマンが、ビールを片手に仕事について熱く語り合う姿にあこがれを抱きました。白いワイシャツにネクタイを締めたスーツ姿がカッコよく見えました。同世代の若者には持てないような感性が芽生えたと思います」
 

人材育成の重要性に
気づいたきっかけ


 転機を迎えたのは18歳の時だった。定時制高校を中退した後、さまざまな仕事を経験するなか、運転免許証を取得すると仕事の幅が広がり、給湯機器販売の会社に就職した。

 少年時代は内向的だった広田社長だが、いざとなると自分でも驚くほど流暢にセールストークができたという。そして、「購買意欲のある人に出会うには訪問数を増やすしかない」と考えた広田社長は、東海3県を駆け回り、3カ月後にはその甲斐あってトップセールスを記録した。

 しかし同時に疑問も抱いた。

 「楽な仕事ではないですし、入社2カ月目から出来高制になるので、販売員の定着率が悪かったのです。新人は次々に入ってきますが、残るのは1割ぐらい。あまりに生産性が悪いので、『社員教育の仕組みを整えてほしい。定着率が上がれば求人コストを営業費に回せる』と経営者に提案したこともありました」

 この提案が採用されることはなかったが、人材育成を重視する考え方は、現在のネクステージの経営に受け継がれている。

 

クルマ好き青年が抱いた
中古車販売業界への疑問


 訪問販売員が家庭を訪ねるのは、在宅率の高い午前中と夕方が中心だ。当時の広田社長の楽しみは、昼の空き時間を利用した各地の中古車販売店めぐりだった。

 「中古車が年間750万台登録されていた時代です。カッコいいクルマで女の子とデートをするのが若者の関心事で、私もそのひとりでした。スポーツカー、セダン、SUVとクルマなら何でも好きで、次は何に乗るかで頭のなかはいっぱいでしたね」

 ところが、販売店を訪れるうち、広田社長は歯がゆさを覚えるようになっていく。相手に警戒心があるのが当然の訪問販売とは違い、中古車販売店の来店客はクルマに興味があるから来ている。それなのに店員は声もかけてこないし、やる気も感じられないのだ。

 「自分ならもっとお客さまに喜んでもらえる」。そんな思いを募らせた広田社長は、いつしか転職を考えるようになった。だが当時の自動車販売会社は人気企業で、定時制高校中退の広田社長は門前払いである。「だったら自分でやるしかない」。広田社長は古物商の許可をとり、自ら中古車を売買することを思い立った。

 

画期的な専門店展開で
順調なスタートを切る


 自分のクルマを売却し、貯金を合わせた資金を元手に、広田社長は個人事業として中古車販売を始めた。ただ当初は、中古車販売を事業として大きく育てるつもりはなかったという。96年、第1号店となる「オートステージヒロタ」をオープンした(会社設立は98年)のも、中古車の業者オークションへの参加や、ローン、損害保険の扱いで支障があったからだった。

 「創業地は実家近くの喫茶店の跡地で、在庫は輸入中古車2台でした。当初は資本力も信用もないので、思うように売れません。そこで、もっと競合の少ない市場で勝負するしかないと思い、会社設立後は仕入れをボルボに絞った専門店にしたのです」

 スウェーデン製のボルボには根強いファンがいたものの、当時の国内の登録台数は比較的少なかった。ボルボ専門の中古車販売店の看板を掲げると全国から顧客が訪れるようになり、間もなくビジネスは軌道に乗った。2002年には国産車を扱う店舗を作るが、これもまた、根強いファンが支えるスバル車専門店だった。

新たな気づきを積み重ね
ビジネスモデルを更新


 メーカー別の専門店として始まったネクステージは、現在までに数回ビジネスモデルを転換している。創業時の形態が模倣されるようになると、やがて専門性を車種別に移行し、差別化を図った。

 リーマンショックと拙速な出店攻勢が重なって債務超過に陥る寸前だった2008年には、クロスセル(関連商品販売)を重視するビジネスモデルに転換した。タイヤやカーナビ、ボディコーティングや保険といった周辺アイテムやサービスの販売を積み上げて利益を確保し、クルマ本体は仕入値で販売したのだ。

 オークションで仕入れる中古車の場合、仕入価格はどんな業者でも一律だが、周辺アイテムは大量に仕入れれば単価は下がる。売れ筋のクルマを仕入れ、しっかりと接客して販売し、商品の回転率を上げることで利益率は上昇した。

 この常識を覆す販売戦略に業界も大きく反応。「サクラ広告」とうわさを立てられたこともあった。

 「クルマの価格の透明度を高めて、お客さまが本当に必要なものから利益を得るのが当社の考え方です。社内にも不安の声はありましたが、販売台数が増えれば収益は確保できると説得しました。実際、お客さまの数は3倍になりました」

 

大型店舗化の推進で
顧客の利便性と収益を追求


 2015年以降、ネクステージは3回目のビジネスモデルの転換期にある。カーライフのすべてをワンストップで提供する「総合店」(大型店)の出店を強化しているのだ。この出店戦略は、売上高2,000億円を目指した「2020年ビジョン」を前倒しで達成する原動力となった。

 大型店舗化の背景には、2014年に世界で初めて乗り出した、EC販売がある。この時、成約客の約7割から寄せられた「納車前にクルマを見たい」との声に衝撃を受けたのだ。オンラインで販売を完結できるのがECビジネスの利点だが、それでも購入者は実物に触れることにこだわる。この事実を再認識した広田社長は、自動車販売で最も効率性が高いのは、多くの在庫に触れることができる大型店舗であると確信した。

 「小売業界はECビジネスに押されがちですが、自動車販売に限っては店舗の大型化でさらなる成長を目指せることがわかりました。クロスセルが根幹である当社は、お客さまと直接出会う機会の多さが収益に直結します。当社の方向性にも自信を持つことができました」

 ネクステージは、2030年に売上高1兆円を目指す「2030年ビジョン」を掲げた。自動車販売市場は中小零細の販売店が多数を占め、大手による集約が進んでいない。

 「出店余地がある地域は、まだ全国に400カ所以上あります。継続的に店舗ネットワークの拡大が進めば、次の段階も視野に入ってきます」

 全国で同等のサービスを提供する店舗マネジメント、透明性の高い適正価格、新車ディーラーのようなショールームで入りやすい店舗デザイン……。ネクステージの販売スタイルには、ひとりのクルマ好き青年の、“お客さま目線”が貫かれている。

 広田社長が描くネクステージの未来は、まだ無限に広がっている。

 


<Episode>
足繁く通うサウナは第2の社長室

かつてはゴルフやサーフィンに熱中したアクティブ派の広田社長だが、近年はめっきりその機会も減ったとのこと。現在のプライベートの外出先はもっぱら「サウナ」だ。多い時には週に5日は立ち寄っているというから、まごうかたなき“サウナー”である。サウナは心身のリフレッシュと同時にビジネスのアイデアをまとめる時間としても貴重で、入浴後にはしばしばSNSで役員らと連絡をとるという。

ネクステージ [3186]
中古車販売事業と正規ディーラー事業を全国に展開


1996年、中古車販売業を始めた広田靖治氏が、98年に輸入中古車専門店として愛知県尾張旭市に㈲オートステージヒロタを設立。2004年、国産中古車専門店として設立した㈱ネクステージと統合し、現在に至る。2008年より、東海地方のみだった出店エリアを全国に拡大。2013年に東証マザーズに上場し、2014年には東証1部への市場変更と名証1部への上場を果たした。現在は、国産車・輸入車の大型店舗による中古車販売事業と6ブランドある輸入車正規ディーラー事業を全国に展開するほか、カーコーティング事業などのグループ会社4社を擁する。

株価情報
株価/チャートなど(野村證券サイト)がご覧になれます