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ベインキャピタル・ジャパン

信頼できる改革パートナーとして
日本企業の再生と価値創造に挑む

杉本 勇次

杉本 勇次
Yuji Sugimoto
日本代表 アジア統括共同責任者

米ベインキャピタルは、抜本的な経営改革を通じて組織体制や事業を再建し、投資先企業の価値向上を図るプライベートエクイティファンド(PEファンド)の代表的存在である。2006年に日本事業を開始したベインキャピタル・ジャパンもこれまで20社の経営改革と事業再建に成功し、PEファンドの存在を日本の市場関係者に強く印象づけた。杉本勇次代表が率いるベインキャピタル・ジャパンの投資手法と競争優位の源泉について解説する。
 

投資先企業に全面的に関与
過半の株式を取得するケースも

 未上場株式(プライベートエクイティ)への投資と聞いて多くの投資家が思い浮かべるのは、成長の初期段階にあるベンチャー企業に資金を供給するベンチャーキャピタルかもしれない。それに対して、プライベートエクイティファンド(以下、PEファンド)は、一定の社歴を持ち、潜在的な成長力を有しながら、それを活かせていない企業に投資を行い、企業や事業の価値を高めてフィナンシャルリターンの獲得を目指す。

 具体的には、成長の踊り場に到達している企業や、経営資源に制約のある大企業の非主流部門に投資し、経営や事業の本質的な改革を通じて企業価値、事業価値の向上を図り、再上場や事業売却というイグジットに結びつけていくビジネスモデルだ。

 株式の引き受けが発行済株式数の過半に達することも少なくないほど、投資先企業への関与の度合いはベンチャーキャピタルと比較して格段に深く大きい。そして現在、日本のPEファンド市場を強力にリードしているのが、杉本勇次代表率いるベインキャピタル・ジャパン(正式名称:ベインキャピタル・プライベート・エクイティ・ジャパン・LLC)である。

 ベインキャピタル・ジャパンは、全世界に14拠点、約1000人の社員を擁する米国ベインキャピタルの日本での活動拠点である。2006年に日本事業をスタートさせて以来、すかいらーくやマクロミル、日本風力開発など20社の事業再建を成功に導いてきた。

MBO、カーブアウト、事業承継
3つの基軸で伝統企業を再建

 ベインキャピタル・ジャパンが遂行する企業の構造改革には、3つのポイントがあると杉本代表は語る。

 
第1はマネジメントバイアウト(MBO)だ。企業の構造改革は、口で言うほど簡単なものではない。投資先には長年をかけて育んできた企業文化があり、経営手法があり、社内社外に多くの利害関係者がいる。また、株主や市場との関係上、半期、四半期の収益を重視せざるを得ない上場会社にとって、中長期の視点に立って抜本的な経営改革を断行することはきわめて困難である。そこでベインキャピタルは、経営陣とともにMBOを行って経営権を取得するケースが多い。株式を非上場化することで、大胆かつ迅速に事業の再構築を進めることが可能になる。

 
第2のポイントはカーブアウト*である。日本の大企業のほとんどは、収益の中核を担う主力ビジネス以外に多くの事業を保有している。しかし経営資源は無尽蔵ではない。たとえ将来性豊かな事業であっても、それが非コア事業である限り、十分な資金や人材を確保できないのが実状だ。ベインキャピタルはこうした非コア事業や非採算事業を会社本体から切り離す際の受け皿となり、切り出した事業に経営資源を集中投入することで、本来あるべき価値を具現化していく。それは同時に、本体企業にコア事業に専心する事業環境を提供することでもある。

 
第3のポイントは事業承継だ。わが国の多くの企業、とりわけ創業者が一代で築き上げてきた企業では後継者の不在が問題となっている。その中には将来的な成長が見込まれる優良企業も少なくない。ベインキャピタルはこうした事業承継のニーズに応え、企業や事業を譲受することで次の成長シナリオを描いていく。

会社分割の一種で、親会社が戦略的に小会社や自社の事業の一部を切り出し(carve out)、新会社として独立させること

緊密なコミュニケーションで
経営陣とビジョンを共有する

 ベインキャピタルが日本事業をスタートさせた2006年当時、PEファンドに対する経済産業界の認知度はさほど高いものではなかった。再生ファンドは十把一絡げに「ハゲタカファンド」と呼ばれることも多かった。しかし、そうした世評をベインキャピタルは企業価値向上の実績を積み上げることで払拭していく。

 原動力となったのは、層の厚い人材である。同社は1984年、世界3大コンサルティングファームの一角であるベイン&カンパニーのパートナーによって設立された。こうした出自ゆえか、ベインキャピタル・ジャパンも、在籍するプロフェッショナルの約8割がコンサルティングファームもしくは事業会社の出身だ。金融機関の出身者が多い他のファンドとは異なり、企業の財務面だけでなく事業の運営面に踏み込んだ改革を実行できるのも、企業の現場を知り尽くした人材を多数揃えているからである。

 杉本代表は、「日本には優れた技術やサービスを持ちながら何らかの要因で本来の価値が毀損されている企業がいまだ数多く存在する」と言う。ベインキャピタルはグループ全体でこれまで400社余りに投資を行ってきた。そこで培った知見とノウハウを駆使して、投資先企業の発掘と支援を行っていく方針だ。また、グローバル市場への参入を検討している企業のサポートや、スタートアップ企業の成長を資金、人材、経営企画で支えるグロースキャピタル事業も加速していく考えだ。
緊密なコミュニケーションを通じて経営陣とビジョンを共有し、信頼できるパートナーとして改革をスピーディに完遂する、それがベインキャピタル・ジャパンの真骨頂である。

■ ベインキャピタル・ジャパンの支援実績

事業内容に踏み込んだ改革で、さまざまな企業の再生に成功

 ベインキャピタル・ジャパンの成功事例を紹介しよう。

 すかいらーくの場合は、メニューの中身やサービスの提供スタイルまで、具体的な店舗運営について改善策を実行して業績の向上を実現し、2014年の再上場へ結実させた。
 
 事業承継の好例であるドミノ・ピザジャパンのケースでは、デリバリーに最もコストがかかる宅配ピザという業態に「持ち帰りの場合はもう1枚無料」という新サービスを導入した。来店客を取り込むことで昼夜の繁忙タイムに配達スタッフが不足することもなくなり、ドミノ・ピザジャパンは急成長、業界No.1の地位を獲得することになる。

 雪国まいたけの場合は、MBOによって非上場化した後に経営体制の改編に着手。それまでの縦割り組織を、商品開発、生産、マーケティングを連動させた一貫体制に作り替えた。ベインキャピタル・ジャパンのスタッフが雪国まいたけの本社がある新潟・南魚沼に常駐して、きのこの抗菌性に着目した商品開発やマーケティングを指導した結果、売り上げは順調に伸び、同社は東証1部に再上場することとなった。

 大江戸温泉物語の事業改革では、従来の部屋食をバイキング形式に転換することで、質のよい食材による美味しい食事の提供 → 集客力の向上 → 収益の積み上げ → 積極投資による浴室空間の快適化とM&Aによる業容拡大という好循環を作り上げた。